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次のコロナ発生地は日本? 広がる野生動物との接点

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ナショナルジオグラフィック日本版

森が住宅地や農地に転換されて、人間の居住地が野生動物の生息地に近づいている。こうした変化によって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のような人獣共通感染症の発生に拍車がかかると懸念されている。コウモリがたくさん生息していながら大規模な開発が行われてきた地域は、次のコロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の発生地になる可能性があると考える研究者もいる。

ある研究グループが、重症急性呼吸器症候群(SARS)に関連するコロナウイルス感染症のアウトブレイク(集団感染)が将来発生する恐れのある地域を識別し、2021年5月31日付で学術誌「Nature Foods」に発表した。研究者たちは、アジアに生息するキクガシラコウモリ属の生息密度が高く、森の分断と人間および家畜の居住が進んでいる地域を調査した。キクガシラコウモリ属は、最も多種多様なコロナウイルスの宿主だ。

ホットスポット(一大流行地)になりうる場所を特定することは、「新たな新型コロナ感染症のパンデミックが発生するリスクをどう減らすかを考える助けになるでしょう」と、論文の著者の1人で、ニュージーランド、マッセイ大学で感染症生態学を担当するデビッド・ヘイマン教授は話す。

研究者たちは独自の基準に基づいて、キクガシラコウモリ属が高密度に生息している1万カ所以上、2850万平方キロメートル(日本の面積の約75倍)以上を分析した。アジアのキクガシラコウモリ属は、熱帯と温帯に生息する。

その結果、最もホットスポットとなる危険性が高い地域が中国で確認されたが、日本、タイ、フィリピンを含むアジアの他の地域やヨーロッパでも、ホットスポットになりかねない地域が見つかった。

研究者たちは、土地利用の変化を直接、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のまん延や新型コロナ感染症の発生に結びつけることはできないとしている。しかし、次のパンデミックを引き起こす可能性はあり、人間がコウモリの生息地に侵入することについて、もっと注意を払う必要があると主張している。

「異なる種の間で接触が増えるほど、種を越えて感染症が広がる機会は多くなることがわかっています」。コウモリから人間への感染もそのひとつだとヘイマン氏は説明する。分析では「現在、こうした状況にある地域」も特定されたという。

「遠く離れた地域の話」ではない

ヘイマン氏らは過去の研究で、エボラ熱のアウトブレイクは森林が分断された地域で発生しやすいことを突き止めていた。そこで、コロナウイルス感染のホットスポットとなりうる地域を見極める上でも基準にした。

森林の分断自体が、感染症のまん延の原因となるわけではない。「問題は、分断が何をもたらすかです」と、米ワシントン大学で寄生虫生態学を担当するチェルシー・ウッド助教は話す。なお、氏は今回の研究には関与していない。

「生息地が分断されると、その分断された生息地に押しこめられた野生動物と人間との接触が多くなります」。さらに分断が進めば、「人間と野生動物との間の境界が増え、相互作用の機会もどんどん増えます」とウッド氏は話す。

今回の研究で最も多くのホットスポット候補が確認されたのは中国だ。「中国では、森林の分断、家畜の増加、人間の居住地拡大が同時に起きています」と、論文の共著者でイタリア、ミラノ工科大学の博士課程に在籍するニコラス・ガリ氏は説明する。

また、日本、フィリピン、西ヨーロッパ(イタリア北部、スペイン、ポルトガルなど)の一部の地域でも、都市の拡張や家畜の増加、森林の分断が進んでいる場所があり、ホットスポットとなる可能性があることが明らかになったという。

「私のようにヨーロッパに住んでいると、人獣共通感染症が人間界に流出するリスクは遠く離れた地域の話だと思い込みがちです」とガリ氏は言う。氏が今回の研究結果に驚くことはなかったが、「私たちの視点に一石が投じられたことは確かです」

リスクを示した今回の地図は、あくまで理論に基づいたものであると研究者たちはくぎを刺している。「家畜の密度、森林の分断、人口密度が増加すると、人獣共通感染症の流出リスクが増大すると仮定されています。実際にそうだと証明するものではありません」とウッド氏は言う。

米ジョージタウン大学の地球環境変動生物学者コリン・カールソン氏も、ウッド氏に同意する。この地図は、「土地利用の変化が新型コロナ感染症の原因だと結論づけたわけではありません」とカールソン氏は指摘する。「それを知るすべはありません。保有宿主の正体も、中間宿主がいたかどうかも、まだ確認されていないのです」

それでも、論文の著者たちは、この地図が感染症の予防に役立つことを期待している。

この論文の筆頭著者であり、ミラノ工科大学で水と食料の安全性を研究するマリア・クリスティナ・ルッリ教授は、この地図が、感染症の流出対策を強化すべき地域や、自然を回復させて危機への耐性を高めるべき地域を見極める手がかりとなると考え、「各国政府は、感染症監視計画の策定に今回の研究結果を活用できるでしょう」と話している。

またヘイマン氏は、ホットスポット候補と特定された地域では、予防的措置として、リスクを高める政策を中止すべきだとも考えている。

コウモリは最強の宿主

新型コロナウイルスが、どのようにして最初に人間に感染したかは、いまだ明らかになっていない。しかし、研究者たちの間で広く受け入れられているのは、コウモリ由来のコロナウイルスが直接または中間宿主を介して人間に伝染したという説で、人獣共通感染症のスピルオーバー(種を越えた感染伝ぱ)として知られる現象だ。

「コウモリは最強のウイルス宿主です」とウッド氏は言う。狂犬病は人間の神経系を冒す危険なウイルス性疾患だが、コウモリは狂犬病ウイルスの宿主にもなる。人間に脳炎や呼吸器感染症をもたらすニパウイルスや、世界各地で数千人の命を奪ったエボラウイルスを無害で体内に保有できるコウモリもいる。

なぜコウモリは、さまざまなウイルスの宿主となっているのか。その理由は科学者たちにもわからない。「他の哺乳類にとって重大な脅威となる病原体を保有しているのに」、なぜ宿主であるコウモリ自身は健康を維持できるのかも不明だとウッド氏は言う。

わかっているのは、コウモリが保有するウイルスが、人間を含む他の動物に伝染することがあり、しばしば破壊的な被害をもたらすことだ。例えば、コウモリの糞で汚染されたナツメヤシの樹液を飲んだ人が、ニパウイルスに感染することがある。また、エボラ熱のアウトブレイクの少なくとも1つの事例は、人間がエボラウイルスを保有するコウモリを捕まえたか、触れた、またはその肉を食べたことで発生した可能性が指摘されている。

コウモリのねぐらがある木のそばで遊ぶ子どもたちにコウモリのふんが付着して、家に持ち込まれたり、鼻や口にふんが直接入ったりする可能性がある。一部の国では、コウモリは狩猟や食用の対象になっている。

ウイルスが、コウモリから中間宿主である他の動物を介して人間に伝染することもある。エボラ熱のアウトブレイクでも、一部でこうした感染があったと考えられている。

「このような人獣共通感染症ウイルスで恐ろしいのは、スピルオーバーが絶えず起きていることです」とウッド氏は話す。なかでも最も危険で警戒が必要なのは、人から人に感染するウイルスだ。ウイルスはコウモリと他の哺乳類との間で感染するのは得意だが、人から人に感染するプロセスは「ウイルスにとっても容易ではない」とウッド氏は言う。「新型コロナウイルスは、それができる典型的な例なのです」

(文 JILLIAN KRAMER、訳 稲永浩子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年6月25日付]

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