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志望動機、読む人の視点で 人柄が見えれば熱意伝わる

ふつうの大学生のための就活ガイド 第5話

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NIKKEI STYLE

日本大学経済学部・安藤至大教授が、これから就職活動を始める「ふつうの大学生」の相談に乗る、ストーリー形式の連載「ふつうの大学生のための就活ガイド」。第5回のテーマはエントリーシート(ES)の定番、志望動機の書き方です。(学生も会話もフィクションです)

N大学経済学部3年生の南蒼太(みなみ・そうた)は労働経済論の授業を担当している安藤先生のところへ就活の相談に来ています。ゼミの卒業生に「Dリノベーション」という会社で働く先輩がいるという蒼太はハウスメーカーやリノベーション(建物の改修)の会社に興味があります。前回はDリノベーションを想定して書いたESを安藤先生に見てもらい、「ガクチカ」(学生時代に力を入れたこと、の略称)のポイントを教わりました。(前回記事はこちら

安藤先生 次は志望動機について、一緒にチェックしていきましょう。

あなたが当社を志望した理由はなんですか?

(800字以内)
私が貴社を志望した理由は3つあります。
(1)貴社で働いている大学の先輩から話を聞いて、事業内容に興味を持ったことです。特に「家は、お客様にとって人生で最大の買い物であり、正解がない難しい仕事ではあるが、お客様に認められた時の達成感は大きい」という点に魅力を感じました。また仕事の進め方として「チームワークを大切にしている」という点が強調されていたことも働きたいと思った理由です。
(2)貴社のチャレンジ精神に共感したことです。少子高齢化や災害など未知の世の中に対して悲観しているのではなく、貴社は新しいことに多く挑戦しています。そういった社風のある貴社は、新しいことにチャレンジをさせてくれる会社であると考えています。私は若いうちから活躍したいと考えており、貴社であれば実現できると思っています。
(3)貴社の風通しの良さです。企業パンフレットを見て、貴社では、社長向けにプレゼンテーションを行う機会があると知りました。社員の声をトップが拾い上げて実現するスピード感のある経営だと感じています。自分自身もその一員になって働きたいと強く思いました。
以上3つの理由により私は貴社を志望させていただきました。

蒼太 志望動機は、正直難しかったです。企業研究って言うんですよね。あれをちゃんとやっていないので、先輩の話と企業のホームページなどから印象に残ったキーワードを引っ張ってきて貼り付けただけという感じになってしまいました。

安藤先生 先に良かった点を見ておきましょう。1点目は、自己PRと同じく、最初に志望理由は3つと書いてあることです。読む人にとってわかりやすい文章になっています。

2点目は、南さんにしか書けない志望理由が述べられていることです。実際に大学の先輩が働いていること、また先輩の話をきいて具体的に働きたいと思った理由が示されている点はいいですね。

蒼太 ありがとうございます。志望理由の1つ目については、僕も書いていて自信がありました。先輩の話を参考に、本当に自分自身が本心から「これは!」と思ったことが書けました。

安藤先生 では、今から改善点を伝えますね。

蒼太 わかりました。覚悟して聞きます!

安藤先生 改善点の1つ目は、自己PRと同じく文字数です。南さんの志望動機の文字数は504文字でした。やはり8割以上は書きたいところです。

蒼太 これは言い訳なんですが、志望動機については、やはり企業研究が進んでおらず、書けることが少なかったんですよね……。

どの企業にも言えそうな志望動機は伝わらない

安藤先生 そうですね。確かに企業のことを知っておくのは重要です。しかし志望動機のところに企業パンフレットやホームページ、また業界本で学んだことが書いてあったらどうでしょうか? 読み手の採用担当者はどのように思うでしょうか?

蒼太 え、よく勉強しているなと思うんじゃないですか?

安藤先生 それでは質問を変えますね。企業が志望動機を質問することの意図は何でしたか?

