大学生は「本を読まない」のか?

著者が紹介する全国大学生活協同組合による「学生生活実態調査」は、全国の国公私立30大学の学生を対象に毎年実施しているのですが、2004年から12年までは(本を読まない大学生の比率は)30%台半ばを推移していたが、13年に40.5%と4割を超えてから上昇し続けて、17年には53.1%に達し、19年も48.1%と半数近い高い水準にあります。

大学生が本を読まなくなったと言われるようになって久しい。私自身も、35年以上大学の教員をしてきたが、かつては勉強にあまり熱心でない学生でもよく本を読んでいたし、学生たちを相手に自主的な読書会を放課後に開いていたが、2000年あたりから勉強に熱心な学生さえもほとんど本を読まないことに驚くことがあり、学生が本を読まなくなっているのを痛感したものだった。
(第4章 なぜ読解力が身につかないのか? 152~153ページ)

本に親しむ環境づくりを

読書を育む環境はどういうものでしょうか。それは、やはり子どものころの生活環境にあるようです。子どもが置かれた家庭の蔵書数を調べた調査結果を引き合いに、家庭内に本がたくさんある家族が読書に関心を向け、知的好奇心を育む環境にあると説明しています。それに加えて、子どもとともに、本を読むことの楽しみを共有する経験をもった家族に、読書習慣が身についていることを説きます。

大学生をみると、楽しみとしての読書や学びとしての読書を日常的にしている者と、まったく本を読まずに日々過ごしている者に分かれるが、何が違うのか。それは、本を読むのが楽しみや充実につながっているか、本を身近に感じられず読書を苦行のように感じているかだろう。そうした違いの萌芽(ほうが)は、子ども時代の本とのつきあい方にある。
(第5章 家庭の言語環境を整える 201~202ページ)

◆編集者のひとこと 日本経済新聞出版・細谷和彦

前著『伸びる子どもは○○がすごい』が8万部を超えるヒットになりました。そこにも「読書にみる習慣形成の威力」について書かれていましたが、非認知能力を身に付けるのに、もっともわかりやすい対処法だという思いがあり、今回はここを深堀りすることになりました。

読解力、語彙力が身に付くというのはもちろんのこと。想像力や共感力も身に付くというのは考えたことがありませんでした。子どもの行動範囲は狭く、そのままではどうしても近視眼的な思想になりかねません。小説に出てくる登場人物はとっぴなことも多く(だから本として面白いのだと思いますが)、「ああ、この人はこういう考え方をするんだ」「こういう行動をすると、こういう反応があるんだな」など、疑似体験ができます。読書によって、人への思いやり、また、予測をしながらの行動力が身に付きます。書籍編集者を長らくやっていますが、これまで気づかなかった視点が満載の1冊となりました。

一日に数百冊が世に出るとされる新刊書籍の中で、本当に「読む価値がある本」は何か。「若手リーダーに贈る教科書」では、書籍づくりの第一線に立つ出版社の編集者が20~30代のリーダーに今読んでほしい自社刊行本の「イチオシ」を紹介します。

読書をする子は○○がすごい (日経プレミアシリーズ)

著者 : 榎本 博明
出版 : 日本経済新聞出版
価格 : 990 円(税込み)

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