自粛生活にノンアルコール飲料 人気も値段も上昇中
最近、スーパーやコンビニエンスストアでノンアルコールのビールや酎ハイ風飲料を見かける機会が増え、種類も豊富になっています。ノンアル市場は右肩上がりで順調に推移していて、2020年はビール大瓶換算で2266万ケースとなっています。味の改善を評価する人も増え、この5年で13%伸びています。お酒をあまり飲まないとされる若年層の支持も高まっています。売れ行き好調を背景に値段も上昇傾向にあります。
「緊急事態」以降、値上がり傾向
値段を見てみましょう。日経POS情報によると、ノンアルビールで2016年から5年連続で売り上げトップのアサヒの「ドライゼロ」は6缶パックで560円前後(税別)で推移しています。1缶当たり94円です。4月下旬に緊急事態宣言が発令されてからは価格は上昇傾向にあります。日経モーニングプラスFTの八木ひとみキャスターがおすすめのサントリーの「のんある晩酌レモンサワー」は1缶100円前後。新型コロナウイルス感染拡大で高まった健康志向を追い風に需要が拡大していて、在宅勤務や家事の合間にリフレッシュ目的で飲む人も増えているということです。
ノンアル飲料の売れ行き好調はビール各社の戦略にも影響を与えています。5月の出荷計画をみるとキリンビール、サントリービールは前年同月比で1割増、アサヒビールは2割増を見込んでいました。
家飲みでビールも好調
ノンアルが売れればその分、ビールが売れなくなるのでしょうか。じつはビール、ノンアルとも「家飲み需要」が好調でビール価格も堅調です。ビール飲料の価格推移を見ると、アサヒスーパードライ、キリン一番搾りとも6缶パックで1010円前後。1缶当たり170~170円となっています。数円単位と小幅ではありますが、緊急事態宣言以降はむしろ値上がり傾向です。
「ノンアル」おしゃれに提供
3度目の緊急事態宣言、さらにその後延長で飲食店は酒類の提供が制限された状態が続いています。バーやホテルのラウンジではノンアルコール飲料を提供するなど試行錯誤を重ねています。「ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町」のバー「Sky Gallery Lounge Levita」はプロテインを使った「モクテル」を週末限定(土・日のみ午後6時までの営業)で提供しています。モクテルというのは、"まねる"とか"似せる"という意味の『Mock』という言葉と『Cocktail』を組み合わせた造語で、ノンアルコールカクテルのことです。そのうちの1つ「プロテイン ホッパー」はソイカカオのプロテインにスイートベリーティーやソイミルク、ミックスベリーで酸味をプラスしたもので、リキュールベースの代表的なカクテル、グラスホッパーのモクテルです。
飲料メーカーも新商品
飲料メーカー各社も新商品を続々と開発しています。キリン傘下のメルシャンは6月29日、ノンアルのワインエキスを使ったサングリア「モクバル」を2種類発売します。アサヒビールも6月29日、アルコール度数が0.5%の「ビアリー」の第2弾として「アサヒ ビアリー 香るクラフト」を発売します。
メーカー各社は飲食店での酒類の提供が制限された分を好調なノンアル飲料でカバーしていきたいのですが、それでもノンアル飲料はビール類やチューハイといった酒類に比べ6%程度の市場規模しかありません。ビール大手4社の4月のビール系飲料の販売量は20年4月に比べ12%増でしたが、コロナ禍以前の19年4月と比べると12%減でなお低調です。本格的な回復はまだ見えずビール飲料の価格にも影響が出かねません。本来ならこれからビアガーデンや屋外レジャーでビールは最需要期に入ります。ビール会社だけでなく、「マスクなしで心置きなくビールのジョッキを傾けたい」と思っている人は多いと思います。
(BSテレ東日経モーニングプラスFTコメンテーター 村野孝直)
BSテレ東の朝の情報番組「日経モーニングプラスFT」(月曜から金曜の午前7時5分から)内の特集「値段の方程式」のコーナーで取り上げたテーマに加筆しました。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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