蒼太 「この人は内定を辞退しないか、就職後も長く働いてくれるのか」という不安を解消したい、ですよね。

安藤先生 そうですね。率直に言って、南さんの志望理由は、企業側の不安に答えていません。これが改善すべき点の2つ目です。

蒼太 うーん。企業のホームページや採用パンフレットをみて、自分が共感した点について考えて書いたつもりなんですが……。

安藤先生 南さんがそのように考えて書いたということはわかります。しかし例えば、志望動機に書いてある「チャレンジ精神」や「スピード感のある経営」は、経営努力している企業であれば、どの企業も目指していることですよね。これらの言葉は、他の企業向けの志望動機として書いてあっても不自然ではありません。

もちろん「スピード感のある経営」については社長向けのプレゼンテーションという具体的な内容があるので、他社向けに書いたESを使い回したとは思わないでしょう。しかしESの読み手である採用担当者からすると、どの企業でも当てはまることが書かれていたら、「うちの会社である必然性」については納得できないと思いませんか?

蒼太 確かに、多くの会社が目指していることですね。よく考えるとDリノベーションでないといけない理由にはなっていないです。

安藤先生 そうなんです。企業は、志望動機を通じて「この人は、内定を辞退しないか、就職後も長く働いてくれるのか?」といった不安を解消または軽減したいのです。そのためには「なぜ数ある企業の中で当社を選んだのか?」という疑問を解消する内容が記載されている必要があります。

就活の時間には限りがあるからこそ

蒼太 うーん。でも、ちょっと待ってください。それって難しくないですか?

自分の勉強不足を棚にあげて申し訳ないですが、そもそも企業のパンフレットやHPから読み取れる情報には限界があります。たくさんの企業を受ける僕たちは毎回具体的なことを書かなきゃいけないんでしょうか? 正直、どれだけ時間があっても足りません。

安藤先生 南さん、だからこそよく考えて行動する必要があるのです。就職活動に使える時間には限りがあります。

最近はそこまであおる風潮はなくなりましたが、以前は就活サイトの情報をうのみにして100社近くの企業にサイト経由でプレエントリーする学生もいました。しかし100社も調べるのは非現実的です。そして「数を打った」からといって当たらないことも理解する必要があります。最終的に相思相愛と思える1社と出合えればいいのであって、数多くの企業から内定を得ることに本質的なメリットはありません。

蒼太 確かに、大手企業から複数の内定を得た学生の話が武勇伝のようにネットで広まっているので、自分もたくさん受けて、できればたくさんの内定をもらえたらカッコイイかなと、正直思っていました。

安藤先生 自分に合った企業を選ぶためには、自分がどんな働き方をしたいのか、どんな分野で貢献できそうかなどをよく考えておく必要があります。その上で企業がどんな人材を必要としているのかを理解できれば、何を書けば相手に「自分たちが相思相愛であること」が伝わるのか自然と見えてくるでしょう。

先ほど志望動機の1点目については、「先輩の話をきいて具体的に働きたいと思った理由が示されている」と評価しました。それは南さんならではの視点が入っていたからなんです。南さんの人柄が見える記述には意味があります。

すべての企業に直接の先輩がいるわけでもなく、すべての企業でインターンシップ(就業体験)を経験することもできないので、1点目と同じような具体性をもって志望動機を書くのは難しいかもしれません。しかしそれでも、その企業を志望しているからには、何らかの理由があって「その企業で働きたい」と考えたわけですよね?

蒼太 そうですね、ただやみくもに企業を受けようとは思っていません。

安藤先生 そうですよね。これから自己分析や業界研究・企業研究を進めていくことになりますが、ひとまずDリノベーションに好意をもった具体的な理由をもう少し深掘りしてから、ESを改善してみてください。

蒼太 わかりました。もう一度書いてみたいと思います。ESを書くときに他に注意すべきポイントはありますか?

安藤先生 そうですね。意識する必要があるのは、読む人の視点に立つということでしょうか。せっかくの機会ですので、より具体的にESを読む人の気持ちになってみましょう。どんな人がどんな環境で読んでいると思いますか?

蒼太 えーと、人事部の採用担当者が会社の会議室で、読んでいる……のかな?

