フリーランスは事業主 有休や出産手当金、ナシに注意人生100年時代のキャリアとワークスタイル

2021/6/25
フリーランスという働き方を選ぶ人が増えている(写真はイメージ=PIXTA)
フリーランスという働き方を選ぶ人が増えている(写真はイメージ=PIXTA)

新型コロナウイルス感染症を防ぐために、国からリモートワークが推奨され、新しい働き方としてかなり普及するようになりました。会社に出勤せず、自宅や好きな場所で仕事ができることは、一見するとフリーランスに近い働き方だと思う方もいるでしょう。しかし、雇用されて在宅勤務をすることと、フリーランスとして働くことは、大きな違いがあります。

増えるフリーランスだが誤解も多い

自由に働くことができる点に魅力を感じてフリーランスという働き方を選ぶ人が増えています。近年は、ユーチューバーが人気職業として話題を集めるなど、自由な働き方に憧れ、学校を卒業してそのままフリーランスとして働こうとする若者も増えているようです。

しかし、企業に雇用される働き方との違いを知らずに働き始める人も少なくありません。

実際、筆者はこのような相談を受けたことがあります。それは、会社を退職した元従業員と業務委託契約を結んだ会社からのもので、元従業員からある日、年次有給休暇を請求されたというのです。本人は、もともとこの会社で働いていたことから、「働く場所が自宅になっただけで、会社とは社員時代と同じように労働契約を結んでいる」と思い込んでいたのです。

こうした誤解は、時に悲劇を生むこともあります。「労働者」であるか否かは、紙切れ1枚の契約上の話ではなく、様々なところに影響を与えます。

このため厚生労働省は、就活生や若者向けのハンドブック「知って役立つ労働法」の2021年度の改訂で、フリーランスという表現を初めて使用し、この働き方を選ぶうえでのリスクなどを盛り込みました。

では、フリーランスと雇われる働き方とでは、どのような違いがあるのでしょうか。

フリーランスは「労働者」でなく「事業主」

「フリーランス」とは法令上の用語ではありません。2021年3月に発表された「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省の連名で作成)では、「実店舗がなく、雇人もいない自営業主や1人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者」として定義しています。

一方、「労働者」とは、労働基準法において「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」と定義されています(同法第9条)。正社員や派遣社員、契約社員、パートタイム労働者などは「労働者」として、労働関係法令の保護を受けます。他方、「業務委託」や「請負契約」などを締結し、いわゆる「フリーランス」として働く場合には、「事業主」として扱われ、基本的に労働者として保護されません。

具体的な例を挙げると、労働者であれば1時間働いたときの最低賃金の保障や労働時間のルールがあるため、法定労働時間を超えれば割増賃金がもらえますし、毎月決まった日に給与がもらえます。6カ月以上働き出勤率が8割を超えれば年次有給休暇も与えられます。妊娠すれば産前産後休業を請求することもできます。基本的に育児休業・介護休業を取得することも可能です。ところが、フリーランスでは、こうした社員ならば当たり前のように受けられる保障がありません。

また、フリーランスの場合、雇用保険や労災保険、被用者保険(健康保険・厚生年金保険など)の対象になりません。国民健康保険や国民年金については対象となりますが、保険料や給付の内容などが、健康保険や厚生年金保険とは異なることに注意が必要です。

たとえば、労働者が病気をして会社を休職するような場合は健康保険から「傷病手当金」が、産前産後で働けないときは「出産手当金」などがありますが、フリーランスの場合、原則としてこうした給付金はありません。

また、年金については、フリーランスとしていくら稼いだとしても、国民年金のみの場合は厚生年金と比べはるかに低く、老齢基礎年金は満額でも月額6万5075円(2021年度)です。

労災保険については、特別加入制度により、労働者以外でもその業務の実情、災害の発生状況などからみて、特に労働者に準じて保護されるのが適当であると認められる一定の方に特別に任意加入を認めています。ただし、すべての人が対象になるわけではありません。

なお、所得税については、給与のように源泉徴収をされないため、自分で確定申告をする必要があります。そのため、経費に使った領収書を保存して経理処理を行うなど、やるべき手続きが多く発生します。

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働き方の実態によっては労働者とみなされることも