現在、地球上で最も強力な電波を発信しているのは、天文学者が研究のために小惑星などに向けてている惑星レーダーである。2020年12月に崩壊したアレシボ天文台は地球上で最も強力な惑星レーダーで、主に黄道上の天体に向けて送信されていた電波は、その視野の中にある宇宙人の住む惑星に迷惑なスパムを送りつけていたはずだ。

「地球トランジットゾーンに宇宙人がいて太陽系を観測していれば、同じ面にいるわけですから、巨大な電波バーストを見ることになります」と言うのは、米カリフォルニア大学バークレー校SETI研究センターのソフィア・シェイク氏だ。氏は、同じような恒星を対象にSETI探査を行ったことがある。「地球が太陽の手前を横切るのを見ることができる恒星は、私たちのレーダー天文学のおこぼれの電波も拾っている可能性が高いと言えます」

すれ違う文明

しかし、カルテネガー氏らが指摘するように、生命の居住に適していると思われる系外惑星の中には、私たちからは見えていても、向こうからはまだ地球を確認できない星もある。まるで宇宙のマジックミラーだ。

例えば、恒星「トラピスト1」のまわりを回る惑星がそうだ。これらの惑星から地球を見ることができるのは1642年後である。また、地球から約12光年の距離にある「ティーガーデン星」のまわりを回る地球ほどの質量の2つの惑星からは、2050年まで地球を見ることができない。

一方、地球から約11光年の距離にあり、地球ほどの質量の惑星を1つもつ恒星「ロス128」からは、今から900年前まで、2158年にわたって太陽の手前を地球が通過するのが見えていた可能性がある。

「黄道に近い恒星のまわりにいる宇宙人たちは、今は太陽の手前を地球が通過するのを見られないかもしれませんが、数千年前に地球に生命が存在していることを発見していたかもしれませんし、数千年後に太陽の手前を通過する地球を発見するかもしれません」とヘラー氏。

ロス128の惑星に住む宇宙人は、1000年近く前に地球に人が住んでいることに気付いただろうか? それとも、この地球に進化する生物圏の兆候があることを発見するチャンスを逃してしまったのだろうか? トラピスト1の惑星から地球を見つけられるようになったとき、地球上の生命はどのように見えるだろうか? その痕跡はどのように変わっていくのだろうか?

シェイク氏は、「私たちは『今、ここ』という条件を広げて考える必要があります」と言う。「自分と同じ進化段階にあるものを探していては、探索の幅が狭くなってしまいます。生物学的にも技術的にも、はるかな未来と過去について考えることが必要です」

(文 NADIA DRAKE、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年6月26日付]

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