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「そばで健康に貢献する」という店舗理念が看板にもうかがえる

近所の昼飲みにも使える「ほどよい」加減

気が利いているのが、店に入ってすぐ、無料の飲み物が提供されるのだが、定番のそば茶に加え、健康酢が小さなグラスで登場する。店舗理念が「そばで健康に貢献する」であるため、それを実現しているのだろう。

では、なぜそば店だったのか?

同社によると、全国各地の歴史あるそば店が後継者問題で閉店していく中、その歴史と文化を継承していくことが狙いとのこと。将来的には、国内だけでなく、世界にも打って出るつもりのようだ。

ベンチャー企業として生まれたHISは、旅行事業のほかに多くの事業を手がけているが、さらに新規プロジェクトを2つ立ち上げている。一つは、いわゆる「終活」をサポートする「ライフ&エンディング」事業で、墓参りやお墓の掃除代行をする。もう一つが今回の飲食事業だ。

四ツ谷店のテーブル。「ねぎ」「胡麻(ごま)」「鰹節(かつおぶし)」はたっぷり使える

そば事業は意外と難しく、大きなチェーンが少ない。立ちそばは「ゆで太郎」「名代富士そば」「小諸そば」、商業施設中心にグルメ杵屋が展開する「そじ坊」、郊外ではサガミホールディングスの「サガミ」「味の民芸」など和食レストランチェーンくらいか。町場には「立ち」以外に大きなチェーンはなく、ほとんどが個人店だ。それが経営者の高齢化で次々になくなっている。HISは、このマーケットを狙っているのだろう。起業家精神あふれる澤田氏らしい企業行動だが、正直大きなビジネスになるかどうかは怪しい。

ただ、そうした客観的な視点とは別に客として近所にこうした店があれば、おそらく通ってしまうと思う。使い勝手の良さと、価格、料理、サービスのバランスが絶妙なのだ。

実は2号店の飯田橋店にも以前行ったことがある。アパホテルの1階で宿泊客の朝食需要も賄う店だったが、オペレーション効率化のためだろう、食券機での対応だった。夕方以降に、天ぷらをアテにちょい飲みをしたくても、いちいち券売機にお金を入れなくてはいけなかった。四ツ谷店は、その問題を解決し、通常のオーダーの仕組みになっていた。

飯田橋店の店頭に置いてあるそば粉をひく機械

さすがHIS、客の不満は確実に改善し、新しいチャレンジに取り組んでいる。町場のそば店は、個人店が次々廃業しており、老舗そば店もどきの手打ち好きオヤジの店が増えている。特に地方はその傾向が大きい。ただ、こうした店は意外に高い。あまり使い勝手が良くないのだ。

そんな中、HISが展開している「満天ノ 秀そば」は、悪くないポジションにいる。これからどこまで事業としてのブラッシュアップができるかだが、可能性は秘めている。ライバルはおらず、マーケットはなくならないのだから。ブルーオーシャンになるかもしれない。近所で昼飲みしたいのに、そば店が次々無くなっているのを見ると、期待したくなるのである。

(フードリンクニュース編集長 遠山敏之)


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