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ジョージ・ハリスン50周年記念盤 音源も資料も究極

特集 ビートルズ4人の「新譜」(4)

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NIKKEI STYLE

日経エンタテインメント!

2021年11月25日から3日連続で、ドキュメンタリー映画『ザ・ビートルズ:Get Back』が配信されるビートルズ。『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのピーター・ジャクソン監督が手掛けた6時間の作品ということで注目を浴びているが、実は解散から50年がたった20年から21年にかけて、メンバー4人の「新譜」がそろって発売されることでも話題になっている。

これまでポール・マッカートニーリンゴ・スタージョン・レノンと紹介してきたが、最後に登場するのは、8月6日にリリースされるジョージ・ハリスンのソロアルバム『オール・シングス・マスト・パス』50周年記念盤だ。ビートルズ研究家の広田寛治氏がそのアルバムの位置づけ、そして50周年記念盤への期待を語る。[※特に注記がない場合、本文中の『』はアルバム名、「」は曲名を示している。]

ジョージ・ハリスンの『オール・シングス・マスト・パス』は、ポール・マッカートニーが解散を公にした直後の1970年5月26日にフィル・スペクターを共同プロデューサーに迎えて制作が開始された。レコーディングは10月までの5か月間で、リンゴ・スター、クラウス・フォアマン(ベース)、ビリー・プレストン(キーボード)に加え、エリック・クラプトンらも参加。スペクター流の緻密で重厚な「ウォール・オブ・サウンド」の手法を取り入れ、じっくり時間をかけて制作されている。

ジョン、ポールを超え全英8週、全米7週1位

収録曲の多くはビートルズ時代に書かれ、アルバムに収録されることなく埋もれていた曲だった。タイトル曲「オール・シングス・マスト・パス」をはじめ、「イズント・イット・ア・ピティー」「レット・イット・ダウン」「ヒア・ミー・ロード」の4曲は69年1月のゲット・バック・セッションでも演奏されていた(「ゲット・バック・セッション」については記事「ビートルズ映画『ゲット・バック』 未公開映像に興奮」参照)。シングルカットされて大ヒットした「マイ・スウィート・ロード」「美しき人生」、当時のビートルズの状況やポールとの関係を歌った「ラン・オブ・ザ・ミル」や「ワー・ワー」などの多くの曲も68年から69年に書かれていたものだ。

また「アイド・ハヴ・ユー・エニイタイム」「イフ・ノット・フォー・ユー」などのボブ・ディランとの共作曲やディランのことを歌った「ビハインド・ザット・ロックド・ドア」なども収録。ジョージの心が、ポールがいるビートルズから離れ、新しい仲間であるディランに移っていく様子も感じられる。レコーディング中に書かれた曲も多く、この時期のジョージがいかに創作意欲にあふれていたのかがわかる。

アルバムは1970年11月30日に、ジャム・セッションを含む3枚組という異例のボリュームで発売され、イギリスで8週、アメリカで7週1位の大ヒットを記録。第1弾シングル「マイ・スイート・ロード」も英7週、米4週1位の大ヒット。ジョージはポールやジョン・レノンを圧倒する大ヒットでソロデビューを飾ったのだ。

ジョージのソングライターとしての評価もますます高まり、70年に「サムシング」でアイヴァー・ノヴェロ賞(毎年、すぐれたソングライター、作曲家に贈られる英国の賞)を獲得したのに続き、71年にも「マイ・スウィート・ロード」で2年連続の受賞を果たしている。ジョージはビートルズ第3のソングライターという肩書をも打ち破り、時代のトップを走るシンガーソングライターに躍り出たのだ。ポールとジョンのソロ第1作と同様、ジョージのこのアルバムも彼の代表作とみなす人は多い。

