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あなたのガクチカ、なぜ伝わらない? 記入例から解説

ふつうの大学生のための就活ガイド 第4話

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NIKKEI STYLE

日本大学経済学部・安藤至大教授が、これから就職活動を始める「ふつうの大学生」の相談に乗る、ストーリー形式の連載「ふつうの大学生のための就活ガイド」。第4回のテーマは「ガクチカ」(学生時代に力を入れたことの略称)の書き方です。(学生も会話もフィクションです)

N大学経済学部3年生の南蒼太(みなみ・そうた)は労働経済論の授業を担当している安藤先生のところへ就活の相談に来ています。前回、就活の「ルール」について理解したところで、実際にエントリーシート(ES)を書いてみることになりました。

安藤先生 では早速ESのサンプルに記入してみましょう。

蒼太 ちょっと展開が早くて驚いていますが、頑張ります。

安藤先生 本当ならば、まずは働き方に関する自分の希望を整理したり、業種や企業のことを調べたりする方がいいのですが、「就活ゲーム」の構造を理解する上で有益なので、先にESに取り組んでみましょう。

さて、このサンプルESで聞かれているのは、「志望動機」と「ガクチカ」ですね。

蒼太 えーと、志望動機は「この学生は内定を辞退しないか、また入社してもすぐに辞めてしまわないか」という企業側の不安に答えるもので、ガクチカは「会社に入って活躍してくれるか」という不安に答えるんですよね。

安藤先生 その通りです。ところで南さんは「この会社で働きたい」と思う企業名を具体的に挙げられますか?

蒼太 今のところ、僕は、ハウスメーカーとかリノベーション(建物の改修)の会社に興味があります。ちょうどゼミの卒業生でDリノベーションという会社で働く先輩がいて、ゼミのOB・OG会に参加してくれたんですよね。その先輩はオンライン参加だったので1対1で話すような機会はなかったんですが、会社の話が少しきけました。

リノベーションと聞くと建築学科を出た人が働く場所というイメージがありました。でも僕と同じ経済学部を卒業した先輩も活躍しているみたいだし、仕事が楽しそうだったんですよね。

安藤先生 それは良い機会でしたね。

蒼太 話を聞いていて、「確かに家って大事だな。結局、家にいる時間が1日で最も長いからなぁ」と思ったんです。

その後は街を歩いているときにも、なんだか住宅が気になるようになりました。特に古いマンションや一戸建てを見ると、「暮らしやすい住宅なのかなあ。先輩の会社でリフォームとかしたらどのくらい便利に変わるのかな」といったことを考えたりします。

こんな経緯で、いつの間にか住宅関係の仕事に関われたら楽しいだろうな、ちょっとDリノベーションみたいな会社で働いてみたいなぁと思ったんですよね。

安藤先生 わかりました。それでは、今回のESは、Dリノベーションに応募することを想定して書いてみましょう。本日は、まだ研究室にいますので、今ここで書いてくれてもいいですし別の場所で書いたものを後で持ってきてくれてもいいですよ。

蒼太 ありがとうございます。今日はもう授業がないので、ここで書かせてください。

(30分後、蒼太の記入が完了。安藤先生がそれに目を通す)

安藤先生 お疲れさまでした。まず「ガクチカ」について先にチェックしていきましょう。

あなたが学生時代に力をいれてきたことはなんですか?

(800字以内)
 私が学生時代に力をいれてきたことは3つあります。
 1つ目は飲食店でのアルバイトです。アルバイト先ではその接客技術をかわれてバイトリーダーになりました。飲食店に勤めている中で、お客様に寄り添い、丁寧に接客することが重要であると学びました。これからもお客様を大切にするという気持ちをもっていきたいと思います。
 2つ目が高校時代の部活動です。私は、高校時代に甲子園を目指して日々仲間と共に野球をしてきました。野球部では、レギュラーになるための部員間の競争もありますが、勝利をつかむためにはチームワークが欠かせません。常にチームをベストな状態にもっていくために、私は自分のポジションを守るだけではなく、率先して声出しや雑用もこなしました。
 3つ目は大学受験を頑張りました。高校時代は、部活動で野球を高校3年生の冬まで続けていたので受験勉強との両立が大変でしたが、勉強も部活も中途半端で終わらせたくないと思い、最後までやり切りました。この経験から自分の決めたことを最後までやりきるという責任感を学びました。これからも自分の行動に責任を持って取り組みたいと思います。
 以上、3つが私が学生時代に力をいれたことです。

