母の代理で相続手続き 取り寄せた親族戸籍、14通に

NIKKEIプラス1

2021/6/26

記者の母と長年、同居してきた87歳の伯母が昨年急逝し、遺産相続が生じた。手続きには多くの戸籍が要る。折あしく母も入院中で自由に動けない。代わりに記者が戸籍を取ってみた。

おいは伯母の戸籍を簡単に取得できない

主な遺産は預金だ。銀行に電話すると、遺言や相続人について問われた。伯母は母と同居していたが、世帯は分けており、生涯独身で子もいない。遺言もなかった。銀行によると、この場合まず伯母の両親(記者の祖父母)、親も亡くなったなら伯母の兄弟姉妹(記者の母や伯/叔父母)が相続人になり、手続きに必要なのは亡くなった伯母や相続人の「戸籍謄本」などだ。戸籍は日本人の出生から死亡までの親族関係を登録・公証するもの。記者もパスポート申請時に取ったはずだが、方法はうろ覚えだ。

銀行は「まず伯母の本籍地の役所に聞いて」という。住民票を入手し、本籍が東京都港区とわかったので電話すると、なんと記者は伯母の戸籍を取れないという。戸籍は記載された本人やその配偶者のほか、親・子・孫といった「縦」の関係なら比較的簡単に取れる。パスポート申請や婚姻で戸籍が取れない事態が生じないのはそのためだ。一方、兄弟姉妹や伯母といった「横・斜め」の戸籍を取る条件は厳しいらしい。

銀行からは戸籍謄本の用意を求められた(写真左)、耳慣れない「定額小為替」(同右)も初めて入手した

理解しきれない記者は後日、専門家に聞いた。日本司法書士会連合会の加藤政也常任理事は「横・斜めの戸籍をとるには法的に認められる理由が必要」と教えてくれた。典型例は相続だ。今回相続するのは母や叔母らで、記者は相続人に該当しない。役所に改めて聞くと「母から請求しては」と提案された。入院中でも郵送で請求できるという。母に必要書類の記入を頼み、記者は他の作業に回った。

例えば戸籍取得手数料の支払いだ。役所からは「定額小為替」という耳慣れない方法を指定された。現金を証書に換える送金法だ。「なんだか難しそう」と、郵便局で恐る恐る聞いてみると、意外にあっさり入手できた。この小為替と、母の本人確認書類の写しや返信用封筒などを同封して役所に送った。1週間ほどで伯母の戸籍が返送されてきた。やっと1通目だ。

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様式などが変わるとそれ以前の戸籍も必要