新型コロナのデルタ株 封じ込めや気になる危険度は?

日経ナショナル ジオグラフィック社

ナショナルジオグラフィック日本版

2021年5月12日、家庭で行う新型コロナウイルスの迅速抗原検査を実演してみせる英国の小学生。英国の子供たちは、学校に通うための条件として、毎週この検査を2回受け、結果を所定のポータルサイトにアップロードすることが義務付けられている(PHOTO ILLUSTRATION BY MATT CARDY/GETTY IMAGES)

米国のワクチン接種ペースが低下し、その他の国々がワクチン確保に苦心する中、2021年3月にインドで初めて確認された新型コロナウイルスのデルタ株が、死者数を劇的に増やすのではないかと公衆衛生の専門家らが警戒を強めている。

デルタ株は現在、世界70カ国に広がり、インド、英国、シンガポールにおいては最も優勢な株となっている。先週、英国での新たな感染例の90%以上がデルタ株となり、21年5月1日以降、新規感染者が急増した。

デルタ株は英国で最初に発見されたアルファ株(従来株より約50%伝ぱしやすい)と比べて、さらに60%広まりやすいとされている。「これはスーパースプレッダー変異株であり、そこが厄介なのです」と語るのは、米スクリプス・トランスレーショナル研究所の創設者で所長のエリック・トポル氏だ。

トポル氏によると、デルタ株は免疫系から逃れられる特徴を有しており、南アフリカで最初に報告された、これまで最悪の回避能力をもつと言われていたベータ株(B.1.351)を上回ると考えられるという。「そのうえ、これまでに確認されたものの中で最も伝ぱしやすいのです。これは非常に良くない組み合わせです」

デルタ株はなぜ恐ろしいのか

コロナやインフルエンザなどのウイルスは、RNAという分子に遺伝情報を記録しており、それが人間の細胞内で複製する際に生じるコピーエラーによって頻繁かつランダムに変異する。突然変異の中には、ウイルスが抗体を逃れるようにするものや、細胞に感染する能力を高めるものもあれば、何の利益ももたらさないものや、ウイルスを弱体化させてしまうこともある。

デルタ株から見て「成功の鍵」となるのが、新型コロナウイルスの周囲を覆うスパイクタンパク質に起きたいくつもの変異だ。これらのせいで、既存の抗体の一部が以前ほど強く結合できなくなったり、結合回数が減ったりすることがあると、ドイツ、ライプニッツ霊長類研究所の感染症生物学者マーカス・ホフマン氏は説明する。

ホフマン氏らは、デルタ株とその近縁であるカッパ株が、過去の感染やワクチン接種によって生成された抗体を回避することを、5月5日付で査読前の論文を投稿するサーバー「bioRxiv」に発表している。論文によると、抗体治療薬の中には、バムラニビマブなどデルタ株を中和できないものもあったが、エテセビマブ、カシリビマブ、イムデビマブの効果は保たれていた。

次のページ
封じ込めは「非常に難しい」
ナショジオメルマガ