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アルコール由来のエネルギーは優先的に使われる?

糖質の有無に関係なく、酒と名前が付くものは太る。

何という衝撃的な言葉なのだろう。「糖質が気になるからビールをやめてハイボールに変えた」という酒飲みは少なくないはず。

だが、アルコール由来のカロリーは代謝されやすいので太りにくいのでは?

「太るメカニズムは複雑で、簡単に断言はできませんが、アルコール由来のカロリーでは太りにくいという説があるのは、アルコールが分解されるときの中間生成物が酢酸であるためかもしれません。酢酸は短鎖脂肪酸に分類されるのですが、これは近年『体に脂肪がつきにくい』健康オイルとして注目されているMCTオイルに多く含まれる中鎖脂肪酸よりも、さらに分解しやすい脂肪酸なのです」(久住さん)

久住さんによると、アルコールを摂取すると、1~2時間のうちに小腸などで吸収され、肝臓などで分解される。その中間生成物である酢酸が、筋肉などで最終的に炭酸ガスと水に分解されるときに熱エネルギー(アルコール1g当たり7.1kcal)が放出されるという。

「確かに短鎖脂肪酸は、通常の油に多く含まれる長鎖脂肪酸よりも消費されやすく、体内で優先的に使われるかもしれません。しかし、それで『太らない』と言えるかというと、難しいでしょう。短鎖脂肪酸もエネルギーを有していて、とればとっただけエネルギー過多になります」(久住さん)

「少量の飲酒でも太る」という研究報告も

それでは、どれぐらいの量を飲めば肥満につながるのだろうか。飲み過ぎれば太るのは分かるが、「ここまでの量ならセーフ」という“適量”があればうれしい。

「世界各国のさまざまな肥満に関する研究結果をまとめた論文[注1]では、少量から中程度の飲酒では結果がまちまちで、過度の飲酒はおおむね体重増加につながる、と結論づけています。しかし、少量の飲酒でも体重増加につながるという研究結果が、2020年9月にオンラインで開催された欧州国際肥満学会[注2]で報告されました」(久住さん)

少量でも太る……。もしそれが本当なら、左党にとって大ピンチである。

「この研究によると、1日当たり缶ビール(355mL)半分以上のアルコール摂取で、肥満やメタボリックシンドロームのリスクが高まったそうです。特に男性では顕著で、1日ビール半缶超~1缶以下のアルコールをとる男性は、非飲酒者と比べて肥満のリスクが1.1倍。1缶超~2缶以下では肥満のリスクが1.22倍、2缶超では肥満のリスクが1.34倍でした。これは韓国の20歳以上の約2700万人のデータを解析した結果です。同じ東アジア人を対象とした研究なので、示唆に富んでいますよね」(久住さん)

[注1]Curr Obes Rep. 2015; 4(1): 122-130.

[注2]欧州国際肥満学会のニュースリリース

アルコールで食欲が増進する可能性も

飲み過ぎがよくないのは仕方ないとして、少量でも太る可能性があるとは、ショックだ。

それでは、なるべく太らないようにするには、どのような酒を選べばよいだろうか。最近は発泡酒をはじめ、ビールやチューハイでも「糖質ゼロ」をうたった商品が発売されている。特に甘い酒が恋しくなったときは、糖質ゼロのフルーツ味のチューハイを手にしてしまうのだが……。

「糖質ゼロであれば、確かにその分、カロリーは少ないと言えます。ただ、人工甘味料で味をつけた甘いお酒は要注意です。人工甘味料の種類によっては、飲んだときに膵臓が『糖が入ってきた』と勘違いして、インスリンを分泌してしまいます。インスリンの分泌量が増えれば、結果として血糖値が下がり、空腹感を覚えるので、何か余計に食べたりすることにつながってしまうリスクがあるのです」(久住さん)

太りたくないからと人工甘味料の酒を飲んで、それが食べ過ぎにつながってしまっては本末転倒である。また、久住さんによると、ほかにもアルコールが原因で食べ過ぎになるケースがあるという。

「アルコールによって食欲が増進するという説があります。詳しいメカニズムはまだはっきりとはしていませんが、動物実験のレベルでは、アルコールによって食欲を促進する脳細胞が刺激され、空腹でもないのに食欲が高まるという報告があります[注3]」(久住さん)

飲み過ぎた翌日は空腹感が強くなり、またハンバーグやラーメンといったハイカロリーなものが恋しくなる。これも体に残ったアルコールのせいなのだろうか。

「ほかに、アルコールを飲み過ぎて食欲などを司る大脳皮質が麻痺すると、飲む量や食べる量に歯止めがききにくくなります。そういう失敗の経験がある方も多いのではないでしょうか」(久住さん)

[注3]Nature Communications. 2017; volume 8, Article number: 14014.

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飲みたい日は食事を減らすのも、たまにはOK