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ルーティン化した作業では「前頭前野」は使われない

ストレスはもちろんだが、脳も体の他の機能と同様、加齢とともにその働きが低下する。特に年齢とともに機能低下しやすいのが、先ほどのイラストで示した3つ、「前頭前野」と「海馬」、「線条体」だ。

「前頭前野」については、次のような認知機能テストでこの部位の機能を見ることができる。

(1)「さくら」「ねこ」「でんしゃ」という言葉を覚えてください。

(2)では、次に100から7を5回引いて、それぞれの答えを言ってください。

(3)「ふじのやま」という言葉を逆から言ってください。

(4)最初に覚えた3つの言葉を思い出してください。

「このようなテストを行っているときの脳の活動を見ると、(4)で最初の言葉を思い出そうとするときに前頭前野が働きます」(篠原さん)

(1)のときには3つの言葉を覚えていても、(2)、(3)と別のことをしているうちに、「なんだっけ?」とよくわからなくなってしまう。

「面倒臭い頭の使い方ですよね(笑)。こういった、一度に複数のタスクを行うことをデュアルタスク(二重課題)といいます。デュアルタスクを行うときに前頭前野が活性化しますが、前頭前野の機能は40~50代になると落ちてくる。知らず知らずのうちにこの手のタスクを避けるようになることと、年代なりの経験は重ねていますからルーティン化したやり方を好むようになる。ところが手慣れた作業をしているときに脳活動を調べると、前頭前野はほとんど活動していません。また、記憶を保存したり必要に応じて取り出したりする作業を行う海馬も、年齢とともに萎縮しやすくなります」(篠原さん)

ルーティン化した作業では、3つめの脳の部位、やる気をつかさどる「線条体」も使われなくなるという。

「ある行動と快感を結びつけるのが線条体で、この部位がやる気の中核といわれています。線条体は運動の開始・持続・コントロールなどに関わり、線条体のすぐそばには報酬系・快感系といわれるドーパミン神経系が走っています。そして、実際に報酬がもらえるときよりも、『これをやったら報酬がもらえそうだ』と予測するときに線条体は最も活性化することがわかってきました」(篠原さん)

線条体が活性化するときには、本人もドキドキ、わくわくしているという。この仕事をすればこんないいことがある、と思うことができれば、線条体は活性化する。最近、仕事のモチベーションが上がらない……という人は、一見すると効率的な「ルーティン化した仕事」ばかりに偏っていないか、振り返ってみよう。

線条体は新しいことを学習するときに重要な部位。「リハビリのさなかに線条体の活動を止めると、リハビリによる学習効果がほぼ消失することもわかっています。中高年になると、これ以上新しい学習なんてする必要はない、と思うかもしれません。確かにひと昔前までならば50代ぐらいまでの蓄積で人生を突っ走ることができた。しかし、これからは人工知能(AI)の時代、新規の学習をしなければならない機会は何度も訪れるでしょう。新たな学習をおっくうがっていては、何度も挫折し、線条体の機能低下が進んでしまいます」(篠原さん)

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朗報! 年齢とともに高まる脳機能もある