2021/6/25

働き方の実態によっては労働者とみなされることも

フリーランスとして働いているものの、実態としては一部において「労働者」に限りなく近い人がいるのも事実です。労働者性があるかどうかは、

・労働が他人の指揮監督下において行われているかどうか、すなわち、他人に従属して労務を提供しているかどうか

・報酬が、「指揮監督下における労働」の対価として支払われているかどうか

この2つの基準を判断することになります。これらを総称して「使用従属性」といいます。「使用従属性」が認められるかどうかは、請負契約や委任契約といった契約形式にかかわらず、契約の内容、労務提供の形態、報酬その他の要素から、個別の事案ごとに総合的に判断されます。

たとえば、以下のような実態があれば、労働基準法上の労働者に当たると考えられます。

労働基準法上の「労働者」の判断基準

・発注者からの仕事は、病気のような特別な理由がないと断れない
・運送の経路や方法、出発時刻といった、業務の遂行に関することは、全部発注者から指示され、管理されている
・報酬は「時間当たりいくら」で決まっている
・発注者から、通常予定されている仕事の他に、契約や予定にない業務も命令されたり頼まれたりする
・始業や終業の時刻が決められていて、始業に遅れると「遅刻」として報酬が減らされる
・受けた仕事をするのに非常に時間がかかるため、他の発注者の仕事を受ける余裕が全くない
(注)直ちに労働者となるわけではなく最終的には総合的判断となる点に注意

(「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」の概要版より)

見かけ上は雇用関係になくとも、労働者性が認められると、労働関係法令の保護を受けます。

近年は働き方が多様化し、雇用契約においても同じ時間に同じ場所に出社して働くスタイルとは限りません。契約ばかりでなく、実態としてはどうなのかを見極めることが重要です。

法律や社会保障面もしっかり確認する

雇用されている場合、事業主の指示に従って働くことになりますが、フリーランスでは発注事業者との取引条件を明確にし、自分自身で業務遂行の方法を決めてマネジメントしていくことになります。フリーランスは働き方の自由度が高いために、自律的に自分をマネジメントできる人が向いていると言えるでしょう。

労働者として保護される部分や社会保障面における違いについて上述しましたが、大事なことはフリーランスと会社員との違いを理解し、いざというときの担保を自分自身で準備しておくことです。

たとえばフリーランスの場合、老後の年金不安を補うためiDeCo(個人型確定拠出年金)を活用したり、国民年金基金や小規模企業共済に加入したりする方法などもあります。また、ビジネスリスクを幅広くカバーするための賠償責任保険や病気などで働けないときの所得補償保険など、民間保険の活用も考えられるでしょう。やり方はいろいろとあります。

「どちらが向いているかわからない」「フリーランスとしての働き方に興味がある」という場合は、副業・兼業として手始めに業務委託や請負契約で働いてみるというのもひとつでしょう。仲介事業者を活用することで、以前と比べて仕事の機会が得られやすくなっています。

雇用される働き方と雇用されない働き方は、適用されるルールや考え方が大きく変わってきます。多様な選択肢が広がる中で、働き方を選ぶ際には、法律や社会保障面においてもしっかりと確認しておきましょう。

佐佐木由美子
人事労務コンサルタント・社会保険労務士。米国企業日本法人を退職後、社会保険労務士事務所などに勤務。2005年3月、グレース・パートナーズ社労士事務所を開業、その後グレース・パートナーズ株式会社を設立し代表に就任。人事労務・社会保険面から経営を支援し、親身なコンサルティングで多くのクライアントから支持を得ている。また、出産後も女性が働き続けられる雇用環境の整備をはじめ、女性の雇用問題に積極的に取り組んでいる。著書に「採用と雇用するときの労務管理と社会保険の手続きがまるごとわかる本」(ソーテック社)。新聞・雑誌などメディアで活躍。