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気候変動とは無関係 1900万年前のサメ大量絶滅の謎

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ナショナルジオグラフィック日本版

サメは4億年以上にわたり、浅い海から外洋まで、地球上のあらゆる海で暮らしてきた。その間、恐竜が絶滅した6600万年前を含め、少なくとも4回の大量絶滅を乗り越えてきた。

しかし、今から1900万年前、サメに何らかの大きな事件が起きた。それにより、外洋性のサメが激減、そこから立ち直ることはなかった。

このサメ絶滅事件に関する初めての研究成果が、2021年6月4日付で学術誌『サイエンス』に発表された。研究者らが調べたのは、太平洋の海底に堆積していた太古のサメのうろこ。歯状突起と呼ばれるそのうろこの形と個数を分析することで、地球の外洋性のサメの個体数が1900万年前に突然90%以上も減少したと推定した。ちなみに、非鳥類型恐竜が絶滅した6600万年前の大量絶滅のときでさえ、サメは約30%しか減少しなかった。

「『大事件が起きた』とサメたちが叫んでいます。サメたちは4億年もの長い歳月を生き抜き、多くの出来事を見てきました。そんな彼らの90%を死滅させてしまった出来事とは、一体何なのでしょうか?」と、今回の論文の筆頭著者である米エール大学の古生物学者エリザベス・サイバート氏は語る。

この事件は約10万年の間に起きた。地質学的には一瞬の出来事だ。奇妙なことに、この事件は、既知の大きな気候変動や、サメ以外の外洋性の捕食者の台頭とは一致しない。

外洋性のサメの激減は、ほかの海洋動物に繁栄のチャンスを与えた可能性がある。サメの大量絶滅から数百万年後、マグロや海鳥、クジラ、回遊性のサメなどが多様化し、今日のような外洋の生態系が形成されたと考えられている。

今回の発見を考慮すると、現代のサメたちの未来は明るくないかもしれないと、研究者たちは警告する。21年1月27日付で学術誌『ネイチャー』に掲載された論文によると、乱獲のせいで、外洋性のサメとエイの総数が1970年以降に71%も減少しているという。今から1900万年前に外洋性のサメが激減し、それ以後回復することができていないのだとしたら、人間の活動は未来の海をどのように変えてしまうのだろうか?

スウェーデンのウプサラ大学の古生物学者モハマド・バッツィ氏は、この研究について、「サメというカリスマ的な頂点捕食者が、ある種の急激な環境変化に対していかに脆弱であるかを明確に示すものです。現代において、非常に大きな意味をもつ研究です」と評価する。なお、バッツィ氏はこの研究には関与していない。

海底堆積物からサメの歴史を探る

サイバート氏がこの謎を解くヒントを見つけたのは、数年前のこと。彼女は当時、地球の歴史のうち過去8500万年の中で、サメをはじめとする魚類が外洋でどのように暮らしていたのか、その大まかなパターンを解明しようと取り組んでいた。

サイバート氏は地球上で最も重要な「図書館」の1つで調査を開始した。それは、1968年から科学者たちが掘削してきた深海堆積物コアだ。海底は、地球サイズの歴史書のようなものである。堆積物のそれぞれの層に含まれる物質や化石は、地球が長い歳月の間にどのように変化し、生命がどのようにしてその変化に対応してきたかという歴史を刻んでいる。過去の地球の気候変動を知るうえでも重要な記録だ。

サイバート氏が注目したのは、「イクチオリス(ichthyolith)」と呼ばれる比較的地味な化石だった。魚の歯やサメの歯状突起など、魚の一生の中で何度も脱落しては生え変わる小さな化石だ。サイバート氏は、コアの各層に含まれるイクチオリスの種類と量を追跡することで、海洋生態系の長期的な変化を追跡したいと考えた。

