栽培しやすいローズマリー 飾りに料理に使い方も様々
いま園芸店ではハーブの売れ行きがよく、特にローズマリーが人気だという。香りに清涼感があり、料理にも使え、蒸し暑い気候と新型コロナ禍で蓄積するストレスを和らげてくれる。
「ローズマリーは夏も冬も越せる強さがあり、栽培しやすいハーブです」――。埼玉県久喜市のハーブ農場「ポタジェガーデン」。社長の平田智康さんが教えてくれた。約150種類のハーブを栽培し、スーパーやレストラン、園芸店に卸している。うち20種類がローズマリーだ。まっすぐ伸びるタイプ、はうように育つ種類、その中間と生え方には3種類あり、花も青、紫、ピンク、白と多彩だ。
日当たりをそれほど求めず、強い香りのおかげで虫がつくことも少ないのでベランダや室内での栽培にも適している。栽培のポイントは水はけのいい土、適度な水やり、切り戻しだ。「庭で栽培するなら、水やりは雨を待つ程度でよく、室内ならアブラムシよけにもなるので、ときどき霧吹きをかけます」(平田さん)。葉が密集して風通しが悪くなったら切り戻しを。「枝の根元ではなく途中で切るのが大切です。こうするとまた芽が出てきます」(同)
マメな人はミントを、マメではない人にはローズマリーを、というように、水やりも気がついたときでいい。そのため、水を好むミントとの寄せ植えはおすすめしない。
栽培を始めたら、観賞するだけでなく生活に取り入れてみたい。同農場でハーブ料理コンシェルジュを務める小早川愛さんは「ハーブの香りは癒やしでもあり、パワーも与えてくれます。ハーブのある生活というとハードルが高く感じる方もいると思うので、身近なもので簡単に楽しめる方法を考えています」と話す。
ローズマリーは針葉樹のように細長い葉が集まった珍しい形をしているので、束ねるだけでインパクトのあるブーケになる。「あれば別のハーブを2~3種交ぜるとより華やかになる」(小早川さん)。短く切ってコップに差したり、つるしたりして台所に飾れば、見た目と香りを楽しみながら、料理にも使える。長めに切って花瓶に差してリビングなどに飾れば、洗濯物の部屋干しが増える季節にも匂いが気にならなくなる。
茎の柔らかい部分3~4本を丸め、マスキングテープや麻ひもでとめると、大きさによってドアノブにかけるリースにも、箸置きにもなる。
バスタイムが癒やしの時間になる「バスボム」は、重曹、クエン酸、片栗粉と身近な材料で作る入浴剤。シュワッと溶けて爽快感がある。3つを2対1対1の割合で混ぜ、ローズマリーひと枝の葉をちぎって加える。霧吹きで水を加えながら「泥だんごのように丸め、表面に葉を差して、1日ほど乾燥させてできあがり」(同)。子供と楽しみながら作ってもいい。だし取り用の不織布パックに入れれば排水口が詰まる心配もない。
小早川さんが提案するハーブ料理も手軽なものばかりだ。6月20日の父の日は、ローズマリー風味のステーキで感謝の気持ちを表してはどうだろう。牛肉、豚肉、鶏肉など好きなお肉に適量のオリーブオイル、塩、コショウ、ちぎったローズマリーをからめて下味をつけ、焼くだけ。「安いお肉でも味が格上げされると思います。ローズマリーに抗菌作用があるので、下味をつけて冷蔵庫で1週間は保存できます」(小早川さん)
ローズマリーの枝を漬け込むだけのオイル、ビネガー、しょうゆも日々使えるハーブ調味料だ。和洋中を問わず使ってみると、意外なおいしさの発見があるそうだ。オイルにはにんにく、唐辛子、コショウの粒、好みで八角も入れて風味づけすると、炒めものやパンにつけたり、ギョーザを食べるときのラー油代わりになったりする。そのほか市販のトマトソースやピクルス液に加えるだけでも、風味が格段に上がる。弁当にひと枝入れれば、抗菌用の梅干し代わりにもなる。
「ローズマリーはアンチエージングハーブと言われます。バナナ、ヨーグルトと一緒にスムージーにして毎日飲むようになってから風邪もひかなくなりました」という小早川さんは個人的にもローズマリーの大ファンだ。
ハーブ栽培を始めるなら、飾って、癒やされ、食べられるローズマリーから。失敗がないし、生活がランクアップした気分になれるはずだ。
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精油で集中力アップ
ローズマリーは精油でも楽しめる。ハーブ・アロマテラピー専門店「生活の木」の中村佳央さんによると、「集中力を高め、シャキッとさせてくれる。ジメジメした季節にこそ使ってほしい」。手軽なのがティッシュやアロマストーンと呼ばれる石に数滴落とし、デスク周りやエアコンの吹き出し口に置く方法だ。重曹大さじ2に精油2~3滴を合わせたものは、靴箱やぬれた靴の脱臭に便利だという。また、2014年には鳥取大学の浦上克哉教授が「匂いをかぐことで認知症の予防に有効」と紹介。注目度は高い。
(ライター 松野 玲子)
[NIKKEIプラス1 2021年6月12付]
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