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新型コロナのデルタ株 封じ込めや気になる危険度は?

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ナショナルジオグラフィック日本版

米国のワクチン接種ペースが低下し、その他の国々がワクチン確保に苦心する中、2021年3月にインドで初めて確認された新型コロナウイルスのデルタ株が、死者数を劇的に増やすのではないかと公衆衛生の専門家らが警戒を強めている。

デルタ株は現在、世界70カ国に広がり、インド、英国、シンガポールにおいては最も優勢な株となっている。先週、英国での新たな感染例の90%以上がデルタ株となり、21年5月1日以降、新規感染者が急増した。

デルタ株は英国で最初に発見されたアルファ株(従来株より約50%伝ぱしやすい)と比べて、さらに60%広まりやすいとされている。「これはスーパースプレッダー変異株であり、そこが厄介なのです」と語るのは、米スクリプス・トランスレーショナル研究所の創設者で所長のエリック・トポル氏だ。

トポル氏によると、デルタ株は免疫系から逃れられる特徴を有しており、南アフリカで最初に報告された、これまで最悪の回避能力をもつと言われていたベータ株(B.1.351)を上回ると考えられるという。「そのうえ、これまでに確認されたものの中で最も伝ぱしやすいのです。これは非常に良くない組み合わせです」

デルタ株はなぜ恐ろしいのか

コロナやインフルエンザなどのウイルスは、RNAという分子に遺伝情報を記録しており、それが人間の細胞内で複製する際に生じるコピーエラーによって頻繁かつランダムに変異する。突然変異の中には、ウイルスが抗体を逃れるようにするものや、細胞に感染する能力を高めるものもあれば、何の利益ももたらさないものや、ウイルスを弱体化させてしまうこともある。

デルタ株から見て「成功の鍵」となるのが、新型コロナウイルスの周囲を覆うスパイクタンパク質に起きたいくつもの変異だ。これらのせいで、既存の抗体の一部が以前ほど強く結合できなくなったり、結合回数が減ったりすることがあると、ドイツ、ライプニッツ霊長類研究所の感染症生物学者マーカス・ホフマン氏は説明する。

ホフマン氏らは、デルタ株とその近縁であるカッパ株が、過去の感染やワクチン接種によって生成された抗体を回避することを、5月5日付で査読前の論文を投稿するサーバー「bioRxiv」に発表している。論文によると、抗体治療薬の中には、バムラニビマブなどデルタ株を中和できないものもあったが、エテセビマブ、カシリビマブ、イムデビマブの効果は保たれていた。

 デルタ株のスパイクタンパク質の452番目の位置にある変異は、米カリフォルニア州で確認された変異株の一部にも存在する。これがウイルスの広がりやすさを高め、集団内での拡大を助けているようだと、米エモリー大学ワクチンセンターの免疫学者メフール・スタール氏は説明する。

ウイルスの適応力や複製力を向上させる変異は、世界中でそれぞれ独自に進化する傾向がある。伝ぱしやすいデルタ株やそれに近い変異株、そしてアルファ株は、いずれもスパイクタンパク質の681番目の位置に変異をもつ。この位置の変異は、細胞へのウイルスの侵入や拡散を容易にする進化上のゲームチェンジャーであると考えられており、現在、世界中の新型コロナウイルスの間で急速に広がっている。

こうした変異に加え、5月8日に「bioRxiv」投稿された査読前の論文で、デルタ株スパイクタンパク質の478番目の位置に、弱い中和抗体からウイルスが逃れやすくなる変異があることも示されている。この変異もまた、21年初頭以降、米国、メキシコ、欧州における変異株で多く見られるようになっている。

封じ込めは「非常に難しい」

インドと英国で、4~6週間のうちにデルタ株が優勢になったことから、デルタ株の伝ぱのしやすさと感染しやすさが従来の変異株よりも高いことがわかる。また、デルタ株はより重い症状を引き起こす可能性がある証拠も見つかりつつある。例えば6月14日付で医学誌「The Lancet」に発表された論文では、スコットランドにおいて、デルタ株による入院のリスクは、すでに重症化しやすかったアルファ株の約2倍であると報告された。

