検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

不本意な異動も乗り切る ベテラン社員が生き残るコツ

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

50代になってから未経験部署に異動させられたら、誰だって「なぜ?」と戸惑うもの。

中にはそれがきっかけでメンタル不調に陥る社員も出てくる。そんな50代のベテラン社員に多く出会ってきたのが、最新刊『「会社がしんどい」をなくす本 』を出版した精神科医・産業医の奥田弘美さん。奥田さんは現在、約20社で産業医を担当。これまでに2万人以上のメンタルヘルスをサポートしてきた。

「こんな部署で働きたくない」と抵抗を示す社員もいるという。奥田さんが提案する「年長者が会社で生き残る心構え」とは? 

◇   ◇   ◇

こんにちは、精神科医・産業医の奥田弘美です。

50代になったベテランの社員が、残りの会社員人生をどのように過ごすかというのは、大きなテーマです。誰もが社内の重要なポジションにつけるわけではありません。経験があるといっても、その経験が今後のビジネスの世界で必ずしも通用するとは限りません。

すると、どうしても50代で未経験の部署に異動させられるという事態が発生します。そんなベテラン社員たちにこれまで多く会ってきました。そして、そのたびに、「年長者が会社組織で生き残るには何が必要か」ということを考えさせられました。

ブライダルサービス会社の50代ベテラン社員であるBさんもその1人です[注]。広報企画室で6年以上仕事をしてきて、その部署を気に入っており、定年退職までここで仕事を続けたいと思っていたところ、4月の人事異動で急にコールセンターへの配属を打診されたのです。

コールセンターは初めて担当する業務であり、全く興味もない部署です。Bさんはショックを受けて、人事担当者や上司に異動したくない旨を伝えて交渉しましたが、「広報企画室は人数を縮小し体制も刷新する予定だから、Bさんに用意できる仕事はない」と却下されてしまいました。Bさんは不承不承異動しましたが、1カ月後に産業医の私へ面談を希望してきました。

[注]エピソードでは、個人や団体が特定されないように情報を適宜加工しています

「先生、ひどいと思いませんか?」

面談室に入ってきたBさんは、今までの経緯を私に説明したのち、「先生、ひどいと思いませんか? 私は6年以上、広報企画室で頑張ってきたんですよ。それなのにこの年になって全く経験のない部署に異動だなんて。今まで広報の仕事では大きな失敗をしたこともないし、それなりに頑張ってきたつもりです」と怒りの表情で会社への不満をぶちまけます。

そして「コールセンターに移ってからも、どうしても納得いかないし、夜もイライラして眠れないんですよ。しょっちゅう電話が鳴っている環境にも慣れないから、頭痛も頻繁に起こるようになって、仕事を休むこともあるんです」と体調不良を訴えました。

私はBさんに「異動のストレスからくる不眠や食欲不振、頭痛といった体調不良が起こっているようなのでまずは治療が必要だと思います。医療機関は受診されましたか?」と尋ねると、「いいえ。だって体調不良の原因は明らかなんですから、薬で治療したってよくならないと思います」とBさんは不満そうに答えます。

そして「こんな状態になってしまって、コールセンターの仕事を続けていく自信がありません。先生からも人事に意見してもらえませんか?」とようやく本音を打ち明けました。

つまりBさんが産業医面談を申し込んできたのは、産業医から異動を見直すように会社に意見してもらいたいというのが目的だったのです。

私は「とにかくまずは心療内科か精神科で治療を受けましょう。体調不良で仕事に来られない状態がひどくなっては、どの部署でも仕事ができませんから。私からは人事へのフィードバックの際に、Bさんの気持ちを伝えておきます」と提案し、クリニックへの紹介状を書くことにしました。

 Bさんの件について人事部にフィードバックをしたところ、人事担当者は苦笑いし「やっぱりその話題でしたか。彼女が今回の異動について強い不満を持っていることはよく理解しています」とのこと。

