作った楽曲を歌ってもらうボーカルの探し方も、ネット上で完結するというから驚きだ。

「歌い手さんの見つけ方は、ツイッターとYouTubeですね。好きな歌い手さんのツイッターは即フォローし、その人がリツイートしたものもチェックして、芋づる式に新しい人を見つけることも多い。Adoさんも、自分の仲のいい歌い手さんのリツイートで流れてきて知りました。
心を引かれる歌い手は、どこを取っても悪いところがない、みたいな総合力の高い人。『他の曲だったらピッチがズレるかも』『この曲だから味が出ているのかな』などを意識しながら歌い手さんの曲を聴いています。あと、YouTubeに上がっている『歌ってみた』動画は一種の作品なので、それを見れば目指しているゴールも分かる。自分の曲とその人の歌声が重なったときの完成像もそこからイメージしますね。ただ、そういうことは関係なく、暴力的に歌がうまい人には無条件で引かれます。yamaさんやAdoさんがそうでした。
今後については、どうなりたいとかはなくて、ただただ多くの人に響くいい曲を作り続けたいという思いが強いですね。『これからもボカロ曲はずっと作りますか?』と聞かれることも多いんですけど、作り分けている感覚はなくて。毎回、曲に1番合ったボーカルを選んでいるんです。それが人なのか、ボーカロイドなのか、よりマッチするほうを選択しているだけなので。僕がボーカルを務めるのが1番いいと思えるような曲も、今後は作れればいいなと思います」
(ライター 中桐基善)
[日経エンタテインメント! 2021年5月号の記事を再構成]