2021/7/7

「ようやくです」とスコレイ氏は話す。長年、州によって規則が異なることが混乱を招いてきた。「調教師には手に負えない難問でした。失敗もするでしょう」

その一方、不正をたくらむ人にとっては、州ごとに異なる規則は規制を回避し、あるいは規制のゆるい州のレースを探し出すことを助けるものだった。たとえば、血液検査しか行わない州では、尿や毛髪からしか検出されない薬物は見つけることができない。

ほかに必要なことは?

しかし、規制が進めば、それを回避する手段も進む。新たな合成薬とその検出方法を把握しておくことは絶え間ない闘いだと、ロビンソン氏は言う。

「薬剤が開発され続けていれば、新たな薬物の乱用が始まる機会もあるということです」

その上、近年では遺伝子治療の飛躍的な進歩により、獣医は治癒や骨の成長を促進するタンパク質を細胞に生成させるという方法も使えるようになってきた。

これは治癒的価値がある半面、競走馬に(人間のスポーツ選手にも)遺伝子ドーピングという新たな手法が導入される危険もはらんでいる。

従来は、こうした遺伝子ドーピングを検出する方法がなかったが、今年2月、ロビンソン氏の研究チームが新たな検査方法を開発したと発表した。

またスコレイ氏は、ドーピングを減らすもうひとつの方法は、継続的な啓発を一層重視することだと述べ、これを運転免許にたとえる。数年ごとの運転免許更新時には、改めて試験を受けて交通規則を忘れていないか、改正内容がわかっているかを確認する必要がある。しかし競馬の免許については、そのような仕組みがある州はほとんどない。

「業界として、これまで関係者を教育するための施策をあまりしてきませんでした」とスコレイ氏は言う。「間違いを犯さないことを期待しながら、それを助ける道具を用意してこなかったのです」

(文 AMY MCKEEVER、訳 山内百合子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年6月9日付]

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