そしてこう続きました。「しかし彼女の広報企画室での6年間の仕事ぶりは、決して褒められたものではなかったのです。職場で年長なのをいいことに、自分の苦手なパソコン作業は後輩に全部丸投げし、一向にスキルアップしようとしません。提案する企画やアイデアもどんどん時代遅れになっていることに気がつかないし、後輩のアイデアが採用されると陰でネチネチと不満や嫌みを言うので、上司が困っていたんですよ」

加えてBさんは今までも同じような不適応を起こしていて、すでに3回以上異動を繰り返していることが分かりました。「営業は嫌、店舗での接客も苦手、総務など管理部門のパソコン作業の多いところもダメだったから、もうBさんの受け入れ部署はコールセンター以外にないんですよね」とのことでした。

翌月に再び面談をすると、Bさんはメンタルクリニックを受診し睡眠薬や頭痛薬を処方され、症状は少しましになったとのことでした。

そしてBさんは「あれからまた人事面談があり、会社が私のことをどう評価しているかよく分かりました。本当はこんな低い評価しかくれない会社にはもういたくない。若かったらさっさと転職するところだけど、この年だと転職も難しいことはよく分かっています。仕方ないから定年退職までコールセンターで我慢しますよ」と、少し投げやりな調子でしたが、ふっきれたような表情で話してくれたのでした。

今までの仕事ぶりが総決算されていくベテラン世代

Bさんのようにベテラン社員になってから不本意な異動を会社から提示され、心身の不調を訴える例は、産業医として時々お目にかかるパターンです。

この年代になってから想定外の部署への異動は、かなりのストレスがかかります。50代前後からは若いころと比べると体力面でもメンタル面でも適応能力が落ちてくるので、新しい仕事を覚えたり新しいシステムになじんだりすることに対して、どうしても苦労が伴います。

また50代に入ると定年退職が近くなっていることから、自分なりに組織人としてのゴールをイメージしている人も多く、そのイメージが不意に崩されてしまうと、なかなか修正が難しいようです。

そのためBさんのように産業医に不調を訴えて、なんとか自分の置かれた環境を変えようとする人も少なくないわけです。

しかし異動に関しては、あくまでも会社に決定権があります。会社はそれまでの仕事ぶりや能力、評価を総合的に判定し人事配置を決定していきますから、「この仕事が合わないから、変えてほしい」という個人的な希望が必ずしも通るとは限りません。

中にはクリニックから「適応障害」という診断書を取得して、「症状の改善のためには環境調整が必要である」というのが主治医の意見だと主張する社員もいますが、個人的な理由によって不適応を起こした社員の異動をかなえるのには限度があります。

ある程度の規模がある組織ならば、事情によっては何回か部署を異動させてくれるかもしれません。しかしBさんのように過去に複数回、不適応を起こして職場を異動した経歴がある場合は、かなり難しくなるでしょう。

Bさんは不承不承でもコールセンターの仕事を受け入れることに納得しましたが、もしこのまま異動に強くこだわって不満や抵抗を続けた場合は、退職勧奨されてしまう可能性もあったのではないかと思います。

年長者が職場で生き残るコツ

私はベテラン社員から「仕事や人間関係になじめない」と相談を受けたとき、ある医師の話をよくします。私の恩師であり90歳まで現役のフルタイム勤務医を続けていた中村恒子先生の話です。

数年前のことですが、中村先生が生涯現役であり続けることができた秘訣(ひけつ)を書籍にまとめる機会を得ました。それが『心に折り合いをつけてうまいことやる習慣』(すばる舎)という本です。

中村先生の話は、ベテラン社員が組織人として最後まで生き抜くために非常に役に立つものでした。ここでも一部ご紹介したいと思います。

90歳まで現役医師を続けていると聞くと、よほど医者の仕事が好きで使命感に燃えていたのかと思うかもしれません。しかし実は違うのです。

「出世したいとか、成功したいとか、何かを成し遂げたいとか全く考えたことなし。自分と家族が食べていけるだけのお金を稼ぐために、目の前の仕事をしてきただけ」と中村先生は淡々と話します。

