よく韓流ドラマが苦手というファッション業界人に理由を聞くと、「ドラマに出ている俳優の服のセンスや着こなしが時代遅れ」という意見が返ってくる。確かに「冬のソナタ」時代はそうだったが、今どきのネトフリの韓流ドラマにその心配はまったくない。
ヒロインの女優がドラマで着ているブランドや私服の着こなしは女性ファッション誌やSNSで紹介されて話題になるし、「愛の不時着」の主役のヒョンビンや、「梨泰院クラス」の主役を演じるパク・ソジュンもセンス抜群で申し分ない。

とはいえコンサバ推しで言うと話はいささか違ってくる。例えばヒョンビンのスタイルは、プラダなどラグジュアリーブランドを着こなすモード系だ。パク・ソジュンもオーバーサイズのフーディに限定モノのナイキなどを履いた、今どきのストリート系である。NIKKEI STYLE的には、どちらも着こなしの参考としてリアリティーに欠けるのも確かである。
イタリアブランド おしゃれに着こなす
筆者が「ヴィンチェンツォ」にハマってしまった理由のもうひとつは、主人公のヴィンチェンツォ・カサノのファッションだ。
イタリア帰りの弁護士なので、いつもコンサバな今どきのイタリアブランドのスーツに身を包み、つねに薄いレザーのブリーフケースを片手に持ち歩いている。全編、まるで「ビームスF」でそろえたかのようなイケてるビジネスパーソンだ。小顔のイケメンな東洋人フェイスで、今どきのイタリアブランドをおしゃれに着こなすヴィンチェンツォ。誰かに雰囲気が似ていると思ったら、そうだ、香港のセレクトショップの名店「アーモリー」のオーナーでウェルドレッサーとして知られるマーク・チョー氏にもちょっと似ている。

例えば、淡いベージュのダブルのスーツに薄いグレーのミドルゲージのタートルニットを合わせた着こなし。着ているスーツのブランドは「カルーゾ」のものと思われる。
ソウルの空港に着いたヴィンチェンツォが、タクシードライバーを装った窃盗団に所持金をはぎ取られるシーンの時の格好。ピンストライプが入ったグレーフラノのダブルのスリーピーススーツで白のセミワイドシャツ、無地のブラウンのタイに合わせてポケットチーフもブラウン。靴は茶のスエードのフルブローグ。「いい時計をしてやがる、こりゃ金持ちだ」と言われてはぎ取られる腕時計も、「ウブロ」のクロコの黒のレザーベルトでスケルトンフェイスのクロノグラフ。他にも腕時計は確認できただけでも「タグ・ホイヤー」のモナコや「オメガ」のスピードマスター、「ラド―」などを幾つも所有している。

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