健康志向、高齢化、中国進出などに幅広く展開

「レンジ対応にするのは、時代の要請から必然だと考えました」と伊藤氏。そこで2003年の「ボンカレー」のリニューアルでは、初めてレンジ対応商品を投入。食品衛生法で決められたパウチのシール強度(封をした後でのはがれにくさ)を保ちつつ、加熱後に万が一、落としても破裂しない強度を模索。研究の末、レンジ加熱してパウチ内の圧力が高まると「フラップ」と呼ばれる穴が自動的に開く構造の容器包装「AOP(Auto Open Pouchの略)」を開発して、レンジ対応を実現した。

パウチの入っている包装箱も工夫した。ボンカレーの紙製の箱を前面から開けるようにし、フタの部分を開けたままレンジで加熱する。フラップのある部分はフタで覆われるので、仮に中身が飛び出してもレンジ庫内を汚さない仕組みだ。しかも、パウチ自体も紙箱の中にあるため、加熱後に取り出す際にも火傷するような熱さは感じない。パウチに直接触れるとやけどのほか、熱くて落とすなどの可能性も高まるからだ。

大塚食品の製品部食品・飲料事業食品課の伊藤征樹課長

こうしてボンカレー誕生から45年となった13年、主力商品であるボンカレーゴールドをリニューアルした際に、全ての商品(沖縄地区で販売するボンカレーを除く)で「箱ごとレンジ調理」への移行を完了した。「時代や社会背景の変化に対応しながら、当社の企業理念である『美味・安全・安心・健康』をレトルトカレーという商品できちんと提供できるようになりました」(伊藤氏)。

大塚食品は今後、ボンカレーなどのレトルト食品をどのように進化させていくのか。伊藤氏は「健康志向と、新しい食べ方の提案、そしてグローバル市場への対応がカギになると考えています」と今後の方向性を示唆する。

健康商品の軸になるのは、2010年に大塚食品が発売した、摂取カロリー量を100~150キロカロリーに抑えた、電子レンジ対応のレトルト食品シリーズ「マイサイズ」などだという。ちょっとの量を簡単に食べられるという需要は、単にダイエットだけでなく高齢化の進展に伴って需要が高まっているからだ。

新しい食べ方の提案では、レトルト食材を「他の料理に使うことで調理を楽にするような活用法を考えています」(伊藤氏)。一方、海外市場も視野に入れている。6月には中国で日本のボンカレーゴールドと同じパッケージに統一した。過去30年近くにわたって、中国の外食店で「日式カレー」が広まってきた。都市部を中心に家でもカレーを食べたいという需要が高まっているという。

高度経済成長を追い風に、大塚食品がボンカレーで実現した世界初の市販用レトルト食品は、世界で広がる手軽な食事のニーズにかなう。個食や高齢化など、食卓の景色になじむ新たな商品開発の余地も大きく、半世紀のノウハウに裏打ちされたレトルトのパイオニアは日本初の「レトルト食文化」をさらに押し広げていきそうだ。

(ライター 三河主門)