中村先生は、終戦2カ月前の1945年(昭和20年)6月、尾道からたった1人で医師になるため大阪に出てきて、現在の関西医科大学の前身である「大阪女子高等医学専門学校」に入学しました。そのとき、高等女学校を出たばかりの16歳。戦争末期の大阪は米軍による空襲が頻繁に繰り返されており、いつどこで戦闘機が飛んできて機銃掃射されるか分からないという恐ろしい状態の中での入学でした。

入学した理由は「お国のために医師になりたい」などではなく、「自活するため」でした。実家が貧しい上に子だくさんで生活が苦しかったところ、運よく大阪で開業医をしていた叔父が、「医師がみな軍に取られて国内で医者が不足しているから、成績がよいなら医専の試験を受けろ。受かったら学費の面倒は見てやる」と一族に声をかけてきたのです。

そこで一念発起して受験し、見事合格した中村先生は、「とにかく自活できる仕事を得られるのであれば、何でもいい」という気持ちだったそうです。

医師になってからも60歳ぐらいまでは、ずっと「生活のため」に働いていたと言います。耳鼻科医の男性と結婚して子どもにも恵まれますが、夫は給料を飲み代に全部使ってしまう放蕩(ほうとう)人であったため、常に「生活するため」が仕事を続ける強い動機でした。

60歳を過ぎて子どもが成人した後は、「家にいてもすることないから、自分を使ってもらえて人の役に立てるうちは働かせてもらいましょか。もはや仕事は生活習慣の一部やから」と、相変わらず淡々と仕事をこなしてきたそうです。

声をかけやすい人になる。妙なプライドは捨てる

私は、中村先生と3年ほど同じ病院で働いていました。そのときすでに中村先生は70歳を超えていましたが、若い医師や看護師、スタッフからとても親しまれていました。

その理由の1つは、「声をかけやすい」雰囲気にあると思います。医師でも通常は60~65歳が定年になることが多いのですが、先生はその年齢を超えても組織に求められる人材であり続けました。

病院のスタッフたちは「先生、この処置もついでにお願いできないですか?」などと気軽に頼みますし、先生は「ああ、ええよ」と自分の担当患者さんに関する業務以外の雑用であっても、気軽に引き受けていました。

「先生、この患者さんのケアプランどうしましょう?」などと若い看護師から相談を受けたら、「そうやなあ、私はこう思うんやけど、あなたはどう思う?」などと、上意下達ではなく、常に相談しましょうという雰囲気で対話されていました。

「この仕事は私の仕事じゃない」とバリアーを築くのではなく、自分のできる範囲で臨機応変にスタッフと協力するという姿勢を貫いていたのです。逆に自分が分からないこと、例えばパソコンの操作などは、「ちょっと教えて~」と素直にヘルプを求め、助けてくれたスタッフに対しては「ありがとう、助かったわ」としっかりお礼を述べ、まさに「持ちつ持たれつの関係」を築いていたのです。

この中村先生のような「しなやかで無理のない仕事のとらえ方、生き方」は、これからの時代に年長者が職場で生き残っていくための大きなヒントになるように思います。

[日経Gooday2021年6月18日付記事を再構成]

奥田弘美さん
精神科医(精神保健指定医)・産業医・労働衛生コンサルタント。株式会社朗らかLabo 代表取締役。1992年山口大学医学部卒。精神科医、そして約20の事業所の産業医として、日本経済を支える働く人の心と身体のケアを日々応援&サポートしている。これまでにメンタルケアを担当したビジネスパーソンは累計2万人以上。マインドフルネスやコーチングを活用した心の健康法も、執筆やセミナーなどにて提案している。 著書には『1分間どこでもマインドフルネス』(日本能率協会マネジメントセンター)、『心に折り合いをつけて うまいことやる習慣』(すばる舎・共著)など多数。最新刊は『「会社がしんどい」をなくす本 いやなストレスに負けず心地よく働く処方箋』(日経BP)。

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_