入試で問われる究極の思考力とは

こうした難問入試を突破した人へのインタビューから浮かび上がるのは、「自らに問いかけ、その問いを形にする力」が求められているのではないかということだ。問題設定能力という究極の思考力が試されているのではというのがと著者はいう。

その思考力はビジネスの世界でも大きな力を発揮する。インタビューに登場する芸大出身者の一人は、すべてが動き出す「押しボタン」のみを設計し、あとは企業に自走させるトリガー・コンサルティングという手法を生み出し、いくつもの新規事業創発のコンサルティングを手掛けた。

最後の章で著者はアーティストが持つ力を「理力(ことわりの力=フォース)」と名づけている。「言語と非言語、具象と抽象を網羅する理力」「好奇心を持ち、問う理力」「熱狂的に没頭できる理力」の3つがあり、この力を持つ人材が日本を引っ張っていくと期待を述べる。「タイトルの『藝大』が目をひいたのか、新刊の中ではまずまずの反応があった」と同店店舗リーダーの河又美予さんは話す。

近刊は上位10冊中4冊だけ

それでは先週のランキングを見ていこう。

(1)問題解決プロフェッショナル「思考と技術」新版斎藤嘉則著(ダイヤモンド社)
(2)「具体⇔抽象」トレーニング細谷功著(PHPビジネス新書)
(3)東京藝大美術学部 究極の思考増村岳史著(クロスメディア・パブリッシング)
(3)リアル企業内イノベーター半田純一著(日本経済新聞出版)
(3)プロがやっている これだけ!会計&会社分析小宮一慶著(日本経済新聞出版)
(3)トヨタの会議は30分山本大平著(すばる舎)
(3)夢をかなえるゾウ3 文庫版水野敦也著(文響社)
(3)SDGs入門村上芽、 渡辺珠子著(日経文庫)
(3)AIに負けない子供を育てる新井紀子著(東洋経済新報社)
(3)エッセンシャル思考グレッグ マキューン著(かんき出版)

(リブロ汐留シオサイト店、2021年5月31日~6月6日)

1位は問題解決の基本的な考え方を解説した教科書。2010年刊の本で、研修需要でまとめ買いが入ったようだ。問題集形式で思考力をトレーニングする20年刊の新書が2位で、こちらも研修需要で買われたようだ。

同数の3位に8冊が並ぶ。このうち21年に入ってから刊行されたのは4冊。そのうちの1冊が今回紹介した芸大本だ。『リアル企業内イノベーター』は「日本の実態に即した実戦的イノベーションガイド」をうたう。『トヨタの会議は30分』は元トヨタマンが同社の「社内でのコミュニケーション術」を紹介する。『プロがやっているこれだけ!会計&会社分析』は、人気コンサルタントが会計と経営分析の基本を実際の決算書を使ってわかりやすく解説した内容だ。

(水柿武志)

東京藝大美術学部 究極の思考

著者 : 増村 岳史
出版 : クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
価格 : 1,738 円(税込み)

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