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即日完売を連発 「nasne」、終売から復活への軌跡

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日経クロストレンド

バッファローが2021年4月に発売したネットワークレコーダーの「nasne(ナスネ)」の出足が好調だ。アマゾンのネット販売では、入荷するたびに1日で売り切れる現象が何度も起きている。バッファローもこの品薄は予想外だと語る。その人気の裏には、「継承」を意識した製品開発と、機械学習を用いたユニークな価格決定プロセスがあった。

バッファローの「nasne」は、アマゾンで6月末までに受注のアナウンスを9回行ったが、いずれも24時間以内に完売している。これはAV家電に詳しい人にとっては意外かもしれない。それは、nasneが9年前の12年から存在する製品で、今でもできることがほとんど変わっていないからだ。そもそもnasneを開発したのはソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)で、19年に出荷が終了している。つまり1度は終わった製品なのだ。

バッファロー版のnasneが成功した理由を一言でいえば、販売終了で困っていたSIE版nasneの利用者を残さず捉えた上で、テレビ視聴形態の変化に伴って増えた需要を掘り起こすことができたからだ。

その理解のためには、どこがnasneならではの特徴かを把握しておく必要がある。nasneは、ネットワーク経由でテレビ放送を視聴・録画するレコーダーの一種だ。テレビチューナーと録画用のハードディスクを内蔵し、さらにLAN端子を備える。これを家庭のテレビアンテナとWi-Fiルーターなどに接続すると、パソコンやスマホなどでテレビ番組を視聴・録画・再生できる。専用アプリをインストールしていれば、自宅だけでなく外出先でも視聴可能。タブレット(Android、iPad)や「PlayStation 4」も利用できる。

12年当初はスマホ視聴自体が画期的だったが、2~3年後にはパナソニックの「DIGA」シリーズや、東芝映像ソリューション(現・TVS REGZA)の「レグザブルーレイ」などのブルーレイレコーダーも、似た機能を搭載し始めた。それでもnasneは、専用のスマホ・タブレット用アプリ「torne mobile」に、番組中の見たいシーンを探す機能が豊富にあることに加え、動作が滑らかであるといった特徴があり、根強い人気があった。

しかしSIEは、19年6月にウェブサイト上でnasneの「近日出荷完了予定」を突然アナウンスした。直接の理由は、それまでnasneで使われていた一部の部品が、ある半導体メーカーの撤退によって調達できなくなったことにある。nasneの売り上げが以前より減っていたこともあり、SIEは後継機を開発しないという決断を下した。

だが、軽快に動作するnasne以外は考えられないという人は多く、Twitterには「困る」「どうしよう」と、販売終了に困惑する声が相次いだ。故障などに備えて最後の在庫を購入しようとする人も多く、直前まで税込み2万4200円ほどだったnasneの実勢価格は、同3万~4万円に急騰した。

外観、機能ともにSIE版の完全継承を目指した

バッファロー事業本部コンシューママーケティング部の中村智仁部長は、「バッファローにもnasneの愛好家が数多くおり、『何とかバッファローでnasneを引き継げないのか』という声が出るようになった」と、当時の社内の状況を説明する。そこで同社は、nasneの後継機開発プランを携えて19年11月にSIEと交渉。nasne開発の継承の合意を取り付けることができた。バッファローで他社の事業を引き継ぐのは初めてだったという。

nasne後継機の開発に当たっては、「外観や操作感(ユーザーインターフェース)を含めて、全くそのまま継承する」(中村氏)ことを決めた。新しいnasneを購入するのは、旧nasneを使った人が大半になると考えたからだ。

元のSIE版nasneの部品は入手できないので、基幹部品や基板などの中身は全て新規開発となったが、それを従来とほぼ同じケースに収まるように設計した。同社にはLAN接続ハードディスクやテレビチューナーの開発経験があり、開発自体はそれほど困難でなかったという。

こうしてできたバッファロー版nasneは、内蔵ハードディスクが1テラバイト(テラは1兆、TB)から2TBに、外付けできるハードディスクの容量は最大2TBから6TBまで増えた。また、スマホアプリ(torne mobile)利用時の視聴画質がSD画質(有効走査線数480p)からHD画質(同720p)に向上した。SIE版nasneの最終モデル(nasne CUHJ-15004)の発売から約5年たっているので、大幅な機能強化を図っても不思議ではないが、そこは「仕様を大幅に変更して、不具合が起きたり、動作が重くなったりすることは避けたかったので、機能向上は必要最低限にした」(中村氏)との理由で見送られている。

