トマトの濃縮ペーストで佐藤シェフがお勧めなのは、ムッティの「3倍濃縮トマトペースト『トリプロ』」。イタリアでコンチェントラートと呼ばれる濃縮ペーストで、2倍濃縮は輸入食品チェーン店でも売られているが、「3倍濃縮が日本で手に入ることにイタリア人も感激する」と取扱小売店は言う。
シェフお勧め「3倍濃縮トマトペースト」の実力
イタリア料理といえばトマトのイメージがあるが、ヨーロッパにトマトがもたらされたのは、スペインのコルテスがメキシコから種をもち帰った1500年代前半。はじめは観賞用として育てられ、イタリアでトマトが食用となってからまだ400年くらいしかたっていない。
さらに、トマトといえば南イタリアの野菜のイメージがあるが、南部プーリア州の次にトマトの生産量が多いのは、ラグー(ミートソース)で有名な中部エミリア・ロマーニャ州であることもあまり知られていない。
そのエミリア・ロマーニャ州に本社をおくムッティは、イタリア北部・中部に約400、南部に約700のトマト栽培農家をもつトマト加工品メーカー。創業から100年以上の歴史がある。3倍濃縮トマトペーストは、遺伝子組み換え作物(GMO)ではない露地栽培によるイタリア産トマトを100%使用。このペーストを1キロつくるのに7.5キロの新鮮なトマトが必要だ。約30品種のトマトを使い、加えたのは塩のみ。サステナビリティ(持続可能性)も考慮して、水を節約する栽培法をとり、工場で使う水の8割を栽培に再利用している。
3倍濃縮トマトペーストは、主にイタリア北部・中部の煮こみ料理やソース、ミートソースに使われる。トマトにはうまみ成分であるグルタミン酸が含まれ、濃縮トマトペーストはそのうまみが凝縮されている。だから、これを使いはじめると、何にでもたっぷり入れたくなるのがタマに傷。あくまでも隠し味程度に使いたい。
(イタリア食文化文筆・翻訳家 中村浩子)
イタリア食文化文筆・翻訳家。東京外国語大学イタリア語学科卒。イタリアの新聞社『ラ・レプブリカ』極東支局長助手をへて、文筆・翻訳へ。著書に『イタリア薬膳ごはん』(共著)『「イタリア郷土料理」美味紀行』、訳書に『イタリア料理大全 厨房の学とよい食の術』(共訳)『スローフード・バイブル』。