『オール・シングス・マスト・パス』50周年記念盤

オリジナル盤発売から50年となる2020年から噂されていた『オール・シングス・マスト・パス』50周年記念盤が、1年ほど 遅れて8月6日にいよいよリリースされる。

01年1月にはデジタル・リマスターされた『ニュー・センチュリー・エディション』が30周年記念盤として発売され、ジャケットがカラー写真に変更され、「マイ・スウィート・ロード」のリメイク、未発表曲「アイ・リヴ・フォー・ユー」、未発表バージョン3曲などが収録されていた。

今回の50周年記念盤は、生前のジョージの意向をくみ取る形で、息子のダニーがエグゼグティブ・プロデューサーを務め、全面的にリミックス・リマスターを施しての発売となった。ジャケットはオリジナルとも01年盤とも異なる緑と黒の2色。

日本盤では、オリジナル盤(LP3枚組23曲収録)を新たにリミックス(18曲)・リマスター(5曲)した2CDをベースに、アウトテイク、デモ音源などを加えた3種類のセットなど、4種類のフォーマットが発売される。ほかにもUNIVERSAL MUSIC STOREでは、独占で究極のUber Deluxe Editionも限定予約の受付が開始されているほか、輸入盤で5LP、3LP、3LP Colorを入手することもできる。

ここでは日本盤として発売される4つのフォーマットと、究極の内容となっているUber Deluxe Editionを紹介しておこう。

1 2CDエディション(SHM-CD仕様)/UICY15999/6000 英文ライナー翻訳・歌詞対訳・ポスター付。

2 3CDデラックス・エディション/UICY79730/2 2CDエディションの内容にセッション・アウトテイクとジャム音源17曲分を収録したCD1枚+20ページブックレットを加えたもの。

3 完全生産限定盤スーパー・デラックス・エディション/UICY79729 2CDエディションの内容に加えて、30テイク分のデモ音源を収録したCD2枚+セッション・アウトテイクとジャム音源17曲分を収録したCD1枚+ブルーレイ1枚[オリジナルアルバム全曲分のHDステレオ、5.1サラウンド、ドルビー・アトモスのオーディオ収録]+当時の未公開写真や記念品・手書き歌詞・日記・スタジオでのメモ・テープ保管庫の画像・各曲解説などを収録した60ページの豪華スクラップブック。

4 直輸入仕様/完全生産限定スーパー・デラックス・LPエディション スーパー・デラックス・エディションのブルーレイ収録分を除く音源を収録したLP8枚+60ページの豪華スクラップブック。

5 輸入盤Uber Deluxe Edition 木製の特製ボックスに、上記スーパー・デラックス・エディション収録のCD5枚+ブルーレイ1枚、LP8枚に、96ページの拡張版スクラップブック、アルバムの制作過程を記録した44ページのブックレット、ジョージのフライアー・パークのナラの木で作られた木製しおり、さらにジャケットに登場する妖精たちやジョージの6分の1スケールのフィギュア、クラウス・フォアマンの限定イラスト、ジョージが師と仰いでいたパラマハンサ・ヨガナンダの著作『ライト・フロム・ザ・グレート・ワンズ』、特製ボックス入りのルドラークシャ・ビーズなどを収納。

ジョージのこのアルバムに初めて触れる人は2CDエディションをじっくりと味わってほしいが、熱心なファンから注目を集めているのは、Uber Deluxe Editionだ。『オール・シングス・マスト・パス』に関連する現時点で入手可能な最新音源が完璧にそろうだけではなく、ジョージがこの作品の制作にかけたスピリットや熱い情熱を体感させる資料がたっぷりと収納され、これまで知る由のなかったジョージ・ワールドをより深く味わうことができるのだ。とりわけこのセットでのみ入手可能なアルバムの制作過程をまとめたブックレットは、サウンド探求派には見過ごせない重要資料になるだろう。

ディランのアルバムでもジョージの演奏が

ジョージ関連では、21年2月26日に発売されたボブ・ディランのアルバム『1970』(CD3枚組)にも注目したい。ここには『オール・シングス・マスト・パス』のレコーディング開始3週間前の1970年5月1日に行われたジョージとディランとのセッションからの9曲が収録されているのだ。いずれもラフな演奏だが、ポールによってビートルズ解散が公表された直後にもかかわらず、ジョージがディランとラフに演奏しているのを聴くと、彼がすでにビートルズでいることより、気の合うミュージシャンたちと自由に音楽活動を楽しもうとしていたことが伝わってくる。

