新型コロナウイルス禍での東京五輪・パラリンピック開催に対して、様々な議論が飛び交っています。難しい問題ですが、生徒たちに聞くと、感染対策が徹底されているなら自分たちも見てみたいという声は少なくなかったですね。実は渋渋、渋幕の出身者にも五輪に出場したアスリートはいます。
渋幕はサッカー界の有名選手を輩出しており、田中マルクス闘莉王くん(元日本代表DF)はアテネ五輪で活躍しました。一方、渋渋は柔道部が強豪として知られ、北京五輪やリオデジャネイロ五輪のメダリスト、中村美里さんも出身です。今、気になるのは女子柔道選手で、医学生でもある(渋渋出身の)朝比奈沙羅さんですね。
6月にハンガリーで開催された柔道の世界選手権。女子78キロ超級で金メダルを獲得しましたが、決勝戦での朝比奈さんの行為が話題になり、世界的な称賛を浴びました。その行為というのは、足をケガした相手の選手を「おんぶ」して退場したというもので、本来、ルール的には問題だそうです。しかし、相手を思いやって自然と体が動いたのでしょう。彼女らしいなと思いました。
渋渋に通っていたときから、体が大きいので存在感がありましたが、すごく気持ちのやさしい生徒でした。当時から五輪候補クラスの強豪選手だったので、必死に練習に打ち込んでいました。同時に医師になりたいという明確な目標もあり、勉強にも積極的に取り組んでいた。まさに「文武両道」を追求していました。
現役での医学部突破はかなわず、柔道の強い東海大学の体育学部に進学しました。しかし、子供の頃からの夢は諦めず、同大卒業後、2020年に独協医科大学医学部に進みました。
今の医学生は時間的に大変です。一昔前と比べて学ぶべき知識やスキルは圧倒的に増えています。結果的に朝比奈さんは、東京五輪出場を競う試合で敗れ、五輪では補欠になりました。実際に二刀流を追うのは難しいものです。批判もされたようですが、それでもめげず、今回の世界選手権では優勝したのです。
「耳と目は大きく、口は小さく」
なぜ彼女のような人間が育ったのでしょうか。私の考えでは、両親としっかりした絆を築いていたからだと思います。両親はいずれも医療従事者で、確かお父さんは麻酔医だったと思います。柔道が大変お好きな方だったので、家庭の中で自然と医療や柔道の話で盛り上がっていたようです。