インテリアの仕上がりに好感
2次元で表現される写真では、フレームレスグリルが特徴でもあるフロントマスクの立体感を表しづらいのか、はたまた運転視界への影響を考えてAピラーをむやみに前に出さず、加えて見切り線を側方に置いた結果、スラリと長さが強調された水平基調のフロントフードがもたらす大型船のバルバスバウ(球状船首)のようなフロントエンドのボリューム感が伝わらないのか。いずれにしてもこのモデル、どちらかといえば「写真の写りがあまり良くないタイプ」ではありそうだ。
そんなわけで従来型のヴェゼルも含めSUVの世界にも“クーペ風味を交えた造形”の持ち主が増えるなかにあって、それとは一線を画し、ルーフもあえて流行のアーチ型とせずに全体が水平な直線基調でまとめられた新型ヴェゼルのスタイリングは、大いに魅力的と受け取れた。
こうした直線基調のデザインとともに、やみくもにバーチャルスイッチ化には走らないダイヤルとプッシュ式ボタンで構成された空調スイッチや、なかなか質感の高いインテリアの仕上がりにも好感を抱くこととなった。
昨今、デジタル化を印象づけるディスプレイ類の優先度が高まったためか、それに押される形でフェイスレベルの空調吹き出し口がないがしろにされ、なかにはひざ上付近から無理やり顔面方向へと風を投げつけるようなモデルもある。
その点、文字通りフェイスレベルといえる高い位置からも新鮮な空気を提供してくれるのが新しいヴェゼルの空調デザイン。加えてダッシュボード両端に設けられた「そよ風アウトレット」と呼ぶ送風口から、間接風を提供してくれるのが新機軸。吹き出しモードを切り替える立派なダイヤルに照明が入らないのは残念だが、使ってみるとこれは確かに実のある快適装備。この先「ホンダ車ならではの標準アイテム」として定着してほしいとさえ思えるものであった。