安藤先生 そんな理想的な環境ではなく、もっと大変な状況を想定してください。そうですね、例えば入社10年目の33歳男性で、残業を終えてやっと帰れると思ったら、明日までにESを100枚読むように人事部から依頼されて、5段階評価を付ける必要がある。ちなみに個人情報保護の問題もあるので、ESを家に持って帰ることはできません。「さあ、これから読むか、早く帰りたいなあ」といった感じでしょうか。

蒼太 え、それは大変……。

エントリーシートはつまらない? 読む人の本音

安藤先生 そんなときにESを1枚1枚丁寧に読む気持ちにはなかなかなりません。1枚に1分しか時間をかけなくても1時間半以上かかるわけです。まずは全体の見た目として、読みやすいかどうかが評価に影響を与えてもおかしくありません。

蒼太 手書きの場合には、読みにくい字を解読してくれるなんて期待できないってことですね。

安藤先生 はい。それに、構成が明確であることも重要です。さきほど、南さんのESで「〇〇は3つあります」という書き方を良かった点としてあげました。細かい字でびっしり書いてあるよりも小見出しがあることや、使えるなら図や写真があることが効果的かもしれません。

蒼太 でもそんな状況だと適当に5段階評価をつけて提出してしまう可能性はありませんか? 例えば大学名で判断するとか。

安藤先生 こればかりは企業や担当者によって違うとしか言えません。しかし少なくとも真剣に応募するならESを丁寧に書くことは望ましい選択です。なぜなら、提出されたESをきちんと見る企業は案外多いからです。例えば製造業や金融機関では伝統的に書面を重視するようです。また、少なくとも面接まで進んだ場合には、面接担当者はESを必ず見てから、あるいは見ながら対応することになります。せっかく面接まで進んだのにESの内容が薄いことが理由で先に進めなかったらもったいないですね。

きちんと考えて書いた方がいい背景についてもう少し踏み込んで言うと、学生が書くESは、読んでいてつまらないケースが多いのです。

蒼太 つまらない……(少しショック)

安藤先生 一生懸命に考えて書いている皆さんからするとショックかもしれません。ですが、何十枚もESを読んでいる人から見ると、例えばサークルの副幹事長としてメンバーをまとめましたとか、アルバイトで評価されてバイトリーダーになりました、ボランティアでこんな活動をしました、などという話が何度も何度も出てきます。そうすると「ああ、またか。またこのパターンか」と正直思うわけです。

だからといって、バックパックでインドに行きましたなどと書いてあれば興味を持たれるかというと、そういうわけでもありません。数日間だけインドに旅行して人生観が変わるような薄っぺらい話も聞き飽きている。

蒼太 そうなると、何を書けばいいのか、ますますわからなくなってきました。さっき自己PRに高校時代とか過去のことを書くのは要注意って言ってましたよね?

僕の場合、大学1年生の頃は、大学生活に慣れることでいっぱいいっぱいだったし、2年生になるあたりでコロナ禍になってしまったんです。だから正直、大学時代の活動で自己PRに書けそうことって何もないんですけど……。

安藤先生 確かに、コロナ禍で具体的なエピソードがなかなか示しにくい状況ですよね。それでは、ちょっと角度を変えて別のことをやってみましょうか。仮に南さんがDリノベーションの採用担当者だとしましょう。今から採用する側にとって理想的なESを書いてみてください。「この人なら、ぜひ会ってみたい!」と会社側が感じるようなESです。

蒼太 えっ!? 会社にとって理想的なESですか? 僕じゃない別の人間のものを書くということですか?

安藤先生 そうです。架空の人物でいいんです。「これなら面接には確実に呼ばれる」と南さんが考える理想の自己PRと志望動機を書いてみてください。

蒼太 うーん、難しそうですが、持ち帰ってやってみます。今日はどうもありがとうございました。

(つづく)

安藤至大
 日本大学経済学部教授。2004年東京大学博士(経済学)。政策研究大学院大学助教授、日本大学大学院総合科学研究科准教授などを経て、18年より現職。専門は契約理論、労働経済学、法と経済学。厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会で公益代表委員などを務める。著書に「これだけは知っておきたい 働き方の教科書」(ちくま新書)など。

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