こんにちは、法政大学でキャリア論を教えている田中研之輔です。働き方が多様化した今、キャリア形成も多様。思うようにキャリア形成できている人もいれば、うまくいかない人もいるでしょう。新卒で入社して3年以内の離職率はおよそ3割です。離職の中身も様々です。本連載では、この数字をドライに追いかけるのではなく、変化が激しい時代における一人ひとりの働き方やキャリアに向き合っていきたいと思います。
今回は都内有名私立大学を卒業し、IT関連の大手上場企業に勤務する稲田美波子さん(仮名・25歳)にインタビューしました。稲田さんは学生時代に長期インターンなどで早くから自分の働きたい姿のイメージを持ち、第1志望の会社に就職しました。しかし、入社3年目の今、離職することをほぼ決意しています。早速その胸中について聞いていきましょう。
大きな組織への違和感、「仲間」と思えない社員
――3年目を迎えた今の率直な気持ちを教えてください
次のチャレンジをしたいと感じています。これまでを振り返ると、1年目は仕事を覚えることにとにかく必死。2年目になると、組織内の違和感やフラストレーションに向き合う日々でした。3年目の今は、社内調整業務に疲れを感じるようになり、社外でも自分を試してみたいと思うようになりました。複業や起業を視野に入れており、準備が整えば「ザ・会社員」の生活はもうやめようと考えています。
――組織内の違和感やフラストレーションは、どんなときに感じたのですか?
生意気と思われるかもしれませんが、「社会人はみんなもっと視座が高いと思っていた」というのが正直なところです。大きな組織ですので、非常に優秀で信頼している先輩社員もいますが、日ごろから働き方に疑問を抱かざるを得ないような社員もいました。例えば、どう考えてもミスをしたのはその社員の方なのに、私にミスをおしつけられ、他の上長がいる前で怒られたこともあります。怒られたことが嫌だったのではなく、「一緒に同じ目標をもって事業を成長させていく仲間」としては見られなくなってしまいました。
業務面ではセクショナリズム(組織内の縦割り)の弊害もありました。部門ごとに業務が細分化されていて、部門をこえての横断的な仕事の連携が効率よくできていないのです。SNS(交流サイト)活用を提案したときもなかなか進まず。入社前にイメージしていたスピード感とはギャップがありました。
私が会社に対して感じる、こうした違和感は、多かれ少なかれサラリーマンは誰もが感じるのではないかと思います。新卒入社をして1社目なので、他社との比較ができませんが、「このフラストレーションは他の企業に移っても解決しないのではないか」という考えから、一般企業への転職は考えなくなりました。