塩は、その原料によって海水塩や岩塩などに分類される。味や形に大きな影響を与えるのが製法だ。釜炊き、天日など製法は多様だが、「完全天日塩」はできるだけ人の手が加えられていないものを、というナチュラル志向も手伝って、なかなかの人気だ。完全天日塩は、太陽と風など自然の力だけで作られる塩を指す。「サステナビリティ(持続可能性)」が重要視される昨今、製造工程で人工的なエネルギーを使わず、二酸化炭素も排出しない完全天日塩は、まさにその意味でもふさわしい。
塩を結晶させる工程を、天日で行っていれば「天日塩」と定義される。海水を濃縮する過程で天日以外のエネルギーを用いても「天日塩」と呼ばれるため、濃縮工程も天日で行われているものは、あえて「完全天日塩」と呼び、区別している。
完全天日塩で有名なのは、フランスのブルターニュ地方の「ゲランドの塩(le sel de Guerande)」だろう。この地で1000年以上の長きに渡り、受け継がれてきた伝統的な製法は、ほとんど機械を使わず、塩職人(パリュディエ)たちの手作業で行われる。塩田も含め周辺は自然保護区になっており、農薬などの汚染を受けることもない。
ゲランドの塩作りはまず、広大な沼地に作られた複数の区画に海水を引き入れる。潮の干満を利用し、水路に海水を引き込み、貯水池へ。そこから複数の濃縮池を通過させ、太陽と風にあてながら濃度を高めていく。理想的な濃度まで濃縮したら採塩池に引き入れ、塩職人が手入れをしながら結晶するのを待つ。一連の工程はすべて熟練の塩職人が、時々の天候や濃縮海水の状態を見て、丁寧に時間をかけて調整しているそうだ。
塩を袋詰めしたり、出荷したりする際はさすがに機械を使うが、海水の取水から収穫まではすべて自然の力と手作業で、人工的なエネルギーが関与する余地はない。ゲランドの塩は現在、世界50カ国以上に輸出されているという。
ゲランドの他にもある。メキシコのゲレロネグロ塩田や、イタリアのシチリア島、オーストラリアのシャークベイ、キリバス共和国のクリスマス島、ポルトガルのアヴェイロなどの完全天日塩だ。