しかし、社会人3年目のあなたは違います。これまでの仕事経験をベースにしてこれからのキャリアについて考えることができるのです。より深く自己分析できるはずです。

キャリアについて悩むのではなく、キャリアについて考える癖をつけましょう。

その上で、やりたい仕事は何なのか? 今一度、具体的に言語化してみましょう。私が実際に今でも取り組んでいるのは、これからのキャリアについてのメモ書きです。これまでのキャリアを棚卸ししながら、これからのキャリアをデザインしていくことを続けています。

「かっこよさそうだから新規事業の仕事」「旅行が好きだから旅行会社」など、学生のときのように、やりたい仕事を表面的に捉えてはいけません。やりたい仕事を通じて、何をしたいのか。仕事の「その先」を考えることが突破口になります。やりたい仕事を通じて何をしたいのか、仕事を通じて何をなし遂げたいのか。社会人経験を積んできたからこそ、これまでの経験を踏まえて、できるだけ具体的にイメージするようにしましょう。

例えば、私は大学教授をしながら大企業からベンチャー企業まで複数社の企業顧問をしています。それらは、私にとってやりたい仕事です。なぜなら企業顧問としてビジネスシーンの最前線で、新規事業や事業開発に取り組むことで、より良い社会や過ごしやすい未来を創出したいという明確な思いがあるからです。自分の中でこの軸がブレることはありません。だから、目先の利益を優先する仕事や、「これからの社会にとって優先順位の高くない仕事だ」と私が感じるオファーは断るようにしているのです。

キャリア形成で欠かせない「アダプタビリティー」とは?

仕事の先を見据えながら、やりたい仕事を明確にしていくのです。ここでも1つポイントがあります。やりたい仕事に出合えるか、出合えないかという2軸で判断するのではなく、やりたい仕事にしていくための働き方や向き合い方を考えるようにするということです。

私が専門として研究している最新のキャリア論「プロティアン」(環境や社会の変化に応じて柔軟に変えていくキャリア形成のこと。米ボストン大学のダグラス・ホール教授が提唱した概念)では、「アイデンティティー」と「アダプタビリティー」を大切にしています。

ここで言う「アイデンティティー」とは、自分らしく働くことです。そして「アダプタビリティー」、適応能力がこれからのキャリア形成では欠かせません。

何に対して適応するか? それは組織に対してではありません。やりたいと思える仕事や社会の変化に自分自身を適応させていくことが肝心なのです。ここまで考えた上で、今の職場でそれができるかできないのかは、どこかのタイミングで見極めなければなりません。

大卒者の入社後3年目の離職率は3割に及びます。ファーストキャリア形成期において、ミスマッチを解決するための選択肢として、転職は目を向けやすい、身近な意思決定なのです。

しかし転職すれば、問題は解決するのか? これは違います。「今の職場ではやりたい仕事がない」と判断したときに、転職が視野に入ってきますよね。会社や仕事への不満がきっかけで考える人も多いと思いますが、自分軸でこれからのキャリアを考えない限り、転職先でも同じ不安や悩みを抱えることになってしまいます。

働き方は多様化しています。転職というキャリア選択のみならず、社内兼業や副業という制度を用意してくれている企業も増えてきています。意外と社内制度を知らなかった、ということもよくあるので、制度を一度チェックしてみることもおすすめです。目の前の業務に追われていると近視眼的になり、職場でのキャリア形成の可能性を矮小(わいしょう)化して捉えていることもあります。

概論ではなかなか具体的にイメージできないかもしれません。次回はIT企業に勤める3年目の女性の本音を聞きながら、ファーストキャリアについて考えていきます。

田中研之輔
 1976年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程を経て、メルボルン大学、カリフォルニア大学バークレー校で客員研究員。2008年に帰国し、法政大学キャリアデザイン学部教授。大学と企業をつなぐ連携プロジェクトを数多く手がける。企業の取締役、社外顧問を19社歴任。著書に「プロティアン―70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術」(日経BP社)、「ビジトレ―ミドルシニアのキャリア開発」(金子書房)など。Twitterは@KennosukeTanaka(キャリアに関する様々な質問を受け付けています)
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