親の介護で後悔しない4つの心得 ゴールは何なのか?

写真はイメージ=123RF
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日経Gooday(グッデイ)

突然、親の介護と向き合うことになった子供が離職するケースも少なくないなど、介護には負担、不安、悩みがのしかかる。親に長生きしてほしいと思う心とは裏腹に、「いつまで介護が続くのだろう」と考えてしまい、大きなストレスを抱えることにもなる。介護者をサポートする活動をしている東京・小金井市のNPO法人UPTREE(アップツリー)代表の阿久津美栄子さんに、前回(「突然くる親の介護 翻弄されないための6つの基本とは」)に引き続き話を伺った。阿久津さんは30代で突然、両親の介護をすることになった。今回は、阿久津さん自身の経験と共に、後悔しない親の介護について聞いた。

――阿久津さんは38歳で急に介護者となられたそうですね。子育てをしながら介護をされたそうですが、大変なストレスだったと思います。

介護者をサポートする活動をするNPO法人UPTREE(アップツリー)代表の阿久津美栄子さん

阿久津美栄子さん(以下、阿久津さん) 突然、両親を立て続けに介護することになり、知識が全くなく翻弄されていました。子育てもしていたので、自分の時間がなくなり、ママ友に介護の話をしたものの、誰にも自分のつらさが伝わらず、そのうち家族にも理解してもらえないという状況に陥りました。

遠距離介護だったので毎日親に会うわけではなかったのですが、子供が休みのときに1カ月親の家に滞在するなどしていて。それを繰り返していたら、自分の感情をコントロールすることができなくなっていったんです。

そうした状況下で唯一の気晴らしは、当時していたアルバイトでした。介護のことを考えずに仕事に集中しているときが唯一精神的に楽だったんです。でも、あるとき、仕事帰りにコンビニエンスストアで買い物をしたら、単純なお金の計算ができなくなっていた。自分の能力の限界を超えていて、脳がキャパシティオーバーになっていたんですね。だから、当時は、買い物をするときはいつも、小銭を出すのではなく、1000円や1万円札を出して支払いをしていました。

介護者からよく聞くのが、味覚障害です。色々な症状がありますが、何を食べても苦いと感じるようになる人が多い。私も味覚障害が起きましたが、私の場合、甘く感じました。甘くてしょうがない。こうした障害を当たり前に耳にするぐらい、介護者はストレスを抱えます。経験がないことに加え、いずれは相手の死に直面する。でも、いつ終わりが来るかは分からない。先が読めないことへのストレスは計り知れません。

介護には必ず「ゴール」がある

――確かに、子育てと違い、介護はいつ終わりが来るか分からないのがストレスだとよく言われますね。

阿久津さん 自分が経験して初めて分かったのは、介護には必ずゴールがあるということです。当たり前のことですが、介護をしているときはそれが見えない。「死」を見ないふりをしてしまう。私の場合もそうでした。うまくいかなかった介護の典型的な例なんです。

UPTREEでは、介護の初期から看取り期に至るまでの「介護ロードマップ」を作成しています。混乱期、負担期、安定期、看取り期と4つのステップに分けていますが、介護のゴールは看取り、つまり死別だということを意識すると、時間が無限ではないと分かる。すると、その時間を大切にしようと思えるんです。

ゴールを意識しないと、先が見えない時間と戦うことになり、「毎日なんで私がこんなことをやらなきゃいけないの」となる。終わりが来ることをしっかり意識できれば、初動の混乱期にも客観的になれます。

「介護ロードマップ」を意識してみる

UPTREEによる「介護ロードマップ」。介護の始まりから終わりまで、おおよその道のりを見通すことは、介護者の精神的な助けにもなる。(画像提供=UPTREE)
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