AIやロボティクス、ビッグデータなどを活用して、事業の効率化や付加価値の向上、ひいてはビジネスモデルの変革・創出までするのがDX。同社はそうしたDXこそが「今後の成長の源泉」だと位置付け、その担い手である「DXビジネス人材」を、今後3年間で100人以上増やす計画だ。

昨今「DX人材」という言葉はよく聞くが、「DXビジネス人材」というのはあまり聞き慣れない。デジタル総合戦略部戦略企画室長の中島ゑりさんはこう解説する。

「幅広い分野を取り扱う商社だからこそ、蓄積しているデータも多く、優位性があるはず」と語る中島さん

「当社には、担当する事業や業界で経験やスキルを磨き上げてきた『ビジネス人材』が多数いますが、多くは文系出身者で、デジタルには強くありません。一方、理系出身でデータサイエンスやサイバーセキュリティーなど専門技術を持つ『DX技術人材』もいますが、その人たちはビジネスには明るくない。でも、当社の目指すDXは現場のリアルな情報を活用し、そこにデジタルの力を掛け合わせていくもの。従って、ビジネスとデジタルの双方に精通した人材が不可欠です。それが『DXビジネス人材』。DXプロジェクトを企画しリードする力を、より多くの社員につけてもらいたいと考えています」

コロナ禍で役員が「ぜひ読んで」

三井物産社内で初めて『文系AI人材になる』が推薦されたのは昨年4月。新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が出て、社員が一斉に在宅勤務にシフトしたタイミングだった。その頃、DX戦略の司令塔、CDIO(チーフ・デジタル・インフォメーション・オフィサー)に就任した米谷佳夫専務執行役員が、社内向けのメッセージで「ぜひ読んで」と呼びかけ、購入の費用も会社が負担した。

デジタル総合戦略部に異動する前は、投資家向け広報(IR)の担当だったという中島さんも、それをきっかけに同書を読み、意識が変わったと話す。

「プログラミングなどに一切触れないという点で、私のような完全な文系人間にはとっつきやすかったですね。それまでAIに対してなんとなく抱いていた恐怖感や不安も払拭され、うまく使いこなせば、仕事を劇的に効率化できたり、新たなビジネスチャンスを生み出せたりするんだと前向きな気持ちになれました。後半には45もの事例が載っていて、当社が関わった『スマート物流』なども取り上げられています。新入社員には、自分が配属された部署だったらどういう活用法があるのか、是非考えてみてほしい。もしもルーティンのつまらない仕事を振られて『やってられないな』と思ったら、それをAIにやらせる方法を考えるというのもありでしょう」

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