安藤先生 まずは良かった点をお伝えしますね。1つ目は、文章の構成です。書き出しで「力を入れてきたことは3つ」と伝えてから、その後1点ずつ理由を挙げているので、読みやすい文章になっています。

2つ目は、伝えたい内容が明確になっている点です。アルバイトの話でも南さんの真面目なキャラクターが伝わってきますし、野球部の話でも「チームワーク」を大事にする姿がよくわかります。

蒼太 ありがとうございます。確かに「チームワーク」は僕がとても重視していることです。1人ではできなかったことが実現できたり、想像していた以上の力が出せたりするということを実感してきましたから。

ESで意識したい「シグナリング」とは?

安藤先生 いいですね。就職活動も1人での戦いにみえて、実は「チームワーク」が大切になるので、皆で協力していこうという気持ちは大切です。

さて、ここから本題、改善点をお伝えします。1点目は、文字数が不足しているということです。

蒼太 えっ、そうですか? 結構頑張って埋めたのですが……。

安藤先生 数えてみると文字数は497文字でした。文字数の指定があった場合、できれば8割は超えた文字数を記入したほうがいいでしょう。

もちろん無駄に長く書く必要はないのですが、企業の採用担当者は非常に多くのエントリーシートを見ることになります。ですから、この場合は800字の8割ということで最低でも640字以上は記載されていないと数あるエントリーシートを比べたときに見劣りしてしまい、結果として「この学生は志望度が低いのかな」と判断されてしまいます。

蒼太 文字数で志望度を判断されてしまうんですか?

安藤先生 少し納得いかない感じですね。極端なケースを考えると分かりやすいかもしれません。例えば、回答欄の3分の1程度の分量しかガクチカが書いてなかったら、南さんが採用担当者だったらどのように感じますか?

蒼太 うーん……、提出直前に急いで書いたのかなとか、あまり本気でESを書いていないなと考えてしまうと思います。

安藤先生 そうなんです。このサンプルは800字と少し分量が多いのですが、ぜひこの会社に入りたいと考えている応募者ならば、自分の熱意を伝えるために、他の応募者との差別化を図るためにも、よく考えた文章を枠いっぱいまで書いてくるはずです。このような行動を、経済学では「シグナリング」と言います。

蒼太 あ、先生の講義で出てきましたね。えーと、能力が高い人が自分の価値を伝えるために資格を取る話、でしたっけ。

安藤先生 はい。能力が高い人にとって、能力が低い人とまとめて扱われてしまい損しているようなときに、能力が低い人にはできないことや割が合わなくてやらないことをあえてやって見せることで、自分の能力を伝えるという点が重要でした。

ここでは会社に対する志望度が学生によって異なるという状況があります。志望度合いの高い人が手間をかけることで熱意を伝えるという構造なので、シグナリングになっています。

高校時代の話はNG?

安藤先生 2点目として、「学生時代に力をいれてきたこと」の「学生時代」とは、一般的には「大学生の時期」を指していると考えてください。

蒼太 えっ、そうなんですか……。僕にとって高校時代の部活動は、本当に頑張った思い出だから絶対に書きたかったのですが。

安藤先生 南さんにとって、高校時代の部活が印象的だったのはわかります。でも、思い出してください。企業は、自己PRで「会社に入って活躍してくれるか」をみているわけです。

例えば、高校時代に文学賞をとったとか、オリンピックにでたとか、とても珍しい実績があれば、高校時代のことを書いても構いません。圧倒的なインパクトを企業側にも与えられますし、そんな功績がある人であれば企業に入ってからも何かしらの活躍をしてくれるだろうと感じるからです。

蒼太 確かに。すごい実績ですもんね。

安藤先生 厳しいことを言うようですが、高校時代の部活動や大学受験を頑張ったことは、就職活動をする多くの学生が体験していることです。そのため他の学生との差別化にはつながりにくいと思います。また、数年も前の話では、現在の南さんの力も見えてきません。

例えば、他の学生が自己PRとして、「これまでに一番頑張ったのは小学生のときの少年野球です」と書いていたら、南さんはどう思いますか? 人生のピークが小学生のときなのか、その後はどうしたんだろうと感じませんか?

