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昨年の出版以来、大きな話題を呼んでいる本。「人新世(ひとしんせい)」とは、人類の経済活動が地球を覆い尽くして破壊する時代、つまり環境危機の時代を指す。このままでは水不足や食料危機などによって、地球は人間が住める場所ではなくなってしまう。

経済思想家の著者は、唯一の解決策として、終わりなき経済成長を追求する資本主義から脱出することを提言。マルクスの晩年の思想を新しく解釈し、「脱成長コミュニズム」型社会への移行が気候危機を止め、生活を豊かにすると説く。マイボトルやエコバッグを持つだけでは、すでに始まっている気候危機は到底乗り切れない。地球に生きる当事者として私たちひとりひとりが何をすべきか、そのヒントがこの1冊に詰まっている。

要点1 豊かな生活の代償が先進国でも見える化

日本を含む先進国の大量生産型、大量消費型の社会は、それによって被害を受ける地域や住民、いわゆる「グローバルサウス」の労働力の搾取と環境資源の収奪によって成立している。ファストファッションの服を作るバングラデシュの劣悪な労働環境、パーム油生産のために熱帯雨林が乱開発されるインドネシアなどもその例。これまで私たちはそれを遠い地域の出来事として不可視化してきた。しかし、地球は有限だ。これまで負荷を転嫁してきた「外部」が使い尽くされてきた昨今、日本の異常気象やオーストラリアの山火事など、先進国でも被害が可視化されるようになってきている。

要点2 SDGsは現代版「大衆のアヘン」

気候危機対策のひとつが、再生可能エネルギーに財政投資をして、持続可能な「緑の経済成長を目指す」というもの。SDGsはその旗印となっている。だが、これは完全な現実逃避。資本主義のつらい現実が引き起こす苦悩を和らげる、「大衆のアヘン」だ。経済成長が順調なほど、経済活動の規模が大きくなり、資源消費量が増大、CO2排出量も増えてしまう。終わりなき経済成長を目指すことが本質の資本主義を続ける限り、気候危機は止められない。

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