渋幕・渋渋からも五輪出場者は出ていると話す田村校長

この家庭内の対話が教育にはとても重要です。子供のことを一番把握し、長所を知っているのは親です。「あなたはここがいい」と親子で対話するうちに、子供の自己肯定感は高まってきます。日本の子供は、海外と比べて自己肯定感が低いと言われますが、これは親子の対話がうまくかみ合っていないからではないでしょうか。

私は保護者の方に「耳と目は大きく、口は小さくしてください」とよく話します。対話といいながら、「この大学は名門だから、ここを第1志望にしなさい」と一方的に指示したり、命じたりする親は少なくありません。「つい、言っちゃう」という親がいますが、これはダメです。まずはグッと我慢しないといけない。子供の話をよく聞き、そして行動をしっかりと見ましょう。その上で、相談されたら、助言したり、意見を言ったりしてあげればいいと思います。

もちろん対話と言いながら、過度にほめたり、猫かわいがりしたりして、甘やかすのもいいことではありません。最近は親が共働きで忙しい家庭も増えているので、親子の対話は、意外と難しい面があります。一緒に食事したり、共通の趣味を見つけたりして、日常の自然な会話の中で、互いに意思疎通するといいでしょう。

親子でいい信頼関係を築き、自己肯定感の強くなった子供は何事も自主的に活動するようになります。渋渋や渋幕の生徒たちはコロナ禍でも積極的に行動しています。

渋渋では、8月に学びのオリンピックと称して、国内外の中高生が参加するオンラインイベント「SOLA2021」を開催します。「SDGs~私たちのつくる未来~今、渋谷から発信する」をテーマとし、コンテストやワークショップ、プレゼンテーションなどのプログラムを実施するわけです。こちらの「五輪」はオンライン開催なので、コロナ禍でも問題はありません。海外の生徒も多数参加してくれるようです。

最後に昔話を1つします。1964年に開催された東京五輪。その頃、私は渋渋の前身の渋谷女子高で教員として働いていました。テレビでマラソン中継を観戦していました。トップをアベベ・ビキラ選手が走り、円谷幸吉選手が追いかける展開に興奮して、思わず渋谷から神宮の国立競技場まで走って応援にいきました。なんとか間に合い、2人の勇姿を間近で見ることができました。今もいい思い出です。

コロナ禍という異例の環境での東京五輪ですが、世界と戦う五輪選手の姿を今の生徒たちにも見せてあげたいですね。

田村哲夫(たむら・てつお)
 麻布高校を経て東京大学法学部卒、1958年に住友銀行(現三井住友銀行)に入行。62年に退職し、父親が運営していた渋谷女子高校を引き継ぐ。70年から渋谷教育学園理事長。校長兼理事長として83年に同幕張高校、86年に同幕張中学をそれぞれ新設。96年に渋谷女子高を改組し、渋谷教育学園渋谷中学・高校を設立。日本私立中学高等学校連合会会長も務めた。
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