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お酒では太らない? 「エンプティカロリー説」の真偽

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

お酒を飲むと太るのか、太らないのか。肥満を予防するためには、お酒も控えたほうがいいのか? これは酒好きにとっては大問題です。そこで、酒ジャーナリストの葉石かおりさんが、酒と肥満の関係についての最新研究に詳しい、ナビタスクリニック理事長の久住英二さんに話を聞きました。

◇   ◇   ◇

「酒はエンプティカロリーだから太らない」

こんな話を聞いたことはないだろうか。

これを信じ、「酒だけを飲む分には太らないから大丈夫」と豪語してつまみなしで飲み続ける酒豪もいるが、お腹はポッコリである。

エンプティカロリーとは、カロリーがゼロ(空=エンプティ)という意味。

お酒に含まれる純アルコール(エタノール)には、1g当たり7.1kcalのエネルギーがある。ところが、このうち70%ほどは代謝で消費されることが分かっている。そのため、同じカロリーを脂質や糖質でとったときよりも、体重増加作用が少ないのではないか、というのが「エンプティカロリー説」である。

筆者はスマートフォンのアプリで食事と体重の管理を行っている。食べたものや飲んだお酒などについて入力すると、その日に摂取した総カロリーが計算される。だが、もし「エンプティカロリー説」が本当なら、お酒を飲んでもアプリに入力しなくてもいいんじゃないか、という気になってしまう。

実際、「今日は糖質ゼロのハイボールだし、カウントしなくていいや」と自己判断し、入力しないことも。そのせいもあってか、アプリによる管理を始めてから体重が人生最大値より8kgやせたものの、それ以降はなかなか減らない。しかも、ここにきて中性脂肪がやや高めになっており、何だかお腹回りもポチャッとしてきたような……。

コロナ禍で酒量が増えている人が多い今こそ、ネットでも散見する「エンプティカロリー説」の真偽と、「お酒を飲むと太るのかどうか」について明らかにしておかねばならない。この問題に詳しい、ナビタスクリニック理事長の久住英二さんにお話を伺った。

お酒は「エンプティカロリーだから太らない」は間違い!

先生、酒好きの間で、「酒はエンプティカロリーだから太らない」という説が信じられているのですが、実際はどうなのでしょう?

「お酒はエンプティカロリーではありません。当然、太ります。お酒に含まれるエタノールはれっきとしたエネルギー源です。お酒を飲むときはおにぎりを食べるのと同じ感覚で、太ると思って飲んだほうが賢明です」(久住さん)

おにぎりを食べるのと同じ感覚で……!?

「文部科学省の食品成分データベースによれば、ビール1缶(355mL)にはアルコールが14g、糖質が11~12g含まれ、エネルギーは150kcal前後になります。同様に、ワインだと小グラス1杯(118mL)で90~100kcal、日本酒1合が200kcal近くです。コンビニで売られているおにぎりは、1個当たり170~180kcalぐらいですから、ほぼビール1缶、日本酒1合、ワイン2杯と同程度ということになります」(久住さん)

「酒はエンプティカロリーではない」と明言されることは覚悟していたが、糖質のかたまりであるおにぎりと同じ土俵で考えなくてはならないなんて(涙)。

先生、糖質ゼロのハイボールや本格焼酎であれば、カロリーとしてカウントしなくていい、なんてことはないのでしょうか?

「残念ですが、それもありません。焼酎やウイスキーなどの蒸留酒は糖質はゼロですが、アルコール由来のカロリーがあります。糖質が含まれていないお酒なら太らないのではなく、お酒そのものが太るということです。糖質ゼロだからと安心して飲み過ぎたら元も子もないですよね」(久住さん)

アルコール由来のエネルギーは優先的に使われる?

糖質の有無に関係なく、酒と名前が付くものは太る。

何という衝撃的な言葉なのだろう。「糖質が気になるからビールをやめてハイボールに変えた」という酒飲みは少なくないはず。

だが、アルコール由来のカロリーは代謝されやすいので太りにくいのでは?

