東武東上線高坂駅から約3・5キロメートルの場所にある「中華そば 深緑」

現在、『深緑』が提供する麺メニューは、「黒出汁(だし)」「白出汁」「羅臼昆布と鮭(サケ)節の中華そば」「極上かつお節の中華そば」の4種類。

そのいずれもが、清湯(スープが透き通った)しょう油ラーメンだ。日本全国にラーメン店は数多くあるが、ここまでしょう油ラーメン作りにリソースを割くお店は珍しい。

4種類のしょう油ラーメンのうち、券売機の左上に陣取るフラッグシップメニューは「黒出汁」。複数回足を運んでいる方ならともかく、初訪問時にはこちらを頼むのがオススメだ。

ベースとなるスープの構成は、この上なく手が込んでいる。鶏(東京シャモ・村越シャモロック・ホロホロ鶏)と、豚(六白黒豚)を丁寧に炊き上げて、味の「土台」を構成する動物系出汁を創造。

それに、魚介出汁(カキ・アサリ・ハマグリ・伊吹イリコ等)と、野菜出汁(ゴボウ・マッシュルーム・白菜等)をバランス良く折り重ねたスープは、現存する淡麗しょう油の「最高峰」と言っても過言ではない。

4種類のしょう油ラーメンのうち、券売機の左上に陣取るフラッグシップメニューは「黒出汁」

スープ温度が高い序盤は、豚・鶏に由来する重厚なイノシン酸のうま味が優勢。食べ進め、スープが徐々に舌になじむにつれて、おもむろに自己主張し始める貝由来のコハク酸。それに、野菜のナチュラルな甘みが加わり、食べ始めから食べ終わりまで、素材本来の魅力が肌身で実感できる、圧巻の仕上がりとなっている。

全国各地から選び抜いた7種類のしょう油を、緻密な計算の下で掛け合わせて創ったしょう油ダレも、傑物のひと言に尽きる。ひと口目から味覚中枢を一気に覚醒させるけん引力を誇示しながら、出汁に含まれる素材の持ち味を損ねるどころか、かえって引き立てることに見事に成功。この黄金律を探り当てるのに、どれだけの艱難(かんなん)辛苦があったのだろうか、察するに余りある。

岩本店主のラーメンにかける本気度が、丼を通じてしっかりと伝わってくる。麺やトッピングも、非の打ちどころのない完成度。気が付けば、丼はいつの間にか空っぽになっていた。

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