人間には聴こえない特殊な音を使って、観客のスマートフォンを操作できるシステム「Another Track」。この技術は、野球場で観客のスマホ画面を光らせたり、映画館での副音声上映などに活用されています。
この音響通信ソリューションシステムを開発したのが、エヴィクサー。技術専門役員CROの長友康彦氏に、MTVジャパンやユニバーサルミュージックなどで新規事業開発を担ってきた鈴木貴歩氏が話を聞きました。
エンターテインメント関連に加え、防災での活用も
エヴィクサーが独自に開発した、音響通信ソリューションシステム。“映画館、スタジアム、劇場などで行われるプログラム”と、“観客側のデバイス”をその進行に応じて非可聴音で制御することを可能にしている。現在は、エンターテインメント関連で主に使われているが、防災時にも活用できるよう、実証実験が行われている。例えば、緊急事態が起きた際に、防災無線に音声透かしを入れることで、その音を拾ったスマホの画面に避難指示を表示するといったことなどを構想しているという。
みんながマイクを持つ時代に着目
――Another Trackとはどのような技術なのでしょうか?
スマートフォンやタブレットなどに向かって、人の耳には聴こえない特殊な信号を組み込んだ音を送ると、デバイス側のマイクが音を拾って専用アプリが反応、画面に映像や文字を表示したり、音声を流すことができるシステムです。

弊社では、スマホの普及によって皆が当たり前のようにマイクを持つ時代となったことに着目し、2012年ごろから音声に情報を埋め込む「音響透かし」の技術開発を始めました。当初は、音を受けてからデバイスが反応するまでに3秒ほどかかっていたのですが、現在では0.1秒にまで短縮することに成功。ほぼリアルタイムで反応させることができるようになっています。
――2018年には、千葉ロッテマリーンズの公式アプリにも採用されたそうですね。
彼らの本拠地であるZOZOマリンスタジアムでは、ホームランを打った際や、試合に勝ったときにあおり動画が流れるんです。その音声に特殊な音響信号を埋め込むことで、アプリを入れている観客のスマホがカラフルに光るようになっています。これをWi‐Fiなどの電波を使って行おうとすると、回線がパンクするリスクがありますが、Another Trackを使えば問題ありません。今後はマイク機能を備えたペンライトの「Lumi × Air」の発売も決まっており、球団のロゴなどを入れてグッズ化する予定です。