「太るメカニズムは複雑で、簡単に断言はできませんが、アルコール由来のカロリーでは太りにくいという説があるのは、アルコールが分解されるときの中間生成物が酢酸であるためかもしれません。酢酸は短鎖脂肪酸に分類されるのですが、これは近年『体に脂肪がつきにくい』健康オイルとして注目されているMCTオイルに多く含まれる中鎖脂肪酸よりも、さらに分解しやすい脂肪酸なのです」(久住さん)

久住さんによると、アルコールを摂取すると、1~2時間のうちに小腸などで吸収され、肝臓などで分解される。その中間生成物である酢酸が、筋肉などで最終的に炭酸ガスと水に分解されるときに熱エネルギー(アルコール1g当たり7.1kcal)が放出されるという。

「確かに短鎖脂肪酸は、通常の油に多く含まれる長鎖脂肪酸よりも消費されやすく、体内で優先的に使われるかもしれません。しかし、それで『太らない』と言えるかというと、難しいでしょう。短鎖脂肪酸もエネルギーを有していて、とればとっただけエネルギー過多になります」(久住さん)

「少量の飲酒でも太る」という研究報告も

それでは、どれぐらいの量を飲めば肥満につながるのだろうか。飲み過ぎれば太るのは分かるが、「ここまでの量ならセーフ」という"適量"があればうれしい。

「世界各国のさまざまな肥満に関する研究結果をまとめた論文[注1]では、少量から中程度の飲酒では結果がまちまちで、過度の飲酒はおおむね体重増加につながる、と結論づけています。しかし、少量の飲酒でも体重増加につながるという研究結果が、2020年9月にオンラインで開催された欧州国際肥満学会[注2]で報告されました」(久住さん)

少量でも太る……。もしそれが本当なら、左党にとって大ピンチである。

「この研究によると、1日当たり缶ビール(355mL)半分以上のアルコール摂取で、肥満やメタボリックシンドロームのリスクが高まったそうです。特に男性では顕著で、1日ビール半缶超~1缶以下のアルコールをとる男性は、非飲酒者と比べて肥満のリスクが1.1倍。1缶超~2缶以下では肥満のリスクが1.22倍、2缶超では肥満のリスクが1.34倍でした。これは韓国の20歳以上の約2700万人のデータを解析した結果です。同じ東アジア人を対象とした研究なので、示唆に富んでいますよね」(久住さん)

[注1]Curr Obes Rep. 2015; 4(1): 122-130.

[注2]欧州国際肥満学会のニュースリリース

アルコールで食欲が増進する可能性も

飲み過ぎがよくないのは仕方ないとして、少量でも太る可能性があるとは、ショックだ。

それでは、なるべく太らないようにするには、どのような酒を選べばよいだろうか。最近は発泡酒をはじめ、ビールやチューハイでも「糖質ゼロ」をうたった商品が発売されている。特に甘い酒が恋しくなったときは、糖質ゼロのフルーツ味のチューハイを手にしてしまうのだが……。

「糖質ゼロであれば、確かにその分、カロリーは少ないと言えます。ただ、人工甘味料で味をつけた甘いお酒は要注意です。人工甘味料の種類によっては、飲んだときに膵臓が『糖が入ってきた』と勘違いして、インスリンを分泌してしまいます。インスリンの分泌量が増えれば、結果として血糖値が下がり、空腹感を覚えるので、何か余計に食べたりすることにつながってしまうリスクがあるのです」(久住さん)

太りたくないからと人工甘味料の酒を飲んで、それが食べ過ぎにつながってしまっては本末転倒である。また、久住さんによると、ほかにもアルコールが原因で食べ過ぎになるケースがあるという。

「アルコールによって食欲が増進するという説があります。詳しいメカニズムはまだはっきりとはしていませんが、動物実験のレベルでは、アルコールによって食欲を促進する脳細胞が刺激され、空腹でもないのに食欲が高まるという報告があります[注3]」(久住さん)

飲み過ぎた翌日は空腹感が強くなり、またハンバーグやラーメンといったハイカロリーなものが恋しくなる。これも体に残ったアルコールのせいなのだろうか。

「ほかに、アルコールを飲み過ぎて食欲などを司る大脳皮質が麻痺すると、飲む量や食べる量に歯止めがききにくくなります。そういう失敗の経験がある方も多いのではないでしょうか」(久住さん)

[注3]Nature Communications. 2017; volume 8, Article number: 14014.