広い範囲の変化を把握するため、サイバート氏は太平洋の亜熱帯循環のある海底で掘削された2つの堆積物コアを使用した。太平洋の亜熱帯循環は数千万年にわたって安定した状態を保っている巨大な渦状の海流で、その海底の堆積物には、数百キロから数千キロも離れた場所に生息する動物の歯状突起や歯が含まれている可能性がある。サイバート氏が注目した主なコアは、彼女が生まれる前の83年に南太平洋で採取されたものだった。

サイバート氏がコアに含まれるサメの歯状突起と魚の歯を数えてみると、過去8500万年の間に外洋の様子が何度も変化していることがわかった。6600万年前に恐竜が絶滅するまでの堆積物には、魚の歯1本に対してサメの歯状突起は1個の割合で含まれていた。しかし、それから200万年ほどすると、サメの歯状突起の割合は半分に減った。

約5600万年前には、魚の歯5本に対してサメの歯状突起が1個の割合になり、その後4000万年ほどはこの割合で安定していたが、1900万年前から突然、魚の歯100本に対してサメの歯状突起が1個という割合になった。「無視できない変化です」とサイバート氏は言う。

衝撃的な調査結果

サイバート氏は、これらの観察結果を2016年に学術誌『英国王立協会紀要』に発表したが、まだわからないことがたくさんあった。あらゆる種類のサメが均等に減ったのか? それともあるグループのうろこ、つまりあるグループのサメが1900万年前に絶滅してしまったのか?

サイバート氏は、現在、米シラキュース大学に所属するリア・ルービン氏と協力して調査を進めた。ルービン氏は、現代のサメ、ガンギエイ、エイの皮膚の写真約600点と1300点近い化石を調べ、堆積物中の歯状突起を形状によって分類する方法を考案した。

「微化石は小さすぎて、肉眼では細部を見ることができませんが、顕微鏡で観察すると、その豪華さと複雑さに驚かされます」とルービン氏は言う。

歯状突起の分類を終えたルービン氏とサイバート氏は、衝撃的な結果を突きつけられた。1900万年前より古いサンプルに比べて、新しいサンプルでは歯状突起の種類数が70%も減っていたのだ。つまり、太平洋の外洋に生息するサメの多くが、なんらかの理由で絶滅してしまったのである。

この事件は、あるグループのサメに特に大きな影響を及ぼしたようだ。現代のサメでは泳ぎの遅い種に見られる形の歯状突起が1900万年前に激減しており、ほかのタイプの歯状突起はその後も存続していたのだ。

なおも解けない「絶滅の謎」

今回の発見が、初期中新世と呼ばれるこの時代への新たな関心を呼び起こすのは確実だ。これまでに得られている当時の気候記録は、地球の気候が安定していたことを示唆しているが、その実態はよくわかっていない。

サイバート氏によると、初期中新世の層まで採取できているはずの深海堆積物コア683本のうち、80%以上にこの時期の堆積物がないという。その理由はまだ解明されていない。しかし、化石から得られた証拠と地球の記録を考え合わせると、今から1900万年前になんらかの短期的な気候変動が地球を襲った可能性は十分に考えられる。

英セント・アンドリューズ大学の気候科学者であるジェームズ・ライ氏は、「古代地球の研究には歴史が浅い分野もあり、比較的最近に起こった出来事について大発見があることがあります」と言う。なお、ライ氏は今回の研究には関与していない。

例えば80年代には、深海堆積物の研究から、約5500万年前に海洋プランクトンが大量に絶滅したことが明らかになったが、その後の研究から、この時期に地球の二酸化炭素濃度が急激に増加し、気温が上昇して海が酸性化していたことが判明した。

現在、地質学者たちは、人為的な気候変動に対して地球がどのように反応するかを知るために、暁新世・始新世境界温暖化極大(PETM)と呼ばれるこの時期を綿密に調査している。未来の科学者たちも、同じように中新世のサメの絶滅を研究するかもしれないが、もっと多くのデータがなければ謎は解けない。

「何かがあったはずなんです」とサイバート氏は言う。「それが何なのかは、まだわかりませんが」

(文 MICHAEL GRESHKO、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年6月8日付]

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