「小話」で紡ぎ出す クスリと笑える国際関係の舞台裏『ジョークで読む世界ウラ事情』

複雑に入り組んだ世界情勢を小話で切り出す
複雑に入り組んだ世界情勢を小話で切り出す

新型コロナウイルス感染症拡大、米国大統領選、英国のEU(欧州連合)離脱、プーチン・ロシア大統領の統治体制、米中の覇権争い……。激しくめまぐるしく動く世界情勢を、匿名でサイトに投稿されたアネクドート(小話)から読み解こうというのが、今回紹介する『ジョークで読む世界ウラ事情』だ。海外では自らが苦境に立たされた時に機知に富んだジョークでその場を切り返そうとする文化がある。それは時として世相を風刺する健全な批判精神にも通じる。海外取材の経験の豊富なジャーナリストがこうした小話をふんだんに盛り込み、世界情勢のありようを紹介し、解説を試みている。その小話を読むと、クスリと笑える半面、ほんの短い言葉で本質を切り出す表現の数々に驚きを隠せない。たいていが現実からかけ離れた寓話(ぐうわ)ばかりなのだが、たかがジョークと笑えないところに本書のおもしろさがある。

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著者の名越健郎氏

著者は1953年生まれで、海外での取材経験が豊富なジャーナリストです。東京外国語大学を卒業し、時事通信社に入社。バンコク、モスクワ、ワシントンなどの海外支局勤務を経て、外信部長になり、その後退社。現在は拓殖大学海外事情研究所教授を務めています。主な著書に『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書)、『北方領土はなぜ還ってこないのか』(海竜社)、『独裁者プーチン』(文春新書)などがあるロシアの事情通でもあります。

トランプ前米大統領の「国境の壁」建設急ぐ?

学生時代に読んだ日本政治史の本で、印象に残ったこんな表現がありました。「猿は木から落ちても猿だが、代議士は選挙に落ちたらただの人」――。大野伴睦・元自民党副総裁の言葉として一般に知られているのですが、国会議員が選挙に臨む意気込みを伝えるエピソードです。短い言葉でコトの本質を切り取る。凝縮され、どことなくユーモアの詰まった表現だからこそ、語り継がれ、世相を反映するのかもしれません。

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米大統領選もジョークの対象に
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