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自然の力だけで作る「完全天日塩」 入手しやすい3種

魅惑のソルトワールド(55)

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塩は、その原料によって海水塩や岩塩などに分類される。味や形に大きな影響を与えるのが製法だ。釜炊き、天日など製法は多様だが、「完全天日塩」はできるだけ人の手が加えられていないものを、というナチュラル志向も手伝って、なかなかの人気だ。完全天日塩は、太陽と風など自然の力だけで作られる塩を指す。「サステナビリティ(持続可能性)」が重要視される昨今、製造工程で人工的なエネルギーを使わず、二酸化炭素も排出しない完全天日塩は、まさにその意味でもふさわしい。

塩を結晶させる工程を、天日で行っていれば「天日塩」と定義される。海水を濃縮する過程で天日以外のエネルギーを用いても「天日塩」と呼ばれるため、濃縮工程も天日で行われているものは、あえて「完全天日塩」と呼び、区別している。

完全天日塩で有名なのは、フランスのブルターニュ地方の「ゲランドの塩(le sel de Guerande)」だろう。この地で1000年以上の長きに渡り、受け継がれてきた伝統的な製法は、ほとんど機械を使わず、塩職人(パリュディエ)たちの手作業で行われる。塩田も含め周辺は自然保護区になっており、農薬などの汚染を受けることもない。

ゲランドの塩作りはまず、広大な沼地に作られた複数の区画に海水を引き入れる。潮の干満を利用し、水路に海水を引き込み、貯水池へ。そこから複数の濃縮池を通過させ、太陽と風にあてながら濃度を高めていく。理想的な濃度まで濃縮したら採塩池に引き入れ、塩職人が手入れをしながら結晶するのを待つ。一連の工程はすべて熟練の塩職人が、時々の天候や濃縮海水の状態を見て、丁寧に時間をかけて調整しているそうだ。

塩を袋詰めしたり、出荷したりする際はさすがに機械を使うが、海水の取水から収穫まではすべて自然の力と手作業で、人工的なエネルギーが関与する余地はない。ゲランドの塩は現在、世界50カ国以上に輸出されているという。

ゲランドの他にもある。メキシコのゲレロネグロ塩田や、イタリアのシチリア島、オーストラリアのシャークベイ、キリバス共和国のクリスマス島、ポルトガルのアヴェイロなどの完全天日塩だ。

完全天日塩の産地に共通する条件は、海岸沿いで平たんかつ広大な地であることがまず一つ。次に年間を通し、温暖な気候であったり、雨期と乾期が比較的はっきりしてたりすることである。その点、日本は不利である。年間を通じ降雨量が多く、雨期と乾期の区別も明確ではない。塩田に海水を引き入れ、濃縮し結晶化を待つ間に、雨にたたられ、台無しになることだってある。

島国で、海に面している場所が多いため、塩田作りに向いているのでは、と思われがちだが、沿岸で平坦で砂や土で構成されたエリアはそう多くない。海外と比べ、国産の完全天日塩が少ない理由は、そこにある。

日本では天日による濃縮工程は3種類ある。揚浜式塩田と入浜式塩田、それに枝条架式塩田だ。塩田という名が付いているが、海外のように海水を引き込み、長期間待つ方式ではなく、短期間で海水を濃縮させるため、人手をかけて、工夫を凝らしている。

揚浜式塩田と入浜式塩田では、まず砂地で作った塩田に海水を浸透させ、天日にさらして乾燥させる。その後、塩がくっついた砂を人力で集め、そきに海水をかけてこし、濃い塩水を作る。ため池に海水を入れる海外の方式に比べ、早く濃縮させることができるが、海水をまいたり、砂を集めたりとそれなりに労力がいる。

枝条架式塩田では、竹の枝を高さ3~10メートルくらいのタワー状に組み、そこに海水をかけ流し、濃縮海水を得る。揚浜式塩田や入浜式塩田より省力化しているが、晴天が続くタイミングを狙ってしか作業ができないため、制約がある。だから、手がける人は多くない。

日本での完全天日塩の結晶工程は、基本的に室内だ。透明なビニールやガラス等で囲ったハウスに、風通しのための開閉式窓を設置。そこに濃縮海水を入れた箱をずらりと並べる。

箱の大きさや素材は生産者ごとにまちまちだが、大きいもので幅60センチ×長さ100センチ×深さ15センチほど。そこに濃縮海水を約3~5センチくらいの高さまで入れ、太陽と風の力で塩を育てる。日本における完全天日塩づくりは、非常に手間がかかり、小規模でしか行えない実情がお分かりいただけるだろう。筆者が知る限り、厳密にこの手法で行っている製塩所は国内に30箇所ほどしかない。

一口に「完全天日塩」といっても、特徴が異なる。フランスのゲランドひとつとってもそう。結晶池にためられた濃縮海水は、太陽光と風を浴び、ゆっくり表面から結晶していく。表面にできた結晶、「塩の花(フルール・ド・セル)」は収穫量が少なく、希少品として扱われている。ナトリウムの構成比が比較的高く、しょっぱさが強いものが多い。

一方、中層にできる大きな粒状の結晶、「グロ・セル」はにがりを多く含み、全体的にしっとりしたものが多い。しょっぱさ以外の苦味や酸味、うまみなど味わいも複雑。食感もガリガリとしている。

「グロ・セル」をしっかり自然乾燥させ、細かく砕いた「ムリュ」は、口溶けが良く、グロ・セルよりしょっぱさを感じる。同じ塩田でも、商品化するタイミングや自然乾燥の仕方、砕き方でこれだけ違う。ましてや生産国が違ったり、塩田の土壌が違ったりすれば、特徴は当然異なるわけだ。

どの完全天日塩がおすすめかは、お好みによるので、実際に試してもらうしかない。以下、店頭で比較的入手しやすい完全天日塩をご紹介するので、参考にしてみてほしい。

◆ゲランドの塩 ル・ゲランデ グロ・セル・セシェ(フランス/ナック)

塩田から収穫した大粒の結晶を乾燥させたもの。乾燥前のグロ・セルはにがりを多く含み、しっとりしている。土壌のミネラルも含み灰色に色づいた塩は、しょっぱさ以外にも甘味やうまみ、おいしい苦味が感じられる。「ほのかにすみれの香りがする」と表現するシェフもいる。魚介類、特に白身魚を使った料理におすすめ。

◆海の精 ほししお(日本・東京都・伊豆大島/海の精)

ネット式の立体塩田に海水をかけ流し濃縮した後、温室内に設置した箱の中で結晶させたもの。ザラメのような結晶で、カリカリした食感。しょっぱさ以外にほのかな甘さやうまみがあり、後味はクリアでキレが良い。脂身の多い肉類を焼いた際に、ぱらりとかけるといい。

◆カンホアの塩 結晶のまま(ベトナム・カンホア/カンホアの塩)

機械化が進む中で、この塩専用の塩田で昔ながらの製法で作られる。塩の結晶をそのまま天日干しして乾燥させた。カリッとした食感でトッピング用途におすすめ。各種ミネラルが層状になっているため、溶ける過程で味わいが徐々に変化する。結晶の食感を生かし塩パンやプレッツェルのトッピングに。

日本では他にも完全天日塩は流通している。生産地や生産者の想い、製法などを知れば、きっとその塩に魅了されるはず。そんな魅力を知って、ぜひ試してみてほしい。

(一般社団法人日本ソルトコーディネーター協会代表理事 青山志穂)

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