「より伝ぱしやすく、重症化もしやすくて、ワクチンを逃れるという3つの要素が組み合わさったデルタ株は非常に危険です」と英ロンドン大学クイーンメアリー校の臨床疫学者ディープティ・グルダサーニ氏は語った。いったん国内・域内に侵入してしまえば、デルタ株は急速に広がる。「封じ込めるのは非常に難しく、数週間のうちに支配的な変異株になる可能性が高いでしょう。デルタ株によってパンデミック(世界的大流行)の流れが変わることもあり得ます」と、警鐘を鳴らす。

イングランド公衆衛生局(PHE)が6月11日付で発表した報告によると、英国においては、緊急治療を必要とし、デルタ株と確認された全患者の31%が、一度新型コロナに感染したことがあるか、少なくとも1回のワクチン接種を受けていた。

5月24日付で「bioRxiv」に発表された現在査読中の別に研究では、ファイザーのワクチンは2回接種後、発症予防効果についてアルファ株では93%の有効率を示したが、デルタ株の場合は88%だった。アストラゼネカのワクチンは、2回の接種でアルファ株に対して66%の有効率があったのに対し、デルタ株では60%だった。

 しかし、どちらのワクチンにおいても接種が1回だった場合には、その有効率はアルファ株に対しては51%、デルタ株に対しては33%にとどまった。この数値は、米食品医薬品局(FDA)が安全なコロナワクチンに求めた基準である50%を下回る。

また別の論文投稿サーバー「OSFPREPRINTS」に6月3日付で発表された未査読の研究は、インドにおける63例のブレイクスルー感染(ワクチン接種後の感染)の4分の3ほどはデルタ株であり、ワクチン(10例がアストラゼネカ製、53例がバラード・バイオテック製)を完全に接種した医療従事者の間でそうしたケースが多かったと報告している。

ワクチン接種後も社会的距離を

現在、世界中でいくつものワクチン候補が生まれており、国際的に合意された有効性の基準は存在しない。そのため、それぞれのワクチンが新たな変異株に対して発揮する防御力は異なるとみるのが妥当だ。

米国の場合、ワクチンの接種を完全に終えているのは6月21日の時点で人口の45%であり、まだ大多数の人が感染しやすい状況にある。公衆衛生上の制限を緩めて早々に勝利宣言をすれば、デルタ株が急増する絶好の機会を提供してしまうかもしれない。特に危険なのが秋だ。

まだ発表されていないある研究においては、欧州とイスラエルにおけるパンデミックの1年間を分析した結果に基づき、新型コロナの発生状況には季節的な変化がある可能性が示唆されている。このウイルスの季節ごとの傾向はまだはっきりとはわかっていないものの、換気が悪く湿度の低い屋内で長時間過ごした場合、ウイルスがより急速に広がることはわかっているとトポル氏は語る。

英国で今起こっていることは、世界の多くの地域で起こる可能性がある。「われわれはワクチン接種後も社会的距離を保つべきです。ワクチンが新たに出現する変異株に対して完全な防御になるとは限らず、ブレイクスルー感染の可能性は常にあるからです」。東京大学のウイルス学者で、デルタ株などの新規変異株の伝染における変異の影響を研究している佐藤圭氏はそう語る。

「このような変異株が、特にワクチンを接種していない人の間で広がるほど、より多くのウイルスが変異を起こして、いずれはより抗体を効率よく逃れる変異を獲得することになります。そうした変異株に対して、現在のワクチンの有効性がさらに低くなることも理論的にはあり得ます」とスタール氏は言う。

これにはトポル氏も同意する。もしデルタ株に真剣に対処しなければ、「脆弱な地域において感染者が大幅に増加し、入院する患者も増え、パンデミックはさらに長引くことになるでしょう」

(文 SANJAY MISHRA、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年6月23日付]

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