2021/7/21

冬眠や夏眠など、睡眠に近い現象はほかにもある。

冬眠は、動物が寒い冬の数カ月を乗り切るために行う、代謝率を下げて活動もしない状態だ。冬眠やその他の長期的な活動停止は、いわゆる睡眠ではなく、気温や食料不足などの長期にわたる環境変化に関係している。

極限状態においてエネルギーを節約するために、「トーパー」と呼ばれる状態に入る動物もいる。これも体温や代謝率を下げる状態のことで、冬眠より短く、継続時間は24時間に満たない。ルリノドシロメジリハチドリの心拍数は、普段の1分間1200回以上から、トーパーの間は50回にまで低下する。ハチドリは寒い冬の時期に体力を温存して生き延びるためにトーパーに入る。

夏眠は、暑く乾燥した環境への対応だ。アフリカハイギョ(Protopterus annectens)は、自分たちがすむ水場が干上がるとき、粘液を出して体の周りに保護膜を作り、地中に潜って夏眠に入る。彼らはこうして安全なすみかを作り、過酷な時期をやり過ごす。

睡眠は生き残り戦略

一見したところ、睡眠は動物にとって特に安全でも、最善の時間の使い方でもないように思えるかもしれない。もし眠らなければ、その時間を食事や捕食者への警戒に使うことができるからだ。しかし自然界で重要なのは「自分の遺伝子を次につなげることだけ」だと、シーゲル氏は言う。

動物たちは通常、特定の時期に繁殖を行う。常に覚醒していたとしても、繁殖が頻繁になるわけではない。一部の種にとっては、自分の遺伝子を守り、子孫の生存を可能にすることが、遺伝子を確実に継承するための最善の方法となる。睡眠は、動物たちのそうした行動の助けとなると、シーゲル氏は言う。

「当然ながら、わたしたち人間が一晩中起きて新生児を見守っていれば、赤ん坊の安全性はわずかに高まるでしょう。しかし、そうすればわたしたちは脳や心臓に燃料を供給するためにより多くのエネルギーが必要となり、長期的には、自分自身や赤ん坊の生存に悪影響を及ぼすことになります。大半の種に同じことが言えます」

動物たちの多くは、安全な寝床を確保している。「ただし、大型の草食動物のようにこれに当てはまらないものは、あまり眠らず、人間のように深く眠ることもありません」

ゾウやキリンのような大型草食動物はまた、大量の餌を探す必要があるため、一晩に2時間ほどしか眠らない。

「もしキリンが人間と同じように眠り、うつ伏せで意識を失っていたなら、彼らはいなくなってしまうでしょう」

シーゲル氏によると、13年あるいは17年ごとに地上に出てくるセミはすばらしいという。彼らは生涯の大半を地下に潜って過ごし、その数は数百万にも及ぶ。

「生き残りを左右するのは、自分の子を残すことができる子孫をどれだけ残せるかということだけであり、起きている時間がどれだけ長いかではありません」とシーゲル氏は言う。「その種が生態系の中で占める地位によって、それぞれ適切な睡眠の量というものがあるのです」

(文 LIZ LANGLEY、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年6月26日付]

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