安藤先生 まずは良かった点をお伝えしますね。1つ目は、文章の構成です。書き出しで「力を入れてきたことは3つ」と伝えてから、その後1点ずつ理由を挙げているので、読みやすい文章になっています。
2つ目は、伝えたい内容が明確になっている点です。アルバイトの話でも南さんの真面目なキャラクターが伝わってきますし、野球部の話でも「チームワーク」を大事にする姿がよくわかります。
蒼太 ありがとうございます。確かに「チームワーク」は僕がとても重視していることです。1人ではできなかったことが実現できたり、想像していた以上の力が出せたりするということを実感してきましたから。
ESで意識したい「シグナリング」とは?
安藤先生 いいですね。就職活動も1人での戦いにみえて、実は「チームワーク」が大切になるので、皆で協力していこうという気持ちは大切です。
さて、ここから本題、改善点をお伝えします。1点目は、文字数が不足しているということです。
蒼太 えっ、そうですか? 結構頑張って埋めたのですが……。
安藤先生 数えてみると文字数は497文字でした。文字数の指定があった場合、できれば8割は超えた文字数を記入したほうがいいでしょう。
もちろん無駄に長く書く必要はないのですが、企業の採用担当者は非常に多くのエントリーシートを見ることになります。ですから、この場合は800字の8割ということで最低でも640字以上は記載されていないと数あるエントリーシートを比べたときに見劣りしてしまい、結果として「この学生は志望度が低いのかな」と判断されてしまいます。
蒼太 文字数で志望度を判断されてしまうんですか?
安藤先生 少し納得いかない感じですね。極端なケースを考えると分かりやすいかもしれません。例えば、回答欄の3分の1程度の分量しかガクチカが書いてなかったら、南さんが採用担当者だったらどのように感じますか?
蒼太 うーん……、提出直前に急いで書いたのかなとか、あまり本気でESを書いていないなと考えてしまうと思います。
安藤先生 そうなんです。このサンプルは800字と少し分量が多いのですが、ぜひこの会社に入りたいと考えている応募者ならば、自分の熱意を伝えるために、他の応募者との差別化を図るためにも、よく考えた文章を枠いっぱいまで書いてくるはずです。このような行動を、経済学では「シグナリング」と言います。
蒼太 あ、先生の講義で出てきましたね。えーと、能力が高い人が自分の価値を伝えるために資格を取る話、でしたっけ。
安藤先生 はい。能力が高い人にとって、能力が低い人とまとめて扱われてしまい損しているようなときに、能力が低い人にはできないことや割が合わなくてやらないことをあえてやって見せることで、自分の能力を伝えるという点が重要でした。
ここでは会社に対する志望度が学生によって異なるという状況があります。志望度合いの高い人が手間をかけることで熱意を伝えるという構造なので、シグナリングになっています。
高校時代の話はNG?
安藤先生 2点目として、「学生時代に力をいれてきたこと」の「学生時代」とは、一般的には「大学生の時期」を指していると考えてください。
蒼太 えっ、そうなんですか……。僕にとって高校時代の部活動は、本当に頑張った思い出だから絶対に書きたかったのですが。