ケース3「リストラされてしまった」

冒頭に紹介した通り、21年は上場企業の「早期・希望退職」募集人数がすでに1万人を突破しており、まだまだ増えそうです。非上場企業も含めればもっと数は膨らむと思われます。コロナ禍関連の企業倒産のような事情急変に巻き込まれる可能性もあり、既にそういったリスクに直面している読者もいると思います。

個人事情か会社都合か、いずれであってもリストラであれば致し方ありません。気持ちを切り替えて、次の会社を見つけるべく転職活動するのみです。

その際、気をつけたいのは「負のオーラ」です。こうした事態に直面すると、当たり前のことですが、精神的にもダメージを受けます。どうしても気持ちや表情が曇りがちです。

しかし、それをそのまま転職活動に持ち込んでしまうと、面接結果がかんばしくないものとなってしまいがちです。こういうときには、「よし、これを機会に」の精神で、災い転じて福となすべく、「では、今回もらった転職の機会で、せっかくだから自分はこれからこんな形で仕事をしていきたい」ということをしっかり考えてみてほしいのです。

90年代末に破綻した日本長期信用銀行。その優秀な社員の多くが当時、社外への場に移らざるを得ない状況となりました。しかし、それが幸いな転機となって、今では金融業界ではなく、実業の世界で様々な会社の幹部として活躍している元・長銀マンがいます。私にも活躍している知り合いが何人もいます。「当時は『まさか』と、頭が真っ白だったけど、あれがなかったら、今の自分はないですね」と言う表情は晴れやかです。

不測の事態による転職では、ネガティブ志向の転職マインドに陥りがちです。でも、その悲観や恨みつらみを「積極転職マインドセット」へギアチェンジすることによって、これまでは考えてもみなかった新しい自分の仕事人生が、実は目の前に待ち受けているものなのです。

転職はそのタイミングによって、キャリアを切りひらいてくれる武器である半面、キャリアの道筋を誤る落とし穴にもなる諸刃の剣です。読者の皆さんには転職時(どき)を正しく見極め、末広がりのキャリアを歩んでほしいと願っています。

※「次世代リーダーの転職学」は金曜掲載です。この連載は3人が交代で執筆します。

井上和幸
経営者JP社長兼CEO。早大卒、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、リクルート・エックス(現リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。「社長になる人の条件」(日本実業出版社)、「ずるいマネジメント」(SBクリエイティブ)など著書多数。

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