このように企業側が、南さんが「会社に入って活躍してくれるだろうか?」と考えた時に、できるだけ最近のエピソードの方が効果的なのです。もちろん面接などで聞かれたら、高校時代の活動に触れることは構いません。

蒼太 なるほど……、じゃあ大学時代のエピソードを考えないといけませんね。

「良いところを伝えたい」だけでは自己PRにならない

安藤先生 続いて改善点の3点目です。エピソードをもっと具体的にしましょう。

南さんがガクチカに書いた内容には、例えばアルバイトで「お客様に寄り添い、丁寧に接客することが重要であると学びました」とありますが、どのような体験からこのことを学んだのでしょうか? 全体的に具体性に欠けていて「確かにこの人なら活躍してくれる」という納得感が得られないのです。

蒼太 いやー、「自分の良いところを伝えたい」と思って書いちゃったので。当たり障りのない文章になってしまったかもしれません。

安藤先生 先ほど、「会社に入って活躍してくれるか」を会社はみていると言いました。企業側は、自ら課題を発見して、試行錯誤を通じて解決することができるか否かなど、学生の素質を見極めたいわけです。

良いところを伝えたいという気持ちはあっても構いません。しかし、きれいごとだけ書いても伝わりません。企業は、経験した南さんにしかわからない苦労や困難をどうやって乗り越えたか、そんな具体的なエピソードを知りたいのです。そこから、南さんの行動力や思考の特性がわかるからこそ、「会社に入って活躍してくれるだろうか?」という不安が解消されていくわけです。

蒼太 なんだかちょっと安心しました。変に格好つけて自分をよく見せようとするのではなく、自分にしか書けないことを書けばいいんですね。

安藤先生 もちろんです。ガクチカは自己PRにつながるものですから、自分のことをわかってもらう内容になっていることが重要です。

蒼太 今はガクチカを見てもらったわけですが、「あなたの魅力をPRしてください」「会社にどんな貢献ができますか」など、もっと直接的な自己PRを求められた場合にはどのように書けばいいのでしょうか?

安藤先生 南さん自身はどのように考えますか?

蒼太 うーん、「自分にはこんな得意分野があって、それを生かして会社で頑張ります」といった感じでしょうか。

安藤先生 そうですね。どんな質問のされ方をしたとしても、次のような3段階に分けてアプローチするといいでしょう。

(1)まずは何を聞かれているのかを把握する。
(2)伝えたい内容を決める。
(3)その根拠となるエピソードを複数準備する。

ただしESのスペースには制限があるので、どのエピソードをESに書いて、どれを面接にとっておくのかも検討する必要があります。

蒼太 思っていたよりも大変ですね……。

安藤先生 しかし大変だから意味があるとも言えます。そもそも志望動機とは異なり、自己PRはどんな会社に対しても同じものを使おうと思えば使えます。しかしその企業が一緒に働く新入社員に何を求めているのかをよく検討して、どのような内容を伝えるのかを考えることが有益です。その際にはしっかりと手間暇をかけることが相手へのメッセージにもなるわけです。

蒼太 シグナリングですね!

安藤先生 その通りです。ガクチカに限らず、ESを書くときにはシグナリングを意識することが大事です。さて、次は志望動機を見ていきましょう。

(次へ続く)

安藤至大
 日本大学経済学部教授。2004年東京大学博士(経済学)。政策研究大学院大学助教授、日本大学大学院総合科学研究科准教授などを経て、18年より現職。専門は契約理論、労働経済学、法と経済学。厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会で公益代表委員などを務める。著書に「これだけは知っておきたい 働き方の教科書」(ちくま新書)など。

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