では、悪く言えば代わり映えしないnasneが、なぜこれほど売れたのか。そこには3つの理由が考えられる。1つ目は、バッファローがnasneを通常の製品よりも早めに発表し、事業継承を強く印象付けたことだ。他の周辺機器の場合は、発表から発売までの期間が1カ月もないのが普通だが、nasneは発売の半年前となる20年10月に発売を予告した。

同社事業本部販売企画室の志村太郎室長は、「既存の利用者に、SIEのnasneとほぼ同じ製品が戻ってくることを強調した。従来のnasneを使ったことがない人にも知ってもらうために期間を十分に取り、SIEからの継承を早めにアピールすることにした」と言う。旧nasne利用者の反響は大きく、Twitterではその日のトレンドで1位になった。

2つ目の理由が、ライフスタイルの変化やコロナ禍で、スマホで動画を見るのが当たり前になったことだ。12年にnasneが登場したとき、動画配信のサービスはYouTube、ニコニコ動画、GYAO!など無料のものが多く、Huluなどの有料サービスは苦戦していた。しかし、15年にアマゾン・プライム・ビデオやNetflix、TVerなどが日本で始まってからは、スマホで動画を見る習慣が徐々に広がった。

また20年以降のコロナ禍で、家族が全員家にいるような機会が増えたことで、テレビのチャンネル争いが起きやすくなった。「2台目のテレビを買うほどではないが、好きなときにスマホでテレビを見られたら便利」と考える人が、いつの間にか増えていたというわけだ。また、スマホの画面も動画視聴を意識して大きくなった。例えば、11年10月発売の「iPhone 4S」は3.5型画面だが、最新の「iPhone 12」は6.1型と、面積比では2倍以上になっている。

機械学習で決められた絶妙な価格

3つ目の理由は価格設定だ。2万9800円(税込み)と安くはないが、ブルーレイレコーダーよりは圧倒的に低価格で、nasneの販売を後押ししたといえる。バッファローはこの価格を決めるのに、人工知能(AI)の一種である機械学習を活用した。

バッファローは数多くの周辺機器を販売してきたメーカーなので価格決定のルールがありそうだが、実際には「2万円以上の製品については、適切な価格を決めるための知見がなく、これまでは担当者が勘と経験で決めていた」(中村氏)という。

また同社には、nasneのようなレコーダーの販売経験がなかった。新型nasneは、SIE版nasne(税込み2万4200円)よりも高機能なのは確かだが、長期的な利益を確保しつつ、市場に受け入れられる価格を決めるのは意外に難しい。再開発にかかったコストを何年で回収できるかなどを予想する必要があるからだ。

そこで同社がトライしたのが、機械学習による価格決定だ。バッファローは20年から、統計学やデータサイエンスを経営に取り入れることを目指し、社員を大学に派遣して学ばせるなどの施策をとってきた。その最初の実績づくりとしてnasneが選ばれた。

具体的には、東京大学系のコンサルティング会社である東京大学エコノミックコンサルティング(東京・文京)に依頼し、12年以降に発売された約3500の家電製品の価格推移や機能、販売実績などのデータを機械学習プログラムに読み込ませ、「最適な価格」を導き出そうとしたのだ。機械学習の精度向上のために、季節や販売店のセール情報、年ごとに起きた技術革新などのデータも加えていったため、「1回分析を回すと数時間は計算し続けるレベルの計算量になった」(バッファロー事業本部事業統括部の松崎真也部長)という。

こうして、最適な価格として2万9800円が導き出された。それと同時に「価格を数千円下げても販売台数はあまり増えない」といった内容の需要予測も出た。「販売台数を伸ばしたい営業は価格を安くしたがるなど、立場によって主張する価格は異なりがち。従来はその議論がなかなか収束しないことがあった。今回は、価格を上下させたときのシミュレーションも機械学習で提示されたので、スムーズに決められた。結果的に品薄を招いたので需要予測に改善の余地はあるが、機械学習が意思決定に有用だと分かったのは大きい」(中村氏)

現在、nasneはアマゾンでしか販売していないが、torne mobileがPlayStation5に対応する年末以降は、店頭販売も予定している。そこでは市場が価格を決めることになる。機械学習の「答え合わせ」が、年末のnasne利用者の話題になるかもしれない。

(日経トレンディ 大橋源一郎)

[日経クロストレンド 2021年6月15日の記事を再構成]

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