日産ノート4WD 圧倒的な静寂性とダイナミックな走り

2021/8/15
日産ノートX FOUR(4WD)
日産ノートX FOUR(4WD)
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「日産ノート」に追加された4WDモデル「X FOUR」に試乗。自慢の「e-POWER」に最高出力68PSの後輪用モーターを組み合わせた最新パワートレインは、簡易的な四駆システムを用いた先代モデルとはまったく次元の異なる走りを味わわせてくれた。

日産の決意表明

ニュースソースとしてその名を耳にすることはたびたびなれど、肝心の内容が明らかになるごとに「もしかしてこの会社、もうクルマをつくっている場合などではないのでは……」と、失礼ながらそんなことを連想させられるまでに至ってしまっていた、ここ数年の日産自動車。

特に、ちまたでささやかれる“日本軽視”という雰囲気は、現実問題として身につまされた印象。ベーシックカーの日本代表として一時は強い存在感を放った「マーチ」は、新興国向けモデルがあてがわれた結果、人々の興味の対象から脆(もろ)くも消え去り、「キューブ」や「ジューク」といった日本のユーザーの心をつかんだかに見えたヒット作も、放置プレーを迫られていつしか消滅という憂き目に。

そんなわけで、個人的にも「このブランドから日本に向けた魅力的なニューモデルが生まれてくるのは、もはや期待薄か」との思いが避けられなくなったタイミングで現れたからこそ驚かされることになったのが、丸8年ぶりとなるフルモデルチェンジを経て登場した新型ノートだった。

世代交代のたびにボディーサイズが拡大されるのが半ば常識と思われていたなかにあって、このモデルは5ナンバーサイズをキープするにとどまらず、全長やホイールベースを短縮するという文字通りのダウンサイジングも敢行。

しかも、ライバルを少しばかり上回っていたディメンションに対し、「ちょっと大きいとの声が上がったことを踏まえての軌道修正でもあった」という従来型に対する反省の弁を聞けば、そこにはここしばらくの日産には感じられなかった日本のユーザーに対しての真摯(しんし)な思いが強く感じられたものでもある。

全モデルがe-POWERというパワーユニットの設定にも、やはりこれまでの日産車では考えられなかった、並々ならぬ決意を覚える。なぜなら、バリエーションすべてにe-POWERを搭載するとなれば、スターティングプライスの上昇は避けられないからだ。すなわちそれは、台数稼ぎのためにはどうしても欲しいはずの法人需要を諦めてまで、自身が理想とするラインナップを構築したいという決意表明にほかならないと理解できたのだ。

かくして、さまざまな部分でこれまでの日産車とは一線を画した思いが感じられる新型に対面し、いざ走りだしてみると、これが何ともビックリの好印象! 「あれれ? これは『ヤリス』や『フィット』も何するものぞの一台ではないか!」という手応えは、乗れば乗るほどに強まっていくことになったのである。

日産のコンパクトカー「ノート」の4WDモデルは、2020年12月23日に追加設定された。今回試乗したのは上級グレードの「X FOUR」で、車両本体価格は244万5300円。
「ノート」の4WDモデルは、前輪用に1基、後輪用に1基の計2つのモーターを搭載。前者は最高出力116PS/最大トルク280N・m、後者は同68PS/同100N・mを発生する。
最新世代の「Vモーショングリル」が目を引くフロントフェイス。試乗車に装着されていたオートレベライザー付きのLEDヘッドランプは、33万5500円のセットオプションに含まれるアイテムだ。
1.2リッター直3ガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせた「e-POWER」パワートレインを搭載する新型「ノート」。発電用となるエンジンは、最高出力82PS、最大トルク103N・mを発生する。
「日産ノートX FOUR」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4045×1695×1520mm、ホイールベースは2580mm。先代モデルより全長が55mm、ホイールベースが20mm短縮されている。

車格が上がった?

フロントシート下にレイアウトされたコンパクトなリチウムイオンバッテリーを用いるピュアEVとしての走行時はもとより、エンジンが稼働し始めた状態になっても、静かさの印象にやはり何らの変わりもない。エンジンが発するノイズをロードノイズなどの“暗騒音”というオブラートに包み、その存在感を巧みに隠すという新しいe-POWERならではの制御は天下一品。静粛性の高さは圧倒的だ。このノイズの隠し方こそが、従来型に対して第2世代をうたうe-POWERが、最も進歩したポイントだと実感できた部分だ。

オーソドックスなメータークラスターを廃し、2枚の大きなディスプレイを主役に構成されたダッシュボードが、未来感に富んでいるだけでなく実際の使い勝手が吟味されたものであることにも感心させられた。

この種のデジタルコックピットの場合、とかく目的とされがちなのがスイッチ数の削減。しかし新型ノートの場合そこには抑制が利いて、空調コントロール系やメーターの照度調節など、とっさのシーンで手を伸ばしたい機能には独立した物理スイッチが与えられ、デジタル化したがゆえに使い勝手が低下するという昨今ありがちな愚が、巧みに回避されている。

そして何よりも、新造された骨格が生み出す剛性感に富んだ乗り味が好印象。50km/h程度までの速度域で荒れた路面へと差しかかるとそれなりの揺すられ感は認められるものの、路面凹凸に対するあたりは優しい。総じて走りのフラット感は「日産車で一番ではないか」と思えた。

個人的には、減速時に停止寸前まで速度が下がるとクリープ現象が顔を出すようにセッティングが変更され、完全なワンペダル操作の“e-POWER Drive”ができなくなってしまったことは残念である。しかし走りの質感において、これまでより車格が上がったかのように受け取れたのが、新しいノートの走りの仕上がりだったのである。

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