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大都市に迫るゾウの群れ 中国大陸を1年で500km北上

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ナショナルジオグラフィック日本版

中国南西部で、1年前から15頭のアジアゾウの群れが謎の移動を続けている。雲南省のシーサンパンナ・タイ族自治州の自然保護区にすんでいたゾウたちは、保護区を出て既に500キロ近く北上した。

今や中国全土の注目を集めているゾウたちだが、そもそもなぜ移動を始めたのか、どこを目指しているのかは、誰にもわかっていない。中国で、かつてゾウがこれほどの長距離を移動したという記録はない。

現在、6頭のメス、3頭のオス、そして6頭の子どもで構成される群れは、人口800万人を超える昆明市の郊外にとどまっている。都会に近づくにつれて、人が住む地域に入って農作物を荒らしたり、通りをぶらついたり、小さな集落で食べ物を探し回るようになった。民家の台所や介護施設に迷い込んだり、発酵させた穀物を口にして酔ったゾウもいたという報道もされた。群れは常に集団で行動しているが、オスが1頭離脱し、現在、群れと25キロほど離れた場所にいるという。

一連のゾウ騒動に中国国民の目はくぎ付けだが、専門家は今後どうやって人間との接触を減らすかで頭を悩ませている。「とにかく、人間とゾウが出合わないようにすることです」と話すのは、英ロンドン動物学会のベッキー・シュー・チェン氏だ。アジアゾウが専門のシュー・チェン氏は、現地の最前線で群れを監視するチームと緊密に連携している。

雲南省では誰もこのような状況を経験したことがないため、現地チームはぶっつけ本番で対応に当たらなければならない。省当局は、ドローンを飛ばして群れを追跡し、主に餌と物理的な障壁を使ってゾウたちを南へ誘導しようとしている。

チームの一員で、雲南大学・生態環境学院のチェン・ミンヨン教授は、国営の中国中央テレビに対し、誘導作戦について次のように説明した。「まずゾウたちを誘導するルートを事前に決定し、そのルート上にトウモロコシやパイナップル、バナナなど香りの強い食べ物をばらまきます。それと同時に、町に向かう道路を封鎖し、基本的にゾウのために用意した道だけしか進めないようにします」

2021年5月末ごろから、撒き餌の効果が表れ始めた。4トン以上の餌を用意したチームは、ゾウたちの進路をわずかに南へ向けることに成功した。現在、ゾウの群れは昆明の南にある玉渓市を行ったり来たりしている。

危険な移動

しかし、環境保護団体グリーンピースの中国事務所の研究者で、アジアゾウの保護に関して豊富な経験を持つパン・ウェンジン氏は、餌でおびき寄せるだけでは確実とは言えないと指摘する。「ゾウたちは、安全であると感じられなければ気がすみません。餌だけで移動ルートを変えさせようとしても難しいでしょう」

北京にあるNGO「中国生物多様性保護・緑色発展基金会」の事務局長のジョウ・ジンフェン氏も、エサを撒きすぎて「人間の食べ物に依存するようになってもいけません」と警告する。

チェン氏は、電気柵を使うことも検討していると話す。

電気柵は、人間と動物の接触を回避したり、畑へのゾウの進入を防ぐためによく使われる手だ。しかし、インド理科大学院の生態学教授で、アジアゾウの生態学と行動の著名な専門家であるラマン・スクマール氏は、今回の場合、問題がいくつもあると指摘する。

たとえば、ゾウが通り過ぎたらすぐに柵を撤去し、移動する先に再設置する必要があり、その手間を考えるとあまり現実的とは言えない。そもそも、なぜ群れが生息地を離れたのかがわからないのに、同じ場所に戻るまで誘導し、そこにとどまらせることができるのだろうか。「ゾウたちの予測不可能な行動を見ていると、かなり難しいと思います」

英ロンドン動物学会のシュー・チェン氏も、既に元の保護区から500キロも離れてしまったゾウを、また同じ距離だけ歩いて戻すことは、たとえ人間の助けがあったとしても難しいだろうと考えている。

中国科学院のジャン・ジンシュオ氏を含む一部の専門家は、ゾウたちを麻酔で眠らせてからシーサンパンナへ運ぶ可能性も検討されていると、国営メディアに語っている。

麻酔作戦は、前例がないわけではない。19年に、雲南省の村に迷い込んで被害をもたらしたオスのゾウを、麻酔銃で眠らせてから生息地へ戻したことがある。しかしスクマール氏は、一度に15頭ものゾウを眠らせて運ぼうとした例は、アジアではこれまで一度もないのではないかという。

南アフリカでは過去にそういった例があるが、中国には専門知識もインフラもない。しかも、見通しのきく平原で作戦を実行した南アフリカと違って、深い森林に覆われた雲南省での作業ははるかに困難になるだろうと、スクマール氏は指摘する。グリーンピースの潘氏も、特に子どものゾウへのリスクを懸念する。

「ゾウの家族はとても仲が良く、警戒心が強いです。1頭でも麻酔銃で打たれれば、群れ全体が興奮して大変な結果を招く恐れがあります」

持続可能な解決法

現在実行しているまき餌と柵の設置は、野生動物と人間の接触を避けることだけを目的とした短期的な対策にすぎないと、シュー・チェン氏は言う。問題は、どのようにして、ゾウたちにとって持続可能で長期的な解決策を見つけるかだ。

ジョウ氏は、ゾウたちが今いる昆明の近くに彼らのための国立公園を新設するのが最善の策だと提案する。「雲南省にはたくさんの公立の自然保護区があり、その多くには、ゾウを一時的にすまわせることのできる環境があります。それを後に恒久的な生息地とすることも可能でしょう」

また、同省に既にある4カ所のゾウの保護区をつなぎ、ゾウたちが安心して自由に移動できる生態的な「回廊」を作ることも重要だと強調する。

スクマール氏もこれには同意し、インドでの経験を踏まえて次のように提案する。とりあえずゾウたちを狭い区域へ誘導し、そこで餌を与えて安全を確保する。その間に、近くで新たな生息地を探す。「中国が本気で野生のアジアゾウを保護したいと考えているのなら、この群れに新たな生息地を探してやるべきです」

(文 SHAWN YUAN、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年7月4日付]

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