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ダービー馬から禁止薬物 連鎖断ち切れるか米競馬界

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NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

2021年5月1日に行われた米国競馬クラシック3冠の第1戦、ケンタッキーダービーで1位になったメディーナスピリットが、レース後の検査で禁止薬物の陽性反応を示した。

調教師のボブ・バファート氏は、治療のために抗真菌軟膏(なんこう)を使ったことを認めたが、この軟膏にステロイド抗炎症薬ベタメタゾンが含まれているとは知らなかったと主張した。

米国競馬界では、こうしたスキャンダルが増加傾向にある。20年、ドーピングに関わったとして米国政府に起訴された調教師、獣医、医薬品販売業者は、25人以上にのぼった。

19年にジョッキークラブが発表した報告書では、サンタアニタパーク競馬場で22頭の競走馬が相次いで死んだことを挙げつつ、不適正な薬物使用が重大な問題であるとして競馬界の改革を求めている。

米国競馬界における薬物使用の問題は複雑だ。使用時期と用量によっては完全に合法になる薬物もある。州によって規制が異なるために混乱が生じ、それが同時に抜け道にもなっている。問題点と22年に改善が期待される理由を解説しよう。

競馬でドーピングとされるのは?

競馬でも、人間のスポーツ選手の場合と同様に、テストステロンなどを増加させるタンパク同化薬や、筋肉に送られる酸素量を増やす血液ドーピングなどは全面的に禁止されている。

しかし、数百もの治療薬が競走馬の世話のため普通に使用されており、これが足を速くしたりけがを隠したりするため不正に使用されることがある。

「薬物と言ってもさまざまです」と話すのは、薬物規制標準化委員会(RMTC)理事長兼最高執行責任者(COO)のメアリー・スコレイ氏だ。「大変恐ろしいものもあれば、まったく害のないものもあります」

レース当日の薬物の使用はほとんどの国で禁止されているが、米国では伝統的に一部の薬物の使用が認められてきた。その使用がドーピングに当たるかは、用量や投与のタイミングなどで判断される。

馬がどんな場合に、どうやって治療すべきかは長年議論されていると、競馬の薬物検査を行っているペンシルベニア大学馬薬理学研究所の所長、メアリー・ロビンソン氏は言う。「調教師と獣医の間で、必ず話し合う必要があります。人が薬の服用による効果とリスクについて医者と話し合うように、動物の患者についても同じことをすべきです」

乱用されがちな薬物とその理由

競馬界で最も論議を呼んでいる薬物のひとつがフロセミドだ。一般にはラシックスの名で知られる。人間の場合は、心不全、肝疾患、腎障害などがある患者の体液貯留を防ぐ目的で使用される。

米国のほとんどの競走馬では、これが肺出血を予防するという名目で、レース当日に投与されてきた。しかしフロセミドには利尿作用があるため、馬の体重を減らす効果もある。つまり、より速く走れるようになるのだ。

フロセミドを使用する調教師は、これを投与しないのは非人道的だと主張する。しかし反対者は、他のほとんどの国で、投与されていない馬が問題なくレースを行っていると指摘する。19年に、クラシック3冠が行われる競馬場を含む米国の主要競馬場の連合が、21年からレース当日のラシックス使用を禁止することで合意した。

そのほか問題となっているのは、痛みを軽減する薬だ。有名なところではベタメタゾンのような抗炎症性コルチコステロイド、非ステロイド剤のフェニルブタゾンなどがある。これらの鎮痛薬は、けがから回復中の馬には役立つものの、レース時の使用には危険が伴う。

「これらは必ずしも走りを向上させるのではなく、とにかく走らせるための薬だと思います」とロビンソン氏。けがをしていても、薬のおかげで走り続けられるからだ。

「傷があっても馬自身が感じなければ、本来できないはずの無理をしてしまい、その結果重篤な外傷を負ってしまう可能性があります」

最近の研究によれば、大きな骨折をする馬の90%に、元から骨疾患があるという。だからこそ、獣医が疾患の兆候に気づけることが重要だとスコレイ氏は強調する。

ところがコルチコステロイドは、これを妨げてしまう。「私たちはこのような薬物を禁止しようとしているのではありません。馬を守るために、使い方を規制しようと言っているのです」

国による規制が行われていない

米国には現在、国による競馬の規制機関が存在しない。各州の競馬委員会が独自のアンチドーピング規則を定め、薬物検査、調査から処罰まで、違反者の処分に関する独自の制度を整えている。

しかし20年12月に、連邦の競馬公正安全局を設立する法律が議会で可決された。この法律が施行される22年7月1日に、同機関によって規則、検査、執行などの国家規格が策定される。

「ようやくです」とスコレイ氏は話す。長年、州によって規則が異なることが混乱を招いてきた。「調教師には手に負えない難問でした。失敗もするでしょう」

その一方、不正をたくらむ人にとっては、州ごとに異なる規則は規制を回避し、あるいは規制のゆるい州のレースを探し出すことを助けるものだった。たとえば、血液検査しか行わない州では、尿や毛髪からしか検出されない薬物は見つけることができない。

ほかに必要なことは?

しかし、規制が進めば、それを回避する手段も進む。新たな合成薬とその検出方法を把握しておくことは絶え間ない闘いだと、ロビンソン氏は言う。

「薬剤が開発され続けていれば、新たな薬物の乱用が始まる機会もあるということです」

その上、近年では遺伝子治療の飛躍的な進歩により、獣医は治癒や骨の成長を促進するタンパク質を細胞に生成させるという方法も使えるようになってきた。

これは治癒的価値がある半面、競走馬に(人間のスポーツ選手にも)遺伝子ドーピングという新たな手法が導入される危険もはらんでいる。

従来は、こうした遺伝子ドーピングを検出する方法がなかったが、今年2月、ロビンソン氏の研究チームが新たな検査方法を開発したと発表した。

またスコレイ氏は、ドーピングを減らすもうひとつの方法は、継続的な啓発を一層重視することだと述べ、これを運転免許にたとえる。数年ごとの運転免許更新時には、改めて試験を受けて交通規則を忘れていないか、改正内容がわかっているかを確認する必要がある。しかし競馬の免許については、そのような仕組みがある州はほとんどない。

「業界として、これまで関係者を教育するための施策をあまりしてきませんでした」とスコレイ氏は言う。「間違いを犯さないことを期待しながら、それを助ける道具を用意してこなかったのです」

(文 AMY MCKEEVER、訳 山内百合子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年6月9日付]

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