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刺されないとわからない 史上最悪の虫と一番痛い場所

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ナショナルジオグラフィック日本版

おかしなことが起きた。ジャスティン・シュミット氏は、そのとき自転車に乗っていた。

「息が切れていたため、空気を吸い込もうと口を開けていたら、ミツバチが口に飛び込んで、舌を刺したのです」。シュミット氏は地面に倒れ込み、苦しんだ。でも、ノートを取り出し「刺されてすぐ不快な痛みに襲われる。内臓にダメージを与える衰弱性の痛みと思われる。約10分間、生きた心地がしない」と記録した。

最悪の虫刺されではなかったが(詳細は後ほど)、その強烈さはシュミット氏を驚かせるものだった。同時に驚くべきは、米アリゾナ大学の昆虫学者であるシュミット氏が、これまでに1000回以上も虫に刺されてきた、シュミット刺突疼痛(とうつう)指数の開発者として有名な人物であるということだ。

「シュミット指数」としても知られるこの指数は、虫刺されの痛みを4段階に分類したもので、スコッチウイスキーのテイスティングノートを思わせる気取った解説が添えられている。

例えば、アシナガバチの一種レッドペーパーワスプは指数3で、「焼けるような激しい痛み。はっきりとした苦い後味。紙で負った切り傷に塩酸をこぼした感じ」と説明されている。

ミツバチに刺される程度ならシュミット氏には何でもないことで、実際「退屈だ」と表現している。だが、刺された部位が舌となると、全く別の話だった。つまり、どこを刺されるかということは、何に刺されるかと同じくらい重要であることを示している。

数年前、シュミット氏はこんな相談をコーネル大学の大学院生マイケル・スミス氏から受けた。スミス氏の計画は、自ら虫に体中を刺され、痛みの地図を作製するというものだった。このプランを聞かされたシュミット氏は「目だけは避けるように。それ以外は大丈夫」と助言したほどだ。

ハチの生態を研究するスミス氏は、養蜂家たちと情報交換をする中で、彼らが刺される場所によって痛みが違うと話すことに気付いた。しかし、痛みが系統的に測定された前例はない。痛みは、虫に刺された体の部位によって本当に違うのだろうか? 痛みを強く感じる場所があるのは、どうしてだろうか?

「誰かがやるしかありません」とスミス氏。「科学者としては、実行するだけです。単なる好奇心です。それがモチベーションになっています」

スミス氏は頭のてっぺんから中指の爪先まで体の24カ所を選び出し、それぞれをミツバチに複数回刺されることにした。乳首、陰嚢(いんのう)、陰茎という、考えただけでも恐ろしい場所も例外にはしなかった。その結果、これまでで最も科学的な見地から、刺されると最悪の場所を突き止めることができた。

この結果と、シュミット指数を組み合わせれば、虫刺されの最悪のシナリオが予測できる。そこで、ある疑問が浮上する。究極の虫刺されとは何か、昆虫によって引き起こされる痛みの頂点とは何かということだ。

筆者が、スミス氏とシュミット氏に、最悪の組み合わせを質問したところ、2人とも「サシハリアリに鼻孔を刺されるのがおそらく最も痛い」と答えた。シュミット氏はサシハリアリに4点満点の評価を付け、「約7.5センチのくぎがかかとに刺さった状態で真っ赤な炭の上を歩く感じ」と解説している。

スミス氏が特定した最も痛い場所は、鼻孔と上唇で、陰茎の幹部がそれに続く。メディアでは、話題性からか陰茎を大きく取り上げたが、「本当に痛いのは鼻孔のほうですよ」とスミス氏は話す。ハチは目や口、鼻を狙うことが多いが、理にかなっているようだ。何しろ、これらは呼吸や視覚に不可欠な場所だ。「痛みには意味があります」とスミス氏。痛みは私たちが生体機能を守る動機になる。

シュミット氏に言わせれば、もっと恐ろしいものがあるという。「スズメバチの一種ウォーリアーワスプに鼻か唇を刺されるのも最悪です」。そして、ある意味、サシハリアリ以上かもしれない。患部が腫れ上がり、それが何日も続くからだ。「腫れて赤くなり、しばらく悲惨な状態が続きます」

一方、サシハリアリの場合、腫れ上がることはなく、刺されたあとすらあまり残らないのだそうだ。

「失望しますね。痛みで泣き叫んでいるというのに、人に見せたい大きな赤いあとが出ないのですから」とシュミット氏は話す。「サシハリアリは、私の満足感まで奪い去ってしまいます」

シュミット氏もスミス氏も幾度となく痛みに耐えてきたが、それでも学ぶ価値はあると口をそろえる。「私は夢を生きています」とスミス氏は言う。「ハチと仕事をしているのですから」

スミス氏は痛みの研究以降、ハチの巣の内部構造に関するこれまでで最も網羅的な研究の一つを終えた。コロニーの誕生から死まで一部始終を測定する研究だ。そして現在、ハチの「思春期」を引き起こす誘因を解明しようとしている。ハチだけでなく、ほとんどの動物に何らかの思春期があるのだ。

筆者はシュミット氏に、刺す虫から学んだ最もクールなことを質問してみた。「不思議なことを学びました」。シュミット氏は、こう前置きすると、「刺す虫と人の関係は、実際、私たち人の問題だということです。心理戦では、勝者は彼らです。刺す前に、彼らは私たちを怖がらせることに成功していますからね」

(文 ERIKA ENGELHAUPT、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年6月4日付]

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