欧米の大学への進学者が急増している広尾学園中学・高校(東京・港)

金子副校長は、「国内の大学だと、東大志向というよりも医学部を狙う生徒が増えている」という。広尾は受験のための偏差値教育ではなく、グローバルに通じる自立型の人材育成を目指し、07年にスタートした新興校だ。理系人材養成のため、最先端の実験や研究用の機器をそろえ、米グーグルの協力でITインフラが整備され、全生徒がネット対応していることでも話題になった。

米国の大学入試は日本とは大きく異なる。高校時代の成績やエッセー、推薦状、野外活動、面接、そしてSATのスコアなどで合否が決まる。コロナ禍でSATの試験が困難になり、米有名大ではスコアの提出要請を相次ぎ取りやめた。面接もオンラインのため、現地の大学に赴く必要はほとんどなく、日本からの受験は不利ではない。むしろコロナ下で米国外の生徒が受験しやすかった面があるかもしれない。現地の一部報道では米有名大でのアジア系などのマイノリティー(少数派)の合格率が上がったという。

コロナ禍の中、昨年、欧米の大学は次々閉鎖に追い込まれ、オンライン講義などに切り替えた。わざわざ海外に留学する意味合いも薄れたとの指摘もあった。しかし、実際に広尾学園などの生徒の海外進学の意欲は衰えていなかった。金子副校長は「コロナとの関係性はよく分かりませんが、うちの海外大の合格者が大幅増になったのは、受験者が増えたという以上に合格率が上昇したのが主因だ。今後は数より質を向上させる必要がある。米ハーバード大学など世界トップランクの大学の合格者を増やしたい」と話す。

前身の女子校は廃校寸前に

広尾学園は順心女子学園という伝統のある女子校だった。しかし、高度成長期に首都圏の女子高生の大学進学率が高まるなか、厳しい経営状態に陥った。

金子副校長は「生徒数が激減し、廃校寸前に追い込まれた。現場の教員陣が立ち上がり、学校再生に当たった」と振り返る。学校改革を断行し、学問の探究やデジタル化、国際化をにらんだ学校をゼロから立ち上げた。広尾学園中学の受験者数は3000人前後に増え、都内トップクラスの人気私立校になった。21年4月には姉妹校として広尾学園小石川中学・高校が開校され、初年度から受験生が殺到した。