飲みたい日は食事を減らすのも、たまにはOK

また、久住さんによると、アルコールを飲み過ぎると肝臓で過剰に中性脂肪が合成され、これも肥満の原因にもなる。「中性脂肪の値が高くなると、肥満だけでなく、動脈硬化や心筋梗塞など、さまざまな病気のリスクも上がります。その予防のためにも、飲み過ぎには気をつけなければなりません」(久住さん)

では、太らないようにするためには、どんな飲み方をしたらいいのだろう。「飲み過ぎないこと」と言われるのを承知で久住さんに聞いてみた。

「お察しの通り、飲み過ぎないことがベストです(笑)。昨今の研究で『アルコールは少量でもがんなどのリスクを上げる』ことが報告されたので、実は適量というのもありません」(久住さん)

やはりそうか……。少量の飲酒でもがんなどの病気のリスクが上がることについては、過去の連載でも紹介している(参考「酒は百薬の長のはずでは? 少量でもNGの最新事情」)。

「といっても、お酒が好きな方は、たくさん飲みたいときもありますよね。太らないように飲むには、お酒もカロリーがあると認識して、トータルのカロリーをコントロールすることです。つまみに低カロリーで高たんぱくな魚や、納豆などの大豆加工品、大根やきゅうりなど歯ごたえのある野菜を選ぶと満足感が得られます。また、『今夜は飲むぞ』と思ったら、朝と昼はぐっと控えめにしてもいいですよね」(久住さん)

がっくりと肩を落とす筆者に向かって、久住さんはうれしいアドバイスをしてくれた。

逆に最悪の飲み方・食べ方を聞くと、「ビールとピザ」と久住さんは即答。ジャンクフード好きの酒飲みにとっては最高の組み合わせなのだが、これは肥満まっしぐらコンビのようだ。

そうは言っても、毎晩節制していたらストレスが爆発してしまう。それこそ自棄(やけ)飲みしてしまいそうだ。

「たまにはやらかしてもいいんです。3日間単位で食べるもの、飲むものを調整し、体重をコントロールすればいいのです。そのためには毎日、体重計に乗ることが大切。『昨日食べ過ぎたし、体重計に乗りたくない』と思うときこそ、乗ってください。前日よりも500g以上増えていたら食べ過ぎ、飲み過ぎの証拠。『500gくらいは誤差』とおっしゃる方がいますが、体重計はウソをつきません。増えた分を減らすようにコントロールしていきましょう」(久住さん)

み、耳が痛い。500gどころか、「1kgくらいは誤差」と思うようにしていた。また、寝る直前に飲み食いするのもなるべく避けたほうがいいという。

「ベストは『小腹がすいた』と思うくらいの空腹感で、お酒が抜けた状態で寝ることが望ましい。満腹の状態で寝てしまうと胃酸の逆流が起こりやすく、逆流性食道炎のリスクも高まります。また寝る前の飲酒は、夜中に目が覚めやすくなるため、睡眠の質を下げます。睡眠の質が下がると、翌日に疲れが残り、疲れを紛らわそうと、"快楽物質"として酒が恋しくなるという悪いサイクルに陥りやすくなります」(久住さん)

最後に、太らないようにするためには、やはり運動も重要だという。

「お酒の飲み過ぎで太ってしまう方は、生活の中で体の活動量と摂取カロリーとが釣り合っていないという事実があります。アルコールでカロリーを摂取する分、運動してカロリーを消費するよう心がけましょう。ダイエットというとウオーキングやジョギングなどの有酸素運動を思い浮かべる人も多いですが、筋肉量が減ると太りやすくなるので、腕立て伏せ、腹筋(クランチやシットアップ)などの筋トレも行いましょう。運動にはストレスを軽減する効果もあるので、ストレスからくる飲み過ぎの予防にも効果的です」(久住さん)

実に基本的だが「消費カロリー < 飲み食いしたカロリー」を続けている限り、やせることはまずない。それどころか"巨大化"へ一直線である。

まずは「酒はエンプティカロリーではなく、どんな酒でも太る」ということを認識し、久住さんの「体重計はウソをつかない」を心に刻み、今日から食べ方・飲み方を見直してみよう。

(文 葉石かおり=エッセイスト・酒ジャーナリスト)

[日経Gooday2021年6月7日付記事を再構成]

久住英二さん
ナビタスクリニック理事長、内科医師。医療法人社団鉄医会理事長。1999年新潟大学医学部卒業。内科医、とくに血液内科と旅行医学が専門。虎の門病院で初期研修ののち、白血病など血液のがんを治療する専門医を取得。血液の病気をはじめ、感染症やワクチン、海外での病気にも詳しい。現在は立川・川崎・新宿駅ナカ「ナビタスクリニック」を開設し、日々診療に従事している。

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