お金の切れ目、孫との切れ目?
上位10項目からは漏れた中にも多くの示唆があった。目立ったのは家族とお金の問題だ。例えば、子や孫への出費。「晩婚化の影響で、親世代が定年期にさしかかったころに子の教育費が多くかかる例も増えた」(大江さん)。「子の配偶者の父母(孫から見て、もう一方の祖父母)への競争意識が高まるあまり、身の丈を超えて孫に出費し、自分の貯蓄が底をつく人もいる」(馬養さん)。ただ、子や孫はお金を出す側が考えているよりドライなのかもしれない。「孫に多額の教育資金を一括贈与した途端、孫の里帰りがガクンと減った例もあった」(深野さん)
熟年期の離婚・再婚でお金にまつわる問題も多い。離婚は財産分与で、夫婦とも生活は厳しくなる例が多い。再婚では子供らと新たな配偶者との間で相続が問題になりやすい。「離婚も、再婚も様々な事情があってこその行動なので、お金の面だけで語れない。ただ、いずれも生活設計が変わり、これに備えた資金計画などがいるという意識は持つべきだ」(畠中さん)
日経生活モニター会議 番外編 長寿時代のお金の失敗談

日経生活モニターにお金にまつわる失敗を聞くと、長寿化時代ならではの回答が並んだ。「インターネット証券で株式投資。今こそ『売り』と操作したはずが、成立したのは『買い』注文だった」(80代男性)。慣れない操作と衰えを隠せぬ視力ゆえの失敗だろうか。
昔なら感謝されたはずの行動が、大きく目算が狂うこともある。「親は『家を残してやる』と恩を着せるのだが、完全に老朽化してもはや財産かお荷物かわからない」(40代男性)。「『孫全員分の預金口座をつくったぞ』と語っていた父だが、認知症になって通帳も出てこないので、その話がウソかホントかさえ今となってはわからない」(50代女性)
■ランキングの見方 人生100年時代のお金に関して誤算が多い項目。数字は専門家の評価を点数化。イラストは取材を基にしたイメージ。グラフィックスは鎌田多恵子
■調査の方法 個人の家計管理、資産運用に詳しい専門家の協力で「長寿化・高齢化した社会でお金に関連した誤算」を35項目抽出した。その後、13人の専門家に「一般個人が見落としやすい」「失敗すると影響が大きい」などの観点から、重要度が高い理由や対策を含めて順位をつけてもらい、編集部で集計した。
■今週の専門家 ▽和泉昭子(プラチナ・コンシェルジュ)▽井戸美枝(ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士)▽大江英樹(経済コラムニスト)▽瀧俊雄(マネーフォワード執行役員CoPA・Fintech研究所長)▽竹下さくら(ファイナンシャルプランナー)▽野尻哲史(フィンウェル研究所代表)▽畠中雅子(ファイナンシャルプランナー)▽平野敦之(ファイナンシャルプランナー)▽深野康彦(ファイナンシャルプランナー)▽藤川太(家計の見直し相談センター代表)▽馬養雅子(ファイナンシャルプランナー)▽望月厚子(CFP・社会保険労務士)▽森本幸人(森本FP社労士事務所)
(堀大介が担当しました)
[NIKKEIプラス1 2021年7月3日付]