ドラマプロデューサー、今仕事したい監督・脚本家は誰特集 新ヒットメーカーの条件(6)

日経エンタテインメント!

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身近なエンタテインメントとして、定期的にヒット作が誕生するテレビドラマ。現役の制作者は、どんな作り手に注目しているのか? 気鋭のクリエーターを数多く起用してきたテレビ東京プロデューサーの濱谷晃一氏に、これまでに出会った印象深い人や、これから仕事をしてみたいクリエーターについて話を聞いた。

2001年入社。13年にドラマ部に異動。映画『バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~」が上映中。4月期は『警視庁ゼロ係~生活安全課なんでも相談室~SEASON5』(金曜20時)を担当

「まず、自分が手掛けた作品からお話ししますと、昨年1月期の『コタキ兄弟と四苦八苦』でご一緒した野木亜紀子さん。日本アカデミー賞最優秀脚本賞も受賞された、今や日本を代表する脚本家ですし、チャンスをいただけて背筋が伸びましたね。おじさん2人のほほ笑ましいコメディとしても楽しめますが、上質な人間ドラマで、後半にかけての展開も素晴らしくて。

その時に演出をお願いしたのが、山下敦弘監督。20代の頃から活躍している憧れの映画監督が、全話撮ってくれるということで、うれしかったです。山下監督って、めちゃくちゃいい人なんですよ。役者さんに対しても『ここは僕もちょっと分かっていないので、話し合いながら探りましょう』みたいな感じ。リハーサルを重ねて、みんなで芝居の正解を見つけ出すような、とても魅力的な演出でした。

『フルーツ宅配便』(2019年)の白石和彌監督も印象に残っています。白石監督は、シーンでの人の配置や動き、それをどうカメラが追うと1番臨場感が出るかといった切り取り方が非常にうまくて。『こうするとテイク数が少なくてもこんなに豊かに撮れるんだ』という発見が多かったです。

それでいて、人間ドラマの本質をポンと見抜く。現場で足してくるちょっとしたウイットやユーモアのキレ味がすごくて、脚本では埋めきれない部分を何倍にも膨らませてくれました。

主演の濱田岳さんが運転する送迎車の中で、気の強いデリヘル嬢役の山下リオさんが、将来の不安を吐露するシーンがあって。そのリハーサルで、白石監督が『後部座席から運転席を蹴ってください』とアドリブを提案したんです。『いい話しちゃったじゃない!』という感じでダーンと蹴るんですけど、マジメな場面に照れ隠しとペーソスが入って、何とも言えない奥行きのあるシーンになりました。

ミニドラマ『きょうの猫村さん』(20年)も特別でした。脚本は『バイプレイヤーズ』でもご一緒しているふじきみつ彦さん。シティボーイズや、ムロツヨシさんの舞台『muro式』のコントなどを書かれている脱力笑いの天才で、ほしよりこさんの原作マンガの世界観を崩さずに、絶妙な構成で書いてくれました。

監督はCM出身の松本佳奈さんで、ビジュアルへのこだわりが強くて、バランス感覚も優れていました。今後のテレビ業界で、需要が増すだろうなと思っています。そして、音楽で坂本龍一さんとご一緒できたのも光栄でした」

松本佳奈
1981年生まれ。ドラマ・映画監督。CMディレクターとしてキャリアをスタート。連ドラ『デザイナー渋井直人の休日』(19年)など。4月期は『コタローは1人暮らし』(テレビ朝日系)を担当。
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