ビートルズとして作品発表の機会が限られていたジョージは、解散期には何枚ものソロアルバムを制作できるほどの作品があった。ジョージはビートルズでアルバムを作ることになろうと、ビートルズが解散しようと、どちらに転んでもあり余る自分の作品をソロアルバムで発表するしかないと考え、早くからその準備を進めていたとも言われる。ジョージがビートルズ解散をめぐるポールとジョンのやりとりを「達観」して眺めていたのは、そんな意思を固めていたからかもしれない。

ソロ活動から見えてくる解散の意味

ビートルズ解散という事態に直面し、メンバー4人はそれぞれみずからの活動や内面を見つめ直すことになった。

ジョンはこれまで以上に内省的な、聴く者の魂までをもえぐり出すナイフのように研ぎ澄まされたアルバム『ジョンの魂』を制作した。

ポールは、これまでには見せたことがない内省的だが暖かさのある作品『マッカートニー』を生み出した。

ジョージはビートルズ時代に発表できずにいた曲を集めて3枚組のアルバム『オール・シングス・マスト・パス』を発表。内省的であるとともに、哲学的宗教的なメッセージ性が色濃くにじみ出た内容で、曲も詞もジョージにしか書けないどこまでも優しさに満ちた作品だった。

そして、自作曲もボーカル曲も少なく、ビートルズ時代には活躍の場が限定されてしまっていたリンゴはジョージの助けを借りながら作曲家として自立。遅ればせながら73年にアルバム『リンゴ』で多くのミュージシャンの協力を得ながらほのぼのとしたシンガーソングライターとしてソロデビューを飾ったのだ。

こうしてメンバー4人のソロデビュー作を比べてみると、4人のめざす音楽性やメッセージ性がそれぞれ異なる方向を向いていたことは明らかだろう。

多くのファンはビートルズ解散を惜しみ涙した。だがビートルズ解散後もメンバー4人は輝かしいソロ活動を続け、数々の名盤を世に残している。ビートルズもまたまるで解散していないかのように、今なおさまざまな「新譜」を発表し続けている。ビートルズ解散は間違いではなかった。今では多くのファンがそう考えるようになっている。

そして迎えたビートルズ解散50周年。パンデミックで1年遅れになったにもかかわらず、新作映画『ザ・ビートルズ:Get Back』は大きな話題を振りまきながら、6時間という長さで、11月25日から3回にわたりディズニープラスで配信される。

今秋以降にはその新作映画関連のリリースも目白押しで、映画のサントラ盤、旧作映画『レット・イット・ビー』のリストア版、ゲット・バック・セッションの未発表テイクなどを集めたアルバム『レット・イット・ビー』の50周年記念盤などが次々と発売される可能性がある。

解散から50年を経た今も、ポールとリンゴはこの世で新しい音楽活動に挑戦し続けている。ジョンとジョージはソロ時代の活動がより深く探究され、その作品とメッセージが伝承されている。そしてビートルズは現役ミュージシャンを上まわる話題を今なお提供し続けている。こうした事実こそが、なによりもビートルズが時代を超える存在であることを雄弁に語っていると言えるだろう。

広田寛治
1952年愛媛県松山市生まれ長崎県長崎市育ち。山梨県立大学講師などを経て、作家・現代史研究家。日本文芸家協会会員。『大人のロック!』(日経BP/ビートルズ関連)、文藝 別冊(河出書房新社/ロック関連)、ムック版『MUSIC LIFE』(シンコーミュージック/ビートルズ関連)などの執筆・編集・監修などを担当。主な著書に『ロック・クロニクル/現代史のなかのロックンロール(増補改訂版)』(河出書房新社)などがある。

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