2021/8/29

パッケージングは相変わらず秀逸

テストドライブを行ったのは「PLaY」と、“a”のみが小文字表示されるグレード。価格的にはシリーズの頂点に立つものの、なぜか他グレードに用意される4WD仕様の設定はなく、いっぽうで唯一のパノラマルーフや2トーンのボディーカラー、「グレージュ」という明るい色調のインテリアなど、「新型ヴェゼルの世界観を広げる」と説明されるちょっと個性的な内外装が特徴となる。

こうして、各部の仕立てにこだわったグレードでもあるだけに、乗り込んでまず感じさせられたのは車格感の高さ。生い立ちからすれば、従来型に続いて“「フィット」ベースのコンパクトSUV”と紹介できる新型ヴェゼルなのだが、実際に乗り込んだ多くの人は「こちらのほうがフィットよりも格上」と実感することになるだろう。

もっともそうなればなったで、今度はシートにパワー機構を求める声も現れそうだし、やはりレザー表皮の設定がないことに不満の声が上がるかもしれない。このグレードには標準で採用されるパノラマルーフのシェードは前半部分が手動式。さらに後半部分に至っては脱着式(!)いう点にも不満が集まってしまうのではないだろうか。

それにしても、後席足元の広さを筆頭にパッケージングは優秀で、ここは従来型からの特長を受け継いだ「ヴェゼルならではの美点」といえる部分。特に後席を簡単にチップアップでき、その際に生み出された天地高が1.2mを超えるという大空間をあらためて目の当たりにすれば、それはもう感心するしかない。もはやホンダ車にとっての“当たり前”で、特に目立ったプロモーションも行われないが、センタータンクレイアウトがもたらすこのメリットはいまだ世界のライバルがまねのできないポイントである。

「ヴェゼルe:HEV PLaY」のWLTCモード燃費値は24.8km/リッター。今回の試乗では高速道路と市街地を中心に533.9km走行し、満タン法で21.4km/リッターを記録した。
「ヴェゼルe:HEV PLaY」のフロントシート。内装色は、外装色にかかわらず、ライトグレージュとブラックでコーディネートされる「グレージュ」という仕様になる。
リアシートの足元は、先代モデルよりも35mm拡大された。室内側ボディー下部の突出を減らし、ドアを開けた際に足が当たらないようドアまわりの形状が工夫されている。
従来モデルと同じく、チップアップ&ダイブダウン機構付き60:40分割可倒式リアシートを装備する。

発展と熟成に期待が高まる

搭載するハイブリッドシステムが、シリーズ方式をベースとした「e:HEV」を名乗るユニットへと変更されたことで、緩加速シーンがほとんどの街乗りシーンでの走りの印象は、“EV感覚”が大幅に増すことになった。

それゆえ、基本的に静粛性が高いのは当然である。フットワークのテイストも、時に強めの揺すられ感に見舞われた従来型からは一変した。フリクションの小ささを連想させられるしなやかに動くサスペンションの効果もあって乗り味は上質だ。

そうしたなかで、路面によってはロードノイズが目立つことになっていたのは少々惜しいポイント。ボリュームもさることながら、路面変化に伴う感度をもう少し下げることができれば、静粛性に対する評価は一層高まることになるはずだ。

同様に静粛性に関しては、前述のように基本は優れているものの、連続する上り勾配に差しかかりエンジンの負荷が増すと、それまで暗騒音に紛れて気にならなかったその透過音が、突然ボリュームを増してしまう傾向が認められたのは惜しいと思えた。

実用上の不満はないといえるいっぽうで、その加速力にさほどの余裕もないという事実を踏まえると、ここは「低回転域でより大きなトルクを発するエンジンが欲しい」と感じられることにもなった。

吸気抵抗の低減によるエンジン出力の向上やバッテリーセル数の増加によるモーター出力向上などで、フィットからの重量増への対策は行われたが、根本的にはフィット用と同じく1.5リッターエンジンと組み合わされるハイブリッドシステムである。全体の車格がかくも高く感じられるようになった今、より余裕あるエンジンをユルユルと回すほうが、車両のキャラクターにマッチしそうな印象も抱いてしまう。

とはいえ、そんな新型ヴェゼルはまだスタートを切ったばかり。さまざまなアングルからチェックしても素材の良さを実感できるだけに、この先の発展と熟成に大きな期待を寄せられる逸材と見た。

(文=河村康彦/写真=花村英典/編集=櫻井健一)

2モーター式ハイブリッドシステム「e:HEV」は、最高出力106PS、最大トルク127N・mの1.5リッター直4エンジンに、同131PS、同253N・mのモーターを組み合わせる。
一般道向けの「NORMAL」、山岳路向けの「SPORT」、そして高速道路向けとして設定される「ECON」の、3つのモードが切り替えできるドライブスイッチをセンターコンソールパネルに配置。
リアシートを使用する通常時のラゲッジスペース。W370×H550×D230mmのスーツケースが4個収納できるという。「ヴェゼルe:HEV PLaY」には、予約クローズ機能付きハンズフリーアクセスパワーテールゲートが標準装備される。
リアシートのバックレストをすべて前方に倒した荷室の様子。床面は完全なフラットになり、車中泊も可能な最大で約1900mmの荷室長が確保できる。
「ヴェゼルe:HEV PLaY」の外装色は、ルーフ部分をブラックもしくはシルバーとした2トーンのみの設定。今回の試乗車のボディーカラーは「プレミアムサンライトホワイトパール」と呼ばれるもので、ブラックのルーフカラーと組み合わされる。
■テスト車のデータ
ホンダ・ヴェゼルe:HEV PLaY
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4330×1790×1590mm
ホイールベース:2610mm
車重:1400kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:106PS(78kW)/6000-6400rpm
エンジン最大トルク:127N・m(13.0kgf・m)/4500-5000rpm
モーター最高出力:131PS(96kW)/4000-8000rpm
モーター最大トルク:253N・m(25.8kgf・m)/0-3500rpm
タイヤ:(前)225/50R18 95V/(後)225/50R18 95V(ミシュラン・プライマシー4)
燃費:24.8km/リッター(WLTCモード)
価格:329万8900円/テスト車=343万4200円
オプション装備:ボディーカラー<プレミアムサンライトホワイトパール>(4万9500円) ※以下、販売店オプション フロアカーペットマット(4万2900円)/ドライブレコーダーフロント用<32GBキット>(4万2900円)

テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:2357km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:533.9km
使用燃料:25.0リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:21.4km/リッター(満タン法)/22.7km/リッター(車載燃費計計測値)

[webCG 2021年6